平成23年 No.12 週間火山概況 (平成23年3月18日〜 平成23年3月24日)
【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】
霧島山(新燃岳)では、22日に火口周辺警報を切り替え、大きな噴石に対する警戒範囲をこれまでの4㎞から3㎞へ縮小した (噴火警戒レベル3(入山規制)は継続)。その他の火山は、噴火に関する予報警報事項(警戒すべき事柄)に変更はない。
表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(3月18日〜3月24日)
発表日時 | 火山名 | 警報・予報 | 概要 |
3月22日17時00分 | 霧島山 (新燃岳) |
火口周辺警報 | 火口周辺警報切り替え(噴火警戒レベル3(入山規制)継続) |
毎日07時、17時 | 三宅島 | 火山ガス予報 | 島内の火山ガスの分布予想 |
表2 3月24日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況
警報・予報 | 噴火警戒レベル及びキーワード | 該当火山 |
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 霧島山(新燃岳)、桜島 |
レベル2(火口周辺規制) | 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島 | |
火口周辺危険 | 硫黄島 | |
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 | 周辺海域警戒 | 福徳岡ノ場 |
噴火予報 | レベル1(平常) | 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、秋田駒ケ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島 |
平常 | 上記以外の活火山 |
図1 噴火警報発表中の火山(3月24日現在)
【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】
三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
噴煙高度は火口縁上100〜300mで経過した。
火山性地震は、少ない状態で経過した。
三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。
硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]
独立行政法人防災科学技術研究所の観測によると、2011年2月末頃から地震活動は高い状態にある。
国土地理院の観測によると、2006年8月に始まった島全体の隆起を示す地殻変動は、2010年11月中旬頃から12月にかけて一時鈍化したが、2011年1月末頃から隆起速度が増加している。また、島の南部で大きな南向きの変動がみられる。
火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した島東部の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要である。
福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]
今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われなかった。これらの機関のこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、 今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。
霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]←22日に火口周辺警報の切替え(噴火警戒レベル3(入山規制)継続)
新燃岳は間欠的に噴火が発生しているものの最盛期の活動に比べ低下した状態で推移しており、爆発的噴火により大きな噴石が3kmを超えて飛散する可能性は低くなったと考えられる。 そのため、22日17時00分に火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)を切り替え、大きな噴石に対する警戒範囲をこれまでの4kmから3kmへ縮小した。
新燃岳では23日08時23分に噴火が発生し、噴煙が火口縁上1,000mまで上がり、南東に流れた。
火山性地震は、23日の噴火前後に増加するなど、増減を繰り返しながらやや多い状態が続いている。火山性微動は時々発生した。
23日の噴火に先行して、傾斜計1)で21日16時頃から新燃岳側が隆起する変化が観測され、噴火に伴い沈降に転じ、隆起変化以前の状態に戻った。現在は特段の変化はみられない。また、16日(期間外)11時頃からも同様の隆起変化がみられたが、 噴火は発生せず、18日03時頃〜13時頃にかけて沈降し、元に戻った。
22日に海上自衛隊第72航空隊鹿屋航空分遣隊の協力を得て行った上空からの調査では、火口内に蓄積された溶岩に大きな変化は認められなかった。
国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、新燃岳の西側で2月1日以降わずかに伸びの傾向がみられる。
新燃岳火口から概ね3㎞の範囲では、大きな噴石と火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)(火山れき3))に注意が必要である。これまでの噴火では、風に流されて直径4cm程度の小さな噴石2) (火山れき3))が新燃岳火口から10kmを超えて降っている。また、爆発的噴火に伴う大きな空振に注意が必要である。 降雨時には泥流や土石流に警戒が必要である。
桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]
昭和火口では爆発的噴火が15回発生し、大きな噴石が5合目(昭和火口から500〜800m)まで達した。同火口では夜間に高感度カメラ4)で確認できる程度の微弱な火映を時々観測した。
南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
火山性地震及び火山性微動は少ない状態が続いている。
24日に実施した現地調査では二酸化硫黄の平均放出量は1日あたり1,700トン(前回3月16日、700トン)とやや多い状態であった。
国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられている。
昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、大きな噴石2)及び火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)(火山れき3))に注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。
薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
火山性地震は少ない状態で経過した。硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや高い状態が続いている。
火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1km の範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)に注意が必要である。
諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]
御岳(おたけ)火口では噴火が時々発生した。19日12時53分の爆発的噴火では、噴石が火口周辺に飛散したとの通報が住民から十島村諏訪之瀬島出張所にあった。同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を時々観測した。
火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では降灰及び遠方でも小さな噴石2)に注意が必要である。
【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】
焼岳 [噴火予報(平常)]
11日(期間外)午後から焼岳の北西部から北部にかけて地震活動が活発化し、その後地震活動は低下してきていたが、21日13時15分にマグニチュード4.7の地震が 発生し、岐阜県高山市で震度3を観測した。今期間、最大震度3を観測する地震が1回、最大震度2が1回発生するなど、地震活動が再び活発化したが、その後、 地震活動は低下してきている。なお、火山性微動や低周波地震は観測されておらず、噴気異常等に関する通報もなく、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認めら れない。
富士山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
15日(期間外)に静岡県東部(富士山の南部付近)を震源とする最大震度6強の地震の後、余震活動は徐々に低下しており、今期間、最大震度2を観測する余震が2回、最大震度1が6回発生した。火山性微動や低周波地震は観測されていない。 また、その他の観測データで浅部の異常を示すものはなく、噴火の兆候は認められない。
箱根山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]
11日(期間外)午後から駒ケ岳から芦ノ湖付近と金時山付近で地震活動が活発化した。その後地震活動は低下してきていたが、21日23時14分に神奈川県西部(駒ケ岳付近)を震源とするマグニチュード4.2の地震が発生し、静岡県、神奈川県の一部で震度2を観測した。 今期間、駒ケ岳から芦ノ湖付近と金時山付近で最大震度2を観測する地震が3回発生するなど、地震活動が一時活発化したが、その後、地震活動は徐々に低下してきている。気象庁が設置している体積歪計5)や神奈川県温泉地学研究所の傾斜計1)等による地殻変動観測では、 今回の地震活動に関連した変化はなかった。なお、火山性微動や低周波地震は観測されておらず、噴気等表面現象にも特段の変化はなく、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められない。
上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。
1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがある。
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことである。
3)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。
5)センサーで周囲の岩盤から受ける力による体積の変化をとらえ、岩石の伸びや縮みを観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等で変化が観測されることがある。
注)データについては精査により、後日修正することがある。
【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表
警報・予報 | 噴火警戒レベルとキーワード | 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード |
噴火警報 | レベル5(避難) | 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒 |
レベル4(避難準備) | ||
火口周辺警報 | レベル3(入山規制) | 入山危険 |
レベル2(火口周辺規制) | 火口周辺危険 | |
噴火予報 | レベル1(平常) | 平常 |
※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。