2005年 No.37 火山の概況 (平成17年9月9日 〜 平成17年9月15日)

【噴火が観測された火山】

諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)(注1)
9日に噴火があった。

【活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山】

十勝岳 [やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いている。
樽前山 [やや活発な状況]
噴煙の状況に変化はなく、A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
山頂火口内の高温状態、火山性地震及び微動のやや多い状態が続いている。
三宅島 [やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出が続いている。
阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)
中岳第一火口内では、熱的活動のやや活発な状態が続いている。
霧島山(御鉢) [やや活発な状況(レベル2)
今期間の活動は低調であったが、火山活動はやや活発な状態が続いている。
桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)
噴火活動は比較的静穏な状態が続いている。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
今期間の活動は低調であったが、火山活動はやや活発な状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
今期間の活動はやや低調であったが、火山活動はやや活発な状態が続いている。


図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)


注1 本資料において、レベルは火山活動度レベルを示す。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山
 ◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
 ◇:その他記事を掲載した火山
 □:記事を掲載していないレベル対象火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●及び◆(注2参照)に該当する火山について掲載する。
   その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山。◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山。◇:その他記事を掲載した火山。

● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。
 12日に行った調査観測によると、62-2火口の最高温度は約360℃(赤外熱映像装置1)による)で引き続き高温の状態であった(前回6月22日約300℃)。

1) 赤外放射温度計及び赤外熱映像装置は、物体が放射する赤外線を感知して温度もしくは温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、引き続き高温の状態が続いていると推定される。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙は最高で火口縁上600mまで上がった。また、山麓の高感度カメラ2)で捉えられる程度の微弱な火映が11〜13日に観測された。
 13日に上空から行った観測3)および15日に山頂部付近で行った調査観測では、山頂火口内の地形や噴気活動等の状態に特に大きな変化はなかった。火口底は緩やかなすり鉢状の地形となっており、硫黄昇華物と思われる白〜黄色の付着物が広範囲に見られた。火口底の中心部には直径3〜5m程度の内部が赤熱4)する噴気孔があり、火口縁からの赤外熱映像装置1)による観測では約710℃と極めて高い温度が観測された。これは前回8月5日の観測(約570℃)に比べ約140℃高い値であるが、前回に比較して今回は火口内の噴煙量が少なく噴気孔がはっきり確認されており、観測条件が良かったため実際の噴気孔内の温度に近い値が観測されたものとみられる。
 14日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり2,000〜3,700トンで、今年の4月以降は1日あたり1,000〜2,000トンのやや多い状態が続いていたが、それよりも多い値となった。
  火山性地震はやや多い状態で推移した。12日には一時的に多発し、1日あたり106回となったが、その他の日は45〜57回であった。また、火山性微動の回数もやや多い状態が続いており、1日あたり2〜9回であった。

2) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。

3) 長野県の協力により、気象庁と東京大学地震研究所が共同で実施。

4) 赤熱現象は、地下から高温の火山ガスなどが噴出する際に、周辺の地表面が熱せられて赤く見える現象。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙は最高で火口縁上1,100mまで上がった。15日に上空から行った火山ガス観測5)では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり2,500〜3,500トンで、依然として多量の火山ガスの放出が続いている。また、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 火山性地震は9日21時〜23時、11日01時〜03時、および14日07時〜10時に、火口直下を震源とするやや低周波の地震が一時的に増加した。いずれの場合にも、振幅のやや大きな低周波地震が併せて発生したが、噴煙の状況等その他の観測データに異常はみられなかった。1日あたりの地震発生回数は9日に29回、11日に19回、14日に43回となった以外は少なく、1日あたり0〜4回であった。火山性微動は観測されなかった。

5) 陸上自衛隊の協力による。


● 阿蘇山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 中岳第一火口(以下、火口)内では熱的活動のやや活発な状態が続いている。
 13日に行った現地観測では、火口内の湯だまり6)量は減少傾向が続いており約6割であった(前期間約7割)。湯だまりの表面温度は70℃(赤外放射温度計1)による)と依然として高温であった(前期間70℃)。湯だまり内では土砂噴出は観測されず、噴湯現象が観測された。
 火山性連続微動は振幅の小さい状態が続いている。
 孤立型微動は引き続きやや少ない状態で(今期間1日あたり42〜68回、前期間は29〜57回で推移)、火山性地震は比較的少ない状態で経過した。噴煙活動、地殻変動等その他の観測データには特段の変化はなかった。

6) 湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象等が起こり始めることが知られている。


● 霧島山(御鉢)  [やや活発な状況 (レベル2)

 今期間の活動は低調であったが、火山活動はやや活発な状態が続いている。


● 桜島  [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 今期間、噴火は観測されなかった(前期間は2日に噴火が観測7)され、3〜4日に鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)で降灰が観測された)。地震活動及び地殻変動にも特段の変化はなかった。噴火活動は比較的静穏な状態が続いている。

7) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震は前期間より減少し、1日あたり5〜11回と少ない状態で推移した(前期間は4日に112回と多発した)。火山性微動の発生状況、噴煙の状況にも特段の変化はなかった。今期間の活動は低調であったが、火山活動はやや活発な状態が続いている。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震はやや少ない状態が続いており、1日あたり6〜11回で推移した(前期間は0〜10回)。火山性微動も発生状況に変化はなく同0〜1回で推移した(前期間は0〜4回)。監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は観測されなかった。今期間の活動はやや低調であったが、火山活動はやや活発な状態が続いている。


▲ 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、9日に火山灰を含む噴煙が火口縁上400mまで上がっているのが確認された。期間中、集落(御岳の南南西約4km)で降灰はなかった。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル
表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル



 
表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
浅 間 山 火山観測情報第187号 9日16:00 9月2日〜9日15時の活動状況。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第497〜503号
(1日1回発表)
9〜15日
16:30
前日16時〜当日16時の活動状況、及び上空の風の予想。
阿 蘇 山 火山観測情報第43号 9日11:10 やや活発な火山活動が継続(中岳第一火口の熱的な活動は引き続きやや活発、降水のため湯だまり量約7割に増加)。レベルは2。


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