平成23年 No.18 週間火山概況 (平成23年4月29日〜 平成23年5月5日)

【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】

いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒すべき事柄)に変更はない。

表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(4月29日〜5月5日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 5月5日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 霧島山(新燃岳)、桜島
レベル2(火口周辺規制) 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、秋田駒ケ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島
平常 上記以外の活火山

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報発表中の火山(5月5日現在)





【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】



三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は火口縁上100〜300mで経過した。
 火山性地震は、少ない状態で経過した。
 三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 地震活動は、2011年2月末頃から高い状態が続いている。
 国土地理院の観測によると、2006年8月に始まった島全体の隆起を示す地殻変動は、2010年11月中旬頃から12月にかけて一時鈍化したが、2011年1月末頃から隆起速度が増加している。また、島の南部で大きな南向きの変動がみられる。
 火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した島東部の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われなかった。これらの機関のこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、 今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 新燃岳では4月19日以降噴火の発生はない。
 5月2日に航空自衛隊新田原救難隊の協力を得て行った上空からの調査では、火口内に蓄積された溶岩に大きな変化はなかった。白色噴煙は、主に溶岩縁辺の北側及び東〜南東側から火口縁上100m程度上がっていた。
 火山性地震は、増減を繰り返しながらやや多い状態で経過した。また、火山性微動が時々発生した。
 傾斜計1)で5月1日04時頃から新燃岳側がわずかに隆起する変化が観測されていたが、噴火は発生せず、1日23時頃沈降に転じ、隆起変化以前の状態に戻った。また5月4日0時頃からも同様の変化が観測されたが、 4日11時頃沈降に転じ、その後停滞している。
 国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、新燃岳の西側を中心に2月1日以降わずかな伸びの傾向がみられている。
 新燃岳火口から概ね3㎞の範囲では、大きな噴石2)と火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)(火山れき3))に注意が必要である。これまでの噴火では、風に流されて直径4cm程度の小さな噴石2) (火山れき3))が新燃岳火口から10kmを超えて降っている。また、爆発的噴火に伴う大きな空振に注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に警戒が必要である。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 昭和火口では爆発的噴火が5回発生し、大きな噴石2)が4合目(昭和火口から800〜1,300m)まで達した。
 南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
 火山性地震及び火山性微動は少ない状態が続いている。
 国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられている。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、大きな噴石2)及び火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)(火山れき3))に注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。


薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 火山性地震は少ない状態で経過した。硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや高い状態が続いている。同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を4月29日に観測した。
 火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1km の範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)に注意が必要である。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では5月3日に爆発的噴火が1回発生した。同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を時々観測した。
 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)に注意が必要である。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】


吾妻山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 4月29日夜から30日明け方にかけてと5月2日夜から5日明け方にかけて、夜間大穴火口付近が高感度カメラで明るく見える現象が確認された。この現象が確認された前後で火山性地震の増加はなく、噴煙の状況や空振計および地殻変動 データにも変化は認められない。この現象は硫黄の燃焼による発光と考えられる。大穴火口付近が明るく見える現象が確認されたのは、2011年4月13日以来である。
 噴気活動は、やや高い状態が続いている。地震回数はやや多い状況となっている。
 吾妻山では、ただちに火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候はみられないが、火口内では火山ガスの噴出がみられるので警戒が必要である。


焼岳 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 焼岳の北西部から北部にかけての地震活動は低下しながら継続している。火山性微動や低周波地震は観測されていない。また、噴気の異常も確認されておらず、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められない。


富士山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 3月15日(期間外)の静岡県東部(富士山の南部付近)を震源とする最大震度6強の地震の後、余震活動は低下しながら継続している。火山性微動や低周波地震は観測されていない。また、その他の観測データで浅部の異常を示すものはなく、噴火の兆候は認められない。

阿蘇山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 中岳第1火口では、5月5日に高さ約5mのごく小規模な土砂噴出4)を観測した。土砂噴出の観測は2008年2月18日以来である。
 火山性地震は少ない状態で経過した。5月2日から振幅の小さな火山性微動を連続して観測している。
 火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められないが、火口内では土砂や火山灰を噴出する可能性がある。また、火口付近では火山ガスに対する注意が必要である。


 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。



1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがある。
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことである。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
4)火山ガス等の噴出に伴い火口底の土砂を噴き上げる現象である。



注)データについては精査により、後日修正することがある。






【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。


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