2005年 No.32 火山の概況 (平成17年8月5日 〜 平成17年8月11日)

【噴火が観測された火山】

桜 島[比較的静穏な噴火活動(レベル2)(注1)
ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等は観測されなかった。
(*:桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。)
諏訪之瀬島[活発な状況(レベル3)
10日朝から期間の終わりまで噴火が断続的に観測された。

【活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山】

十勝岳[やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山[やや活発な状況]
噴煙の状況に変化はなく、A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山[やや活発な状況(レベル2)
山頂火口内の高温状態、火山性地震、微動のやや多い状態が続いている。
三宅島[やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出が続いている。
阿蘇山[やや活発な状況(レベル2)
中岳第一火口内では、熱的な活動のやや活発な状態が続いている。
霧島山(御鉢)[やや活発な状況(レベル2)
御鉢火口の噴気活動がやや活発であった。
薩摩硫黄島[やや活発な状況(レベル2)
今期間の活動は低調であったが、長期的にはやや活発な状態が続いている。
口永良部島[やや活発な状況(レベル2)
火山性地震及び微動のやや多い状態が続いている。


図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)


注1 本資料において、レベルは火山活動度レベルを示す。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山
 ◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
 ◇:その他記事を掲載した火山
 □:記事を掲載していないレベル対象火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●及び◆(注2参照)に該当する火山について掲載する。
   その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山。◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山。◇:その他記事を掲載した火山。

●十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙活動に特に変化は見られていないことから、同火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


●樽前山  [やや活発な状況]

 今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化は見られていないことから、これらの火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、引き続き高温の状態が続いていると推定される。


●浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は最高で火口縁上400mであった。山麓の高感度カメラ1)で捉えられる程度の微弱な火映が毎日観測され、また5日に行った調査観測(後述)によると火口内の最高温度は約570℃(赤外熱映像装置2)による)で、火口内は依然として高温状態が続いている。
 火山性地震及び火山性微動の回数はやや多い状態が続いており、期間中それぞれ1日あたり14〜32回、0〜9回であった。
 4日(前期間)〜5日に2004年噴火後初めて山頂部付近での調査観測を行った。山頂火口内では、2004年9月中旬に国土地理院や気象庁の観測で確認されたドーム状に隆起した溶岩地形は失われ、緩やかなすり鉢状の地形となっており、火口底は2004年噴火前と比べて数十m浅くなっていた。火口内には、直径数m〜10m程度の噴火で吹き飛ばされた岩塊や火口壁が崩落したとみられる岩塊等が多数見られた。また、火口底の中央及び北東側の噴気孔の内部では赤熱現象3)が見られ、中央の噴気孔付近では、赤外熱映像装置による観測で約570℃という高い温度が観測された。

1) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。

2) 赤外放射温度計や赤外熱映像装置は、物体が放射する赤外線を感知して温度や温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。

3) 赤熱現象は、地下から高温の火山ガスなどが噴出する際に、周辺の地表面が熱せられて赤く見える現象。


●三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、最高で火口縁上1,000mまで上がった。9日に行った火山ガス観測4)では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり7,100〜8,800トン(前回は7月12日の同2,500〜5,900トン)で、依然として多量の火山ガスの放出が継続している。また、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 9日に上空から行った火口内及び周辺の状況の観測4)では、火口内外の地形に大きな変化は見られず、火口内の最高温度は赤外熱映像装置2)による観測で約180℃(前回は5月24日の約210℃)と特に変化はなかった。
 地震活動等の状況については、9日02時頃から06時にかけて、やや低周波地震が増加した。05時23分には空振を伴う振幅のやや大きな低周波地震が発生し、三宅村神着で震度1を観測した。地震発生時の噴煙の状況は雲による視界不良で確認できなかったが、その後行った現地調査では降灰は確認されなかった。9日の地震回数は184回となったが、その他の日は1日あたり1〜8回と少なかった。火山性微動は観測されなかった。

4) 警視庁の協力による。


●阿蘇山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 中岳第一火口(以下、火口)内では熱的な活動のやや活発な状態が続いている。
 11日夜に監視カメラ5)で、火口底の一部に赤熱現象3)が観測された。
 5日及び11日に行った現地観測では、火口内の状況に大きな変化はなく、湯だまりの量は減少傾向が続いており、11日には約2割になっていた(5日は約3割)。湯だまりの表面温度は71〜74℃(赤外放射温度計2)による)と依然として高温で(前回7月27日74℃)、湯だまり内では高さ2〜3mの多数の土砂噴出が観測された。
 火山性連続微動は振幅の小さい状態が続いている。
 孤立型微動の発生状況には特に変化はなく(今期間は1日あたり47〜138回、前期間は96〜131回で推移)、火山性地震は比較的少ない状態で経過した。噴煙活動、地殻変動等その他の観測データには特段の変化はなかった。

5) 阿蘇火山博物館が中岳第一火口縁に設置。


●霧島山(御鉢)  [やや活発な状況 (レベル2)

 御鉢火口の噴気活動はやや活発で、9日に火口縁上100mの高さの噴気が観測された。地震活動は静穏で、その他の観測データにも特段の変化はなかった。


▲桜島  [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 期間中、ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等6)は観測されなかった(前期間も爆発的噴火等6)はなし)。6日にごく小規模な噴火による灰白色の噴煙が観測され、高さは火口縁上100mであった。鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)では、降灰は観測されなかった(前期間もなし)。地震活動及び地殻変動には特段の変化はなかった。

6) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。


●薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 今期間の活動は低調であったが、長期的にはやや活発な状態が続いている。


●口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震はやや多い状態が続いており、1日あたり8〜24回で推移した(前期間は同4〜28回)。火山性微動も継続時間の短いものがやや多く発生しており、1日あたり1〜9回で推移した(前期間は同1〜10回)。監視カメラ7)による観測では、噴気等は観測されなかった。

7) 新岳の北西約4kmに設置。


▲諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 10日未明から活動が活発になり、10日朝から期間の終わりまで噴火が断続的に観測された。爆発的噴火は観測されなかった。噴煙の最高は10日09時に監視カメラ8)で観測された火口縁上1,500m(灰白色)であった。十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、期間中、集落(御岳の南南西約4km)で降灰はなかった。
 活動の活発化に伴い、火山性微動も10日未明から振幅のやや大きなものが断続的に観測されている。

8) 御岳の北北東約25kmの中之島に設置。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山(上)及び各火山のレベル(下)
表1(上) 最近1か月に記事を掲載した火山

表1(下) 最近1か月の各火山のレベル



表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
浅 間 山 火山観測情報第182号 5日16:00 7月29日〜8月5日15時の活動状況(噴煙量、地震及び微動やや多い、微弱な火映を時々観測、4日実施の調査観測結果)。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第431号〜444号
(1日2回発表)
5〜11日
(09:30及び
16:30)
前日16時〜当日09時もしくは当日09〜16時の活動状況、及び上空の風の予想。
阿 蘇 山 火山観測情報第38号 5日11:00 やや活発な火山活動が継続(湯だまりの表面温度高く、量は約3割、小規模な土砂噴出継続)。レベルは2。
口永良部島 火山観測情報第24号 8日14:05 火山性地震のやや多い状態継続。レベルは2。


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