2005年 No.38 火山の概況 (平成17年9月16日 〜 平成17年9月22日)

【噴火が観測された火山】

桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)(注1)
19日に噴火があった。
諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
21〜22日に噴火があった。

【活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山】

十勝岳 [やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いている。21日に振幅の小さな火山性微動が観測された。
樽前山 [やや活発な状況]
噴煙の状況に変化はなく、A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
山頂火口内の高温状態、火山性地震及び微動のやや多い状態が続いている。
三宅島 [やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出が続いていると推定される。
福徳岡ノ場 [やや活発な状況]
11日及び15日(いずれも前期間)に変色水が確認された。
阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)
中岳第一火口内では、熱的活動のやや活発な状態が続いている。
霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)
御鉢火口の噴気活動がやや活発であった。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
今期間の活動は低調であったが、火山活動はやや活発な状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
今期間の活動はやや低調であったが、火山活動はやや活発な状態が続いている。


図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)


注1 本資料において、レベルは火山活動度レベルを示す。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山
 ◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
 ◇:その他記事を掲載した火山
 □:記事を掲載していないレベル対象火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●及び◆(注2参照)に該当する火山について掲載する。
   その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山。◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山。◇:その他記事を掲載した火山。

● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。12日(前期間)〜16日にかけて行った調査観測によると、62-2火口の最高温度は約400℃(赤外熱映像装置1)による)で引き続き高温の状態であった(前回6月22日約300℃)。
 21日02時33分頃から継続時間約6分の振幅の小さな火山性微動が観測された。地震活動や地殻変動に特段変化はなかった。火山性微動が観測されたのは7月7日以来である。

1) 赤外放射温度計及び赤外熱映像装置は、物体が放射する赤外線を感知して温度もしくは温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は最高で火口縁上600mであった。また、山麓の高感度カメラ2)で捉えられる程度の微弱な火映が17日と19日に観測された。
 15日(前期間)に引き続き、16日にも山頂部付近で調査観測を行った(15日の観測結果は前号参照)。16日の観測でも、15日と同様に火口中央部の噴気孔が一時的に赤熱3)する現象が確認され、火口縁からの赤外熱映像装置1)による観測では、火口底内の最高温度は約640℃と引き続き高温状態であった(15日約710℃)。
 火山性地震及び火山性微動の回数はやや多い状態が続いており、期間中それぞれ1日あたり31〜60回、3〜9回であった。

2) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。

3) 赤熱現象は、地下から高温の火山ガスなどが噴出する際に、周辺の地表面が熱せられて赤く見える現象。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は最高で火口縁上500mであった。今期間は火山ガス放出量の観測を行わなかったが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されており、噴煙活動にも大きな変化が見られなかったことから、山頂火口からは依然として多量の火山ガスの放出が続いていると推定される。
 期間中、火山性地震の回数は少なく、1日あたり0〜8回であった。18日20時12分と21日17時31分に振幅のやや大きな低周波地震が発生し、21日の地震は空振を伴った。これらの地震発生時の噴煙の状況は雲による視界不良のため確認できなかったが、その他の観測データには特に異常は見られなかった。火山性微動は観測されなかった。


● 福徳岡ノ場  [やや活発な状況] <期間外>

 11日に海上保安庁、15日に海上自衛隊が行った上空からの調査によると(いずれも前期間)、福徳岡ノ場付近で火山活動によると考えられる変色水が確認された。噴煙や浮遊物は認められなかった。


● 阿蘇山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 中岳第一火口(以下、火口)内では熱的活動のやや活発な状態が続いている。
 22日に行った現地観測では、火口内の湯だまり4)量は約6割と変化はなかった。湯だまりの表面温度は67℃(赤外放射温度計1)による)と依然としてやや高い状態にある(前期間70℃)。湯だまり内では土砂噴出は観測されず、引き続き噴湯現象が観測された。
 火山性連続微動は振幅の小さい状態が続いている。
 孤立型微動の発生状況に変化はなく(今期間1日あたり43〜87回、前期間は42〜68回で推移)、火山性地震は比較的少ない状態で経過した。噴煙活動、地殻変動等その他の観測データには特段の変化はなかった。

4) 湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象等が起こり始めることが知られている。


● 霧島山(御鉢)  [やや活発な状況 (レベル2)

 御鉢火口の噴気活動はやや活発で、21日に火口縁上100mの高さの噴気が観測された。その他の観測データには特段の変化はなかった。


▲ 桜島  [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 19日に噴火5)が観測された(前期間はなし)。噴火に伴い灰白色の噴煙が火口縁上1,000mまで上がった。20日にはごく小規模な噴火も観測されたが、期間中、鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)では降灰は観測されなかった。地震活動及び地殻変動には特段の変化はなかった。

5) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 今期間の活動は低調であったが、火山活動はやや活発な状態が続いている。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震はやや少ない状態が続いており(今期間1日あたり6〜10回、前期間は6〜11回で推移)、火山性微動は発生しなかった。監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は観測されなかった。今期間の活動はやや低調であったが、火山活動はやや活発な状態が続いている。


▲ 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、21日夜から22日朝にかけて集落(御岳の南南西約4km)で降灰が確認された。また、22日早朝から11時頃まで火山灰を含む噴煙が火口縁上1,000mまで上がっているのが確認された。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル
表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル



 
表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
浅 間 山 火山観測情報第188号 16日16:00 9月9日〜16日15時の活動状況。上空及び山頂部における調査観測結果。レベルは2。
火山観測情報第189号 22日16:00 9月16日〜22日15時の活動状況。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第504〜510号
(1日1回発表)
16〜22日
16:30
前日16時〜当日16時の活動状況、及び上空の風の予想。
阿 蘇 山 火山観測情報第44号 16日11:00 やや活発な火山活動が継続(湯だまり表面温度の高温状態継続、湯だまり量約6割に減少)。レベルは2。
火山観測情報第45号 22日11:00 やや活発な火山活動が継続(湯だまり表面温度やや高い、湯だまり量約6割)。レベルは2。


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