平成23年 No.50 週間火山概況 (平成23年12月9日〜 平成23年12月15日)

【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】

15日、口永良部島に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げた。
その他の火山は、噴火に関する予報警報事項(警戒すべき事柄)に変更はない。

表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(12月9日〜12月15日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
15日15時00分 口永良部島 火口周辺警報 噴火警戒レベル2(火口周辺規制)へ引き上げ
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 12月15日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 霧島山(新燃岳)、桜島
レベル2(火口周辺規制) 三宅島、薩摩硫黄島、口永良部島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、秋田駒ケ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)
平常 上記以外の活火山

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報発表中の火山(12月15日現在)





【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】



三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は、火口縁上100〜300mで経過した。
 火山性地震は、少ない状態で経過した。
 三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 地震活動は、2011年2月末頃から比較的活発な状態が続いている。
 国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、2006年8月に始まった島全体の隆起を示す地殻変動は、 2010年11月中旬頃から12月にかけて一時鈍化したが、2011年1月末頃から隆起速度が増加し、現在も 続いている。また、島の南部で大きな南向きの変動がみられる。
 火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した島東部 の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われなかった。これらの機関のこれまでの観測によると、 福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では 噴火に対する警戒が必要である。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 新燃岳では、噴火は発生しなかった。
 火山性地震は、やや多い状態が続いている。振幅の小さな火山性微動が13日に1回発生した。
 傾斜計1)では、火山活動に伴う特段の変化は認められなかった。
 9日及び13日に航空自衛隊航空救難団芦屋救難隊の協力を得て実施した上空からの調査では、前回(11月15日)と比較して、火口内に蓄積された溶岩の大きさ (直径約600m)や形状及び周辺の噴気の状況に特段の変化はなく、主に溶岩の北側及び東側から白色の噴煙が上がっているのを確認した。また、西側斜面の割 れ目の一部では、前回の調査と同様にやや温度の高い部分が認められた。
 国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、新燃岳の北西数kmの地下深くのマグマだまりへのマグマ の供給を示す変化が続いている。
 新燃岳火口から概ね3㎞の範囲では、大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方で も小さな噴石2)(火山れき3))に注意が必要である。これまでの噴火では、風に流されて直径4cm程 度の小さな噴石2) (火山れき3))が新燃岳火口から10kmを超えて降っている。また、爆発的噴火に伴 う大きな空振に注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に警戒が必要である。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 昭和火口では、爆発的噴火が24回発生した。このうち15日09時24分の爆発的噴火では、大きな噴石2)が3合目(昭和火口より1,300〜1,800m) まで達した。また、同火口では夜間に高感度カメラ4)で明瞭に見える火映を時々観測した。
 南岳山頂火口では、11日、12日及び13日にごく小規模な噴火が発生した(南岳山頂火口でごく小規模な噴火が発生したのは、2011年2月13日以来)。
 14日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は一日あたり1,800トン(前回11月24日、3,200トン)とやや多い状態であった。
 火山性地震は14日に一時的に増加したものの、それ以外は少ない状態である。噴火に伴う火山性微動が時々発生した。
 国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられている。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、大きな噴石2)及び火砕流に警戒が必要である。 風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)(火山れき3))に注意が必要である。降雨時には土石流に 注意が必要である。


薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙活動は、やや高い状態が続いている。
 火山性地震は、少ない状態で経過した。
 火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1km の範囲では噴火に対する警戒が必要である。 風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)に注意が必要である。


口永良部島  [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]←15日に噴火警戒レベル1(平常)から引き上げ

 11月30日頃から振幅の小さな火山性地震のやや多い状態となり、12月11日以降はさらに増加し、日回数が14日には39回、15日には48回と多い状態が続いている。
 このため、火山活動は高まっており、今後、火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生する可能性があると考えられるため、15日15時00分に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げた。
 12月9日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は一日あたり200トンと、火山活動が活発であった2008年12月頃と同程度でやや多い状態であった。噴煙活動に特段の変化はなく、白色の噴煙が概ね100mで経過している。
 火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生する可能性があるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)に注意が必要である。




 図2 口永良部島 火山性地震の発生回数(2006年1月1日〜2011年12月15日)

諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では今期間噴火は観測されなかったが、長期にわたり噴火を繰り返している。 同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を時々観測した。
 火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されなかった。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲 では大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)に注意が必要である。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】




 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。



1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがある。
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことである。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。



注)データについては精査により、後日修正することがある。






【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒*
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

*居住地域が不明確な場合

海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。


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