2005年 No.30 火山の概況 (平成17年7月21日 〜 平成17年7月27日)

【噴火した火山】

桜 島[比較的静穏な噴火活動(火山活動度レベル*2]
期間中、爆発的噴火が3回観測された。(*:以下、レベルと記載。) 
諏訪之瀬島[活発な状況(レベル3)
27日から火山活動がやや活発となり、噴火が観測された。

【活動が活発な状態にあるか、もしくは観測データ等に変化があった火山】

十勝岳[やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山[やや活発な状況]
噴煙の状況に変化はなく、A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山[やや活発な状況(レベル2)
活発な噴煙活動、微弱な火映の発生、火山性地震及び微動のやや多い状態が続いている。
三宅島[やや活発な状況]
地震が一時増加した。多量の火山ガスの放出が継続していると推定される。
福徳岡ノ場[やや活発な状況]
変色水が確認された。
阿蘇山[やや活発な状況(レベル2)
中岳第一火口内では、熱的な活動のやや活発な状態が続いている。赤熱現象が観測された。
霧島山(御鉢)[やや活発な状況(レベル2)
今期間の活動は低調であったが、長期的にはやや活発な状態が続いている。
薩摩硫黄島[やや活発な状況(レベル2)
今期間の活動は低調であったが、長期的にはやや活発な状態が続いている。
口永良部島[やや活発な状況(レベル2)
火山性地震及び微動のやや多い状態が続いている。地震が25日に一時増加した。


図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)


注1 記号の意味
 ▲:噴火した火山
 ●:活動が活発な状態にあるか、もしくは観測データ等に変化があった火山
 ◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
 ◇:その他記事を掲載した火山
 □:記事を掲載していないレベル対象火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注2 記事は、▲、●及び◆(注1参照)に該当する火山について掲載する。
   その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。

注3 各火山の活動解説の[噴煙・噴気・地震・微動・空振・地殻変動・熱・火山ガス等]は、
   主な火山現象もしくは変化があった観測データ項目を示す。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態にあるか、観測データ等に変化があった火山。◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山。◇:その他記事を掲載した火山。

●十勝岳 [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね300mで推移した。噴煙の活動に特に変化は見られていないことから、同火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


●樽前山 [やや活発な状況]

 今期間、A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化は見られていないことから、これらの火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、引き続き高温の状態が続いていると推定される。


●浅間山 [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は最高で火口縁上400mであった。また、山麓の高感度カメラ1)で捉えられる程度の微弱な火映が27日に観測された。
 火山性地震及び火山性微動の回数はやや多い状態が続いており、期間中それぞれ1日あたり33〜75回、0〜8回であった。

1) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。


●三宅島 [やや活発な状況]

 21日02時40分頃からやや低周波の地震が増加し、07時12分、07時53分及び10時48分には空振を伴う振幅のやや大きな低周波地震が発生した。07時53分の地震では三宅村神着で震度1を観測した。これらの地震発生時には山頂火口からの噴煙は認められず、三宅島測候所が行った現地調査でも降灰は確認されなかった。同日10時50分以降は、火山性地震は少ない状態に戻った。21日の地震回数は92回となったが、その他の日は1日あたり0〜5回で少なかった。火山性微動は観測されなかった。
 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、最高で火口縁上300mまで上がった。
 今期間は火山ガス放出量の観測を行わなかったが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されており、噴煙活動にも大きな変化が見られなかったことから、山頂火口からは依然として多量の火山ガス放出が続いていると推定される。


●福徳岡ノ場 [やや活発な状況]

 海上保安庁が21日に行った上空からの調査によると、福徳岡ノ場付近で500m程度に広がる黄緑色変色水が確認された。浮遊物は認められなかった。


●阿蘇山 [やや活発な状況 (レベル2)]

 中岳第一火口内では熱的な活動のやや活発な状態が続いている。
 22日及び25〜27日に行った現地観測では、27日夜に火口底の湯だまりの南西側及び中央部で赤熱現象2)が観測された。赤熱現象が観測されたのは6月24日以来であった。湯だまりの量は22日には約4割から約3割に減少しており、色は25日には灰白色から灰色に変色していた。湯だまりの表面温度は68〜74℃3)と依然高い状態であった。湯だまり内では、引き続き多数の土砂噴出が観測され、最高は約5mであった。
 火山性連続微動の振幅は26日昼頃から小さくなっている。
 孤立型微動はやや多い状態で経過したが、発生状況には特に変化はなく(今期間の発生回数は757回、前期間は750回)、火山性地震は比較的少ない状態で経過した。噴煙活動、地殻変動等その他の観測データには特段の変化はなかった。

2) 赤熱現象は、地下から高温の火山ガスなどが噴出する際に、周辺の地表面が熱せられて赤く見える現象。阿蘇山では、赤熱域が拡大すると、火孔が開孔し、噴火活動が活発化したことがある。

3) 赤外放射温度計による。赤外放射温度計は物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


●霧島山(御鉢) [やや活発な状況 (レベル2)

 今期間の活動は低調であったが、長期的にはやや活発な状態が続いている。


▲桜島 [比較的静穏な噴火活動 (レベル2)]

 今期間、爆発的噴火(以下、爆発)が21日2回、22日1回の計3回観測された(前期間は爆発を2回観測)。爆発時の噴煙等の状況は夜間のため不明であった。ごく小規模な噴火は時折発生しており、噴煙の最高は21日の火口縁上600m(灰白色)であった。鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)では、降灰は観測されなかった(前期間もなし)。地震活動及び地殻変動には特段の変化はなかった。


●薩摩硫黄島 [やや活発な状況 (レベル2)]

 今期間、火山性連続微動は観測されず、その他の活動も低調であったが、長期的にはやや活発な状態が続いている。


●口永良部島 [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震は日回数に増減があるもののやや多い状態が続いており、期間中114回観測された(前期間は73回)。特に25日に増加し日回数は43回であった。火山性微動も継続時間の短いものがやや多く発生しており、期間中29回(前期間は36回)観測された。監視カメラ4)による観測では、噴気等は観測されなかった。

4) 新岳の北西約4kmに設置。


▲諏訪之瀬島 [活発な状況 (レベル3)]〈期間外の記述を含む〉

 27日から活動がやや活発になり、噴火が発生した。十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、27日17時頃、火山灰を含む噴煙が高さ火口縁上800mまで上がり、南東に流れていた。期間中、集落(御岳の南南西約4km)では降灰はなかった。
 火山性微動が27日夜から断続的に観測されるようになり、28日(期間外)未明からは連続して観測され、振幅もやや大きくなっている。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山(上)及び各火山のレベル(下)
表1(上) 最近1か月に記事を掲載した火山

表1(下) 最近1か月の各火山のレベル



表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
浅 間 山 火山観測情報第180号 22日16:00 7月15〜7月22日15時の活動状況(噴煙量、地震及び微動やや多い、微弱な火映を時々観測)。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報第401号
↓(1日2回発表)
火山観測情報第414号
21日09:30

27日16:30
前日15時〜当日09時もしくは当日09〜15時の活動状況、及び上空の風の予想。
阿 蘇 山 火山観測情報第36号 22日11:00 やや活発な火山活動が継続(中岳第一火口内の状況、連続微動の振幅には大きな変化はない)。レベルは2。
口永良部島 火山観測情報第21号 22日13:30 火山性地震のやや多い状態継続。レベルは2。
火山観測情報第22号 25日19:30 火山性地震が増加。レベルは2。


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