2007年 No.51 火山の概況 (平成19年12月14日 〜 平成19年12月20日)

 噴火警報及び噴火予報の発表状況は以下のとおりである。

図1  噴火警報の火山
図1  噴火警報発表中の火山


○噴火警戒レベル導入火山

 火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制):桜島、薩摩硫黄島、口永良部島、諏訪之瀬島
 噴火予報(噴火警戒レベル1、平常):樽前山、北海道駒ケ岳、岩手山、吾妻山、草津白根山、浅間山、富士山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢、新燃岳)

○噴火警戒レベル未導入の火山

 火口周辺警報(火口周辺危険):三宅島、硫黄島
 噴火警報(周辺海域警戒):福徳岡ノ場
 噴火予報(平常):上記以外の火山
※噴火警戒レベルは、地域防災計画等でその活用が定められている火山に導入されている(現在、噴火警戒レベルが導入されている火山は16火山である)。




【各火山の活動状況及び予報警報事項】

○噴火警報の火山


三宅島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 14日及び18日に行った現地調査では、二酸化硫黄の放出量は一日あたり1,200〜2,400トン(前回12日、1,000〜1,600トン)と依然として多量の火山ガス放出が続いている。
 噴煙高度は火口縁上100〜200mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
 三宅島では火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口周辺では噴火等に対する警戒が必要である。また、風下にあたる地区では火山ガスに対する警戒が必要である。雨による泥流にも注意が必要である。
 


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 島西部の阿蘇台陥没孔(あそだいかんぼつこう)で19日から20日にかけての夜間に熱泥水が噴出したとみられる跡が、海上自衛隊硫黄島航空基地隊気象班により確認された。国土地理院及び防災科学技術研究所の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過しているが、島全体が大きく隆起する地殻変動は鈍化したものの継続している。
 硫黄島では火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、従来から小規模な噴火がみられていた領域では警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)]

 19日に海上自衛隊が行った上空からの観測では、福徳岡ノ場付近の海面に、火山活動によるとみられる変色水が確認された。なお、付近に浮遊物は認められなかった。
 福徳岡ノ場では小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では警戒が必要である。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、噴火は観測されなかったが、長期にわたり噴火を繰り返している。
 火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 14日に行った現地調査では、二酸化硫黄の放出量は一日あたり600〜1,100トン(前回11月22日、1,000〜1,900トン)であった。二酸化硫黄放出量は10月頃からやや増加し、一日あたり1,000トン前後で経過している。
 国土地理院のGPS観測によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入によると考えられる長期的な膨張が続いている。
 桜島では今後も南岳山頂火口及び昭和火口の周辺に噴石を飛散させる程度の小規模な噴火が発生すると予想されるので、これらの地域では噴火に対する警戒が必要である。


薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上概ね300mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
 薩摩硫黄島では硫黄岳山頂火口から半径約1kmの範囲に噴石を飛散させる程度の小規模な噴火が発生すると予想されるので、これらの地域では噴火に対する警戒が必要である。


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 口永良部島では新岳(しんだけ)火口から半径約1kmの範囲に噴石を飛散させる程度の小規模な噴火が発生すると予想されるので、これらの地域では噴火に対する警戒が必要である。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制) ]

 14〜16日に御岳(おたけ)火口で爆発的噴火が発生したほか、小規模な噴火も時々発生した。十島(としま)村役場諏訪之瀬島出張所によると、17日に集落(御岳の南南西約4km)で少量の降灰が確認された。
 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 諏訪之瀬島では今後も御岳火口から半径約1kmの範囲に噴石を飛散させる程度の小規模な噴火が発生すると予想されるので、これらの地域では噴火に対する警戒が必要である。


○その他の火山


焼岳 [噴火予報(平常)]

 焼岳近くの住民が18日未明にドーンという音を聞くとともに、国土交通省神通川水系砂防事務所のライブカメラで赤い光を見たとの連絡があったが、焼岳付近の地震観測点には、当該時刻に噴火等に伴うと思われる震動記録はなかった。翌19日に国土交通省北陸地方整備局の協力を得て行った上空からの観測でも、噴火等の跡は認められず、噴気量にも特段の変化はなかった。
 焼岳付近を震源とする地震活動は低調で、火山活動に特段の変化はなく、引き続き火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候はみられない。


霧島山(新燃岳) [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 14日から15日にかけて、新燃岳の浅いところを震源とする地震がやや増加した。しかし、火山性微動や火口縁を超える噴気は観測されず、傾斜計1)による地殻変動観測でも変化は認められない。
 霧島山(新燃岳)の火山活動に特段の変化はなく、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候はみられない。

1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されることがある。


○上記以外の火山については、火山活動に特段の変化はなく、火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候はみられない。

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