2005年 No.29 火山の概況 (平成17年7月14日 〜 平成17年7月20日)

【噴火した火山】

桜 島
期間中、爆発的噴火が2回観測された。火山活動度レベルは2(以下、レベルと記載)。

【活動が活発な状態にあるか、もしくは観測データ等に変化があった火山】

十勝岳
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山
噴煙の状況に変化はなく、A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山
活発な噴煙活動、微弱な火映の発生、火山性地震及び微動のやや多い状態が続いている。レベルは2。
三宅島
地震が一時増加した。多量の火山ガスの放出が継続していると推定される。
福徳岡ノ場
変色水が確認された。
阿蘇山
中岳第一火口内では、熱的な活動のやや活発な状態が続いている。レベルは2。
霧島山(御鉢)
噴気活動がやや活発であった。レベルは2。
薩摩硫黄島
火山性連続微動が観測された。レベルは2。
口永良部島
19日に火山性地震が一時増加するなど、火山性地震及び微動のやや多い状態が続いている。レベルは2。
諏訪之瀬島
今期間の活動は低調であったが、長期的には活発な状態が続いている。レベル3。


図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山(火山名に下線)


注1 記号の意味
 ▲:噴火した火山
 ●:活動が活発な状態にあるか、もしくは観測データ等に変化があった火山
 ◆:前期間まで▲や●で掲載し、その後の状況等を掲載した火山
 ◇:その他記事を掲載した火山
 □:記事を掲載していないレベル対象火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注2 記事は、▲、●及び◆(注1参照)に該当する火山について掲載する。
   その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。

注3 各火山の活動解説の[噴煙・噴気・地震・微動・空振・地殻変動・熱・火山ガス等]は、
   主な火山現象もしくは変化があった観測データ項目を示す。



【各火山の活動解説】

十勝岳 [噴煙・熱] (やや活発な状況)

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上概ね200mで推移した。噴煙活動に特に変化は見られていないことから、同火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。


樽前山 [熱] (やや活発な状況)

 A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化は見られていないことから、これらの火口の熱的な活動にも大きな変化はなく、引き続き高温の状態が続いていると推定される。


浅間山 [噴煙・火映・地震・微動] (やや活発な状況 【レベル2】

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は最高で火口縁上500mであった。また、山麓の高感度カメラ1)で捉えられる程度の微弱な火映が時々観測された。
 火山性地震及び火山性微動の回数はやや多い状態が続いており、期間中それぞれ1日あたり32〜59回、0〜9回であった。

1) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。


三宅島 [地震・噴煙・火山ガス] (やや活発な状況) (期間外の記述を含む)

 16日04時30分頃に、振幅のやや大きな低周波地震が短時間にまとまって9回発生した。一部の地震は空振を伴っていたが、噴煙活動には特段の変化はなかった。この日の地震回数は22回となったが、その他の日は1日あたり1〜9回で、地震活動は総じて低調であった。火山性微動は観測されなかった。
 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、最高で火口縁上300mまで上がった。今期間は火山ガス放出量の観測を行わなかったが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されており、噴煙活動にも大きな変化が見られなかったことから、山頂火口からは依然として多量の火山ガス放出が続いていると推定される。
 なお、期間外の21日02時40分頃から、やや低周波の地震が増加し、07時12分、07時53分、10時48分には空振を伴う振幅のやや大きな低周波地震が発生した。うち、07時53分の地震では三宅村神着で震度1を観測した。これらの地震発生時には山頂火口からの噴煙に異常は認められず、三宅島測候所が行った現地調査でも降灰は確認されなかった。同日10時50分以降は、火山性地震は少ない状態に戻っている。


福徳岡ノ場 [変色水] (やや活発な状況)

 海上自衛隊及び海上保安庁が行った上空からの調査によると、15日、17日及び20日に福徳岡ノ場付近で変色水が確認された2)。浮遊物は認められなかった。
 福徳岡ノ場では7月2〜3日(期間外)に小規模な海底噴火が発生して白色噴煙と浮遊物が確認された。その後、活動は次第に低下して、同4〜5日(期間外)には変色水が確認される程度となっていた。

2) 15日は海上自衛隊、17日及び20日は海上保安庁による。


阿蘇山 [熱・土砂噴出・微動・地震] (やや活発な状況 【レベル2】

 中岳第一火口内では熱的な活動のやや活発な状態が続いている。15日に行った現地観測では、前回(7月6日)に比べ中岳第一火口内の状況に大きな変化はなく、湯だまりの量は引き続き約4割で、色は灰白色、表面温度は72℃3)と依然高い状態であった。湯だまり内では、中央で高さ約5m、その他で高さ1〜2mの多数の土砂噴出が引き続き観測された。(15日の観測概要は前号に期間外の記述として掲載)
 火山性連続微動は期間を通して継続し、振幅に大きな変化はなかった。孤立型微動は増加し、やや多い状態で経過した(今期間の発生回数は750回、前期間は688回)。火山性地震は減少し、少ない状態で経過した(今期間の発生回数は53回、前期間は129回)。
 噴煙活動、地殻変動等その他の観測データには特段の変化はなかった。

3) 赤外放射温度計による。赤外放射温度計は物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


霧島山(御鉢) (やや活発な状況 【レベル2】

 御鉢火口の噴気活動はやや活発で、19日に火口縁上100mの高さの噴気が観測された。地震活動は静穏で、その他の観測データにも特段の変化はなかった。


桜島 [爆発] (比較的静穏な噴火活動 【レベル2】

 今期間、爆発的噴火(以下、爆発)が18日及び20日に計2回観測された(前期間は爆発を3回観測)。噴煙の最高は20日の爆発に伴って観測された火口縁上1800m(灰白色)であった。鹿児島地方気象台(南岳の西南西約11km)では、降灰は観測されなかった(前期間もなし)。
 火山性微動の活動は低調で(前期間は7〜9日に活動が活発化)、地震活動及び地殻変動には特に変化はなかった。


薩摩硫黄島 [微動] (やや活発な状況 【レベル2】

 18日に火山性連続微動が観測された。火山性連続微動が観測されたのは、昨年7月1日以来であった。継続時間の短い火山性微動の発生状況、地震活動及び噴煙活動には大きな変化はなかった。


口永良部島 [地震・微動] (やや活発な状況 【レベル2】

 19日に火山性地震が増加し、19日の日回数は32回であった。火山性地震の日回数が20回を超えたのは今年2月26日(27回)以来であった。火山性地震及び火山性微動はやや多い状態が続いており、期間中、火山性地震が73回(前期間は48回)、火山性微動は継続時間の短いものが36回(前期間は44回)観測された。


諏訪之瀬島 (活発な状況 【レベル3】

 今期間は、噴火は観測されず、火山性地震及び火山性微動の活動も低調であった。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山(上)及び各火山のレベル(下)
表1(上) 最近1か月に記事を掲載した火山

表1(下) 最近1か月の各火山のレベル



表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
浅 間 山 火山観測情報第179号 15日16:00 7月8日〜7月15日15時の活動状況(噴煙量、地震及び微動やや多い、微弱な火映を時々観測)。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報第387号
↓(1日2回発表)
火山観測情報第400号
14日09:30

20日16:30
前日15時〜当日09時もしくは当日09〜15時の活動状況、及び上空の風の予想。
阿 蘇 山 火山観測情報第35号 15日11:10 やや活発な火山活動が継続(中岳第一火口内の状況、連続微動の振幅には大きな変化はない)。レベルは2。
口永良部島 火山観測情報第20号 19日13:20 火山性地震が増加。レベルは2。


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