2005年 No.31 火山の概況 (平成17年7月28日 〜 平成17年8月4日)
【噴火が観測された火山】
【活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山】
- ●十勝岳[やや活発な状況]
- 噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
- ●樽前山[やや活発な状況]
- 噴煙の状況に変化はなく、A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
- ●浅間山[やや活発な状況(レベル2)]
- 活発な噴煙活動、微弱な火映の発生、火山ガスの放出量及び火山性地震、微動のやや多い状態が続いている。
- ●三宅島[やや活発な状況]
- 多量の火山ガスの放出が継続していると推定される。
- ●阿蘇山[やや活発な状況(レベル2)]
- 中岳第一火口内では、熱的な活動のやや活発な状態が続いている。
- ●霧島山(御鉢)[やや活発な状況(レベル2)]
- 今期間の活動は低調であったが、長期的にはやや活発な状態が続いている。
- ●薩摩硫黄島[やや活発な状況(レベル2)]
- 今期間の活動は低調であったが、長期的にはやや活発な状態が続いている。
- ●口永良部島[やや活発な状況(レベル2)]
- 火山性地震及び微動のやや多い状態が続いている。
- ●諏訪之瀬島[やや活発な状況(レベル3)]
- 28〜30日に火山性微動が断続的に観測され、火山性地震がやや多く発生した。
図1 各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
注1 本資料において、レベルは火山活動度レベルを示す。
注2 記号の意味
▲:噴火が観測された火山
●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山
◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
◇:その他記事を掲載した火山
□:記事を掲載していないレベル対象火山
①②等の丸付き数字:火山活動度レベル
注3 記事は、▲、●及び◆(注2参照)に該当する火山について掲載する。
その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。
【各火山の活動解説】
●十勝岳 [やや活発な状況]
62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙活動に特に変化は見られていないことから、同火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。
●樽前山 [やや活発な状況]
今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化は見られていないことから、これらの火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、引き続き高温の状態が続いていると推定される。
●浅間山 [やや活発な状況 (レベル2)]
29日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたりに換算して1,200〜2,000トンと依然としてやや多い状態であった(前回は6月24日600〜1,800トン)。4日に行った調査観測で、山頂火口縁から行った赤外熱映像装置1)による観測では、火口内の最高温度は約550℃で、依然として高温状態が続いていた。
山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は最高で火口縁上500mであった。また、山麓の高感度カメラ2)で捉えられる程度の微弱な火映が8月1日及び4日を除く毎日観測された。
火山性地震及び火山性微動の回数はやや多い状態が続いており、期間中それぞれ1日あたり16〜41回、1〜11回であった。
1) 赤外放射温度計や赤外熱映像装置は、物体が放射する赤外線を感知して温度や温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
2) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。
●三宅島 [やや活発な状況]
期間中、山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は最高で火口縁上300mであった。
今期間は火山ガス放出量の観測を行わなかったが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されており、噴煙活動にも大きな変化が見られなかったことから、山頂火口からは依然として多量の火山ガス放出が続いていると推定される。
火山性地震の回数は少なく、1日あたり0〜3回であった。火山性微動は観測されなかった。
●阿蘇山 [やや活発な状況 (レベル2)]
中岳第一火口内では熱的な活動のやや活発な状態が続いている。
3日に上空から行った観測3)では、中岳第一火口内に引き続き灰色の湯だまりが存在し、湯だまり内では土砂噴出が発生しているのが確認された。今期間は現地観測を行わなかったため火口内の詳細な状況は不明であったが、5日午前(期間外)に行った現地観測では、中岳第一火口内の状況に大きな変化はなく、湯だまりの量は引き続き約3割、色は灰色で、表面温度は74℃(赤外放射温度計1)による)と依然として高温であった(前回7月27日74℃)。湯だまり内では高さ2〜3mの多数の土砂噴出が観測された。
火山性連続微動は振幅の小さい状態が続いている。
孤立型微動はやや多い状態で経過したが、発生状況には特に変化はなく(今期間は1日あたり96〜131回、前期間は同77〜159回で推移)、火山性地震は比較的少ない状態で経過した。噴煙活動、地殻変動等その他の観測データには特段の変化はなかった。
3) 陸上自衛隊第8師団の協力による。
●霧島山(御鉢) [やや活発な状況 (レベル2)]
今期間の活動は低調であったが、長期的にはやや活発な状態が続いている。
▲桜島 [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]
期間中、ごく小規模な噴火は観測されたが、爆発的噴火等4)は観測されなかった(前期間は爆発的噴火を3回観測)。3日にごく小規模な噴火による灰白色の噴煙が観測され、高さは火口縁上300mであった。鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)では、降灰は観測されなかった(前期間もなし)。地震活動及び地殻変動には特段の変化はなかった。
4) 桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的噴火もしくは一定の規模以上の噴火を桜島の噴火の回数として計数している。
●薩摩硫黄島 [やや活発な状況 (レベル2)]
今期間の活動は低調であったが、長期的にはやや活発な状態が続いている。
●口永良部島 [やや活発な状況 (レベル2)]
火山性地震は日回数に増減があるもののやや多い状態が続いており、1日あたり4〜28回で推移した(前期間は同5〜43回)。火山性微動も継続時間の短いものがやや多く発生しており、1日あたり1〜10回で推移した(前期間は同2〜7回)。監視カメラ5)による観測では、噴気等は観測されなかった。
5) 新岳の北西約4kmに設置。
●諏訪之瀬島 [活発な状況 (レベル3)]
期間中、噴火は観測されなかった(前期間は27日夕方に小規模な噴火が観測された)。
火山性微動は、27日夜(期間外)から30日昼頃まで断続的に観測され、特に28日未明から同日昼頃にかけては振幅がやや大きかった。また、火山性地震が29〜30日にやや多く発生し、29日に81回、30日に64回観測された。その他の日は、1日あたり0〜11回であった。
表1 最近1か月に記事を掲載した火山(上)及び各火山のレベル(下)
火 山 名 | 情報の種類及び号数 | 発表日時 | 概 要 |
---|---|---|---|
浅 間 山 | 火山観測情報第181号 | 29日16:00 | 7月22日〜29日15時の活動状況(噴煙量、地震及び微動やや多い、微弱な火映を時々観測)。レベルは2。 |
三 宅 島 | 火山観測情報第415号 ↓(1日2回発表) 火山観測情報第430号 |
28日09:30 ↓ 4日16:30 |
前日15時〜当日09時もしくは当日09〜15時の活動状況、及び上空の風の予想。 |
阿 蘇 山 | 火山観測情報第37号 | 29日11:20 | やや活発な火山活動が継続(赤熱現象を観測、26日から連続微動の振幅減少)。レベルは2。 |
口永良部島 | 火山観測情報第23号 | 1日14:15 | 火山性地震のやや多い状態継続。レベルは2。 |