2005年 No.48 火山の概況 (平成17年11月25日 〜 平成17年12月1日)
【噴火が観測された火山】
【活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山】
- ● 十勝岳 [やや活発な状況]
- 噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
- ● 樽前山 [やや活発な状況]
- A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
- ● 浅間山 [やや活発な状況(レベル2)]
- 山頂火口内の高温状態、火山性地震及び火山性微動のやや多い状態が続いている。
- ● 三宅島 [やや活発な状況]
- 多量の火山ガスの放出が続いている。
- ● 福徳岡ノ場 [やや活発な状況]
- 28日に変色水が確認された。
- ● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)]
- 火山性連続微動の振幅のやや大きな状態が続いている。
- ● 霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)]
- 火口縁を超える噴気が時折観測されており、火山活動はやや活発な状態が続いている。
- ● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
- ● 口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)]
- 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
- ▲ 諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)]
- 火山活動は活発な状態にあり、噴火の発生頻度も高い状態が続いているが、今期間は噴火は観測されなかった。
図1 各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
注1 本資料において、レベルは火山活動度レベルを示す。
注2 記号の意味
▲:噴火が観測された火山
●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山
◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
◇:その他記事を掲載した火山
□:記事を掲載していないレベル対象火山
①②等の丸付き数字:火山活動度レベル
注3 記事は、▲、●及び◆(注2参照)に該当する火山について掲載する。
その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。
【各火山の活動解説】
● 十勝岳 [やや活発な状況]
62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。
● 樽前山 [やや活発な状況]
前期間は、微小な火山性地震が18日に29回観測されるなどやや多い状態が続いたが、今期間は1日あたり10回以下と概ね平常レベルで経過した。
今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていたと推定される。
● 浅間山 [やや活発な状況 (レベル2)]
山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。また、山麓の高感度カメラ1)で捉えられる程度の微弱な火映が26日未明に観測されており、火口内は依然として高温状態が続いていると推定される。
25日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり300〜500トン(前回11月21日200〜600トン)とやや多い状態が続いている。
火山性地震及び火山性微動の回数はやや多い状態が続いており、それぞれ1日あたり10〜57回、0〜2回であった。
1) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。
● 三宅島 [やや活発な状況]
山頂火口からは白色噴煙がほぼ連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね100mで推移した。
30日に上空から行った観測2)では、火口内の最高温度は約140℃(赤外熱映像装置3)による)と依然として高温状態が続いていた(前回11月22日約270℃)。二酸化硫黄の放出量は1日あたり3,700〜5,300トンと、依然として多量の火山ガスの放出が続いている(前回11月22日1,700〜5,200トン)。また、三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
30日19時〜23時に火口直下を震源とするやや低周波の地震が増加し、21時25分、21時35分及び22時55分に空振を伴う低周波地震が発生した。噴煙の状況に変化はなく、その他のデータにも特段の変化は見られなかった4)。30日の日回数は130回であった。その他の日は少ない状態で推移した。また、火山性微動は観測されなかった。
2) 航空自衛隊の協力による。
3) 赤外放射温度計及び赤外熱映像装置は、物体が放射する赤外線を感知して温度もしくは温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
4) 三宅島では、空振を伴う低周波地震が発生した時に山頂火口から火山灰噴出を伴うことがある。
● 福徳岡ノ場 [やや活発な状況]
28日に海上保安庁が行った上空からの調査によると、福徳岡ノ場付近で火山活動によると考えられる変色水が2ヶ所確認された。噴煙や浮遊物は認められなかった。
福徳岡ノ場では以前から変色水がたびたび確認されており、今年7月2〜3日には小規模な海底噴火が発生し、その後もしばしば変色水が確認されている。
● 阿蘇山 [やや活発な状況 (レベル2)]
火山性連続微動は振幅のやや大きい状態が続いているが、今期間は振幅に大きな変化はなかった。
25日、30日及び12月1日に行った現地観測では、火口内の湯だまり5)は、量が約8割、色が乳緑色で変化なく、表面温度は59〜64℃(赤外放射温度計3)による)と、量が約8割に増加した11月8日以降やや低い値が続いている(8日以前は70℃前後、その後は60℃前後)。湯だまり内では土砂噴出は観測されず、引き続き噴湯現象が観測されている。
孤立型微動は前期間より増加し、やや多い状態で推移した(今期間838回、前期間416回)。火山性地震の発生状況には大きな変化はなく、噴煙活動、地殻変動等その他の観測データにも特段の変化はなかった。
5) 湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象等が起こり始めることが知られている。
● 霧島山(御鉢) [やや活発な状況 (レベル2)]
御鉢火口の噴気活動はやや活発で、30日に火口縁上100mの高さの噴気が観測された。地震活動は静穏で、その他の観測データにも特段の変化はなかった。
▲ 桜島 [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]
期間中、ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等6)は観測されなかった(前期間も爆発的噴火等5)はなし)。噴火に伴い観測された噴煙の最高は25日の火口縁上300m(灰白色)であった。期間中、鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)で降灰は観測されなかった(前期間もなし)。地震活動及び地殻変動には特段の変化はなかった。
6) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。
● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況 (レベル2)]
噴煙活動は依然としてやや活発で、白色噴煙が硫黄岳火口から連続的に噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね300mで推移した(最高は30日の600m)。火山性地震及び火山性微動の発生状況には特段の変化はなかった。
● 口永良部島 [やや活発な状況 (レベル2)]
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間47回、前期間42回)。火山性微動は観測されなかった。期間中、監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。
▲ 諏訪之瀬島 [活発な状況 (レベル3)]
期間中、噴火は観測されなかった(前期間は18日、19日及び23日に噴火)。
火山性微動は23日(前期間)から28日まで、連続的なものも含めてやや多く発生した。
火山性地震は27〜28日に多発し、日回数はそれぞれ27日88回、28日117回であった。その他の日は少ない状態であった。
表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル
火 山 名 | 情報の種類及び号数 | 発表日時 | 概 要 |
---|---|---|---|
浅 間 山 | 火山観測情報第198号 | 25日16:00 | 18日〜25日15時までの活動状況。21日の火山ガス観測結果。レベルは2。 |
三 宅 島 | 火山観測情報 第574〜580号 (1日1回発表) |
25日〜1日 16:30 |
前日16時〜当日16時の活動状況及び上空の風の予想。 |
阿 蘇 山 | 火山観測情報第54号 | 25日11:00 | やや活発な火山活動が継続(連続微動の振幅やや増大)。レベルは2。 |