2005年 No.41 火山の概況 (平成17年10月7日 〜 平成17年10月13日)

【噴火が観測された火山】

桜 島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)
ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等は観測されなかった。。

(*:桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。)

諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
6日(前期間)〜9日に噴火活動が活発になり、爆発的噴火が7日に9回、8日に8回観測された。

【活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山】

十勝岳 [やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いている。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
山頂火口内の高温状態、火山性地震及び微動のやや多い状態が続いている。10日に火山性地震が一時的に多発した。
三宅島 [やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出が続いていると推定される。
阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)
中岳第一火口内では、熱的活動のやや活発な状態が続いている。
霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)
御鉢火口の噴気活動がやや活発であった。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
今期間の活動は低調であったが、火山活動はやや活発な状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は活動に消長はみられるもののやや多い状態が続いている。


図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)


注1 本資料において、レベルは火山活動度レベルを示す。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山
 ◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
 ◇:その他記事を掲載した火山
 □:記事を掲載していないレベル対象火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●及び◆(注2参照)に該当する火山について掲載する。
   その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山。◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山。◇:その他記事を掲載した火山。

● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね300mで推移した。噴煙の活動に特に変化は見られていないことから、同火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていたと推定される。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 12〜13日に行った調査観測では、A火口の最高温度は約570℃(赤外放射温度計1)による、前回6月29日は約580℃)、B噴気孔群の最高温度は約440℃(熱電対温度計1)による、前回5月25日は約440℃)と、いずれも引き続き高温であった。
 A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況には特に変化はなかった。

1) 赤外放射温度計及び赤外熱映像装置は物体が放射する赤外線を感知して温度もしくは温度分布を測定する測器であり、一方、熱電対温度計はセンサーを直接熱源に当てて温度を測定する測器である。赤外放射温度計及び赤外熱映像装置は熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 10日に火山性地震が一時的に多発して1日あたり145回となり、火山性微動も14回と増加したが、傾斜計等その他の観測データに異常な変化は観測されなかった。火山性地震及び火山性微動の回数はその他の日もやや多い状態が続き、それぞれ1日あたり46〜73回、0〜10回であった。
 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。また、山麓の高感度カメラ2)で捉えられる程度の微弱な火映が13日に観測された。
 12日に上空から行った観測3)では、火口底の地形に変化はなく、火口周辺への新たな噴出物は認められなかった。赤外熱映像装置1)による観測では、火口内の温度分布に変化はなく、最高温度は約440℃と引き続き高温状態であった(前回上空から観測した9月13日は約370℃)。
 13日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり600〜800トンで、少ない状態であった。

2) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。

3) 長野県の協力により、産業技術総合研究所と気象庁が共同で実施。


◆ 白山  [静穏な状況]

 前期間の3日13時59分、白山付近の浅いところを震源とするM4.5の地震が発生し、白山市白峰で震度2を観測した。その後、この地震の余震と見られる地震が3日14時台に14回発生したが、それ以降、地震活動は静穏に経過している。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。今回は火山ガス放出量の観測を行わなかったが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されており、噴煙活動に大きな変化が見られなかったことから、山頂火口からは依然として多量のガスの放出が続いていると推定される。
 期間中、火山性地震の回数は少なく、1日あたり0〜3回であった。火山性微動は観測されなかった。


● 阿蘇山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 中岳第一火口(以下、火口)内では熱的活動のやや活発な状態が続いている。
 13日に行った現地観測では、火口内の湯だまり4)量は約6割と変化はなかった。湯だまりの表面温度は68℃(赤外放射温度計1)による)と依然としてやや高い状態であった(前期間70℃)。湯だまり内では土砂噴出は観測されず、引き続き噴湯現象が観測された。
 火山性連続微動は5日(前期間)から振幅がやや大きくなっているが、今期間は振幅に大きな変化はなく、他の観測データには特に変化はみられていない。
 孤立型微動は前期間に比べやや減少したが発生状況に変化はなく(今期間1日あたり51〜84回、前期間は70〜111回で推移)、火山性地震は少ない状態で経過した。噴煙活動、地殻変動等その他の観測データには特段の変化はなかった。

4) 湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象等が起こり始めることが知られている。


● 霧島山(御鉢)  [やや活発な状況 (レベル2)

 御鉢火口の噴気活動はやや活発で、9日に火口縁上300mの高さの噴気が観測された。地震活動は静穏で、その他の観測データにも特段の変化はなかった。


▲ 桜島  [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 期間中、ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等5)は観測されなかった(前期間は2日に噴火5)を観測)。噴煙の最高は11日のごく小規模な噴火で観測された火口縁上300m(灰白色)であった。期間中、鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)では降灰は観測されなかった(前期間もなし)。地震活動及び地殻変動には特段の変化はなかった。

5) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 今期間の活動は低調であったが、火山活動はやや活発な状態が続いている。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震は、今期間は25回とやや少ない状態であったが(前期間42回)、7月下旬以降、消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。火山性微動は観測されなかった。監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。


▲ 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 6日(前期間)〜9日に噴火活動が活発であった。爆発的噴火が7日に9回、8日に8回観測された。爆発的噴火が観測されたのは7月6日以来であった。噴煙の最高は十島村役場諏訪之瀬島出張所により8日に確認された火口縁上1,000mであった。同出張所によると、7〜8日に時々鳴動があり、9日に集落(御岳の南南西約4km)で降灰が確認された(上記の噴火活動が活発な期間中では前期間の6日にも集落で降灰を確認)。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル
表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル



表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
浅 間 山 火山観測情報第191号 7日16:00 9月30日〜10月7日15時までの活動状況。30日実施の火山ガス観測結果。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第525〜531号
(1日1回発表)
7日〜13日
16:30
前日16時〜当日16時の活動状況、及び上空の風の予想。
阿 蘇 山 火山観測情報第47号 7日11:00 やや活発な火山活動が継続(湯だまりの表面温度高い、湯だまり量約6割、5日から連続微動の振幅やや増大)。レベルは2。


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