「雨量を観測するということ」

転倒ます型雨量計

天気予報で「一時間に30ミリの激しい雨」と耳にすることがあるかと思います。この「ミリ」という単位、いったいどのようにして測っているのでしょうか。今回は「雨の測り方」についてご紹介します。

まず「雨量1ミリ」とは、降った雨がどこにも流れず、そのままたまったときの深さが1ミリメートルになる量のことです。つまり、地面に置いた入れ物に雨をためて、その深さを測ればよいわけです。原理はとてもシンプルで、極端にいえば、まっすぐな筒やバケツを外に置いておくだけでも雨量は測れます。気象台では、かつてこの方法によって雨量を観測する貯水型自記雨量計(ちょすいがたじきうりょうけい)を用いていました。この雨量計には受水器で集められた雨が導管を通って貯水タンクにたまります。タンク内にはペンが取り付けられた浮きが入っており、水位の変化に合わせて上下することで、時計仕掛けで回転する円筒に巻いた記録紙に雨量の変化が連続的に記録されていました。観測者はこの記録紙を読み取ることで、いつ、どのくらいの雨が降ったのかを確認していたのです。

雨は、農作物の実りや飲み水、川の流れなど、暮らしのすべてに関わります。そのため世界の各地では、古くから人々が雨の量を記録し、天候の移り変わりを読み取ろうとしてきました。決まった形の器に雨をため、たまった深さをものさしで測る――そんな素朴な方法が、雨量観測の出発点でした。「同じ形の器で、同じように測る」という工夫は、現代の観測にも通じる大切な考え方です。日本でも、古い時代から各地で天候や雨に関する記録が残されており、人々が長く雨と向き合ってきたことがうかがえます。

では、現在はどのように測っているのでしょうか。気象台やアメダスで広く使われているのが「転倒ます型雨量計(てんとうますがたうりょうけい)」です。装置の中には、シーソーのように左右に傾く小さな「転倒ます(受け皿)」が組み込まれています。上の受け口から入った雨水がこの転倒ますにたまり、ちょうど0.5ミリ分の水がたまると、その重みで転倒ますの片方が「カタン」と傾いて水を捨て、同時に反対側の転倒ますが受け口の下に入ります。これを交互にくり返すわけです。

ポイントは、この「カタン」と傾いた回数を電気的に数えているところです。1回傾けば雨量0.5ミリ、10回傾けば5ミリ、というように、傾いた回数をかぞえるだけで雨量が自動的にわかります。しかも回数を時間で区切れば、「今の1時間で何ミリ降ったか」もすぐに計算できます。

また雪の多い地域では、雨量計にヒーターを付けて雪を解かして測ったり、別に「積雪計」を用いて雪の深さを測ったりと、土地の気候に合わせた工夫もされています。今年度は令和8年千葉豪雨をはじめ、短時間に非常に激しい雨が降る事例や、同じ場所で長時間雨が続く事例が各地でみられ、洪水や土砂災害などの被害が相次いで発生しています。気象台では、全国のこのような観測データを活用して、大雨への警戒を呼びかけたり、洪水や土砂災害から命を守るための情報を発表したりしています。これらの情報を活用し、早めの避難や安全確保につなげていただきたいと思います。


令和8年10月

彦根地方気象台

防災業務係


彦根地方気象台のコラム(過去分)

おおむね1年分を掲載予定です。

    • 令和8年9月「地震に備えましょう」

        2026年(令和8年)7月28日16時27分に熊本県熊本地方の深さ16kmでマグニチュード7.1(以下、M7.1という)の地震が発生し、熊本県宇城市(うきし)及び氷川町(ひかわちょう)で震度7を観測したほか、九州地方から中部地方にかけて震度6強~1を観測しました。気象庁は、7月28日に発生したM7.1の地震及びそれ以降に発生した一連の地震活動を「令和8年熊本地震」と命名しています。

        7月28日に発生したM7.1の地震は活断層で発生した地震です。震源断層の主たる部分は、日奈久断層帯の高野-白旗区間の一部及び日奈久区間の北東部におよんでいると考えられています(地震調査研究推進本部地震調査委員会(令和8年8月12日公表))。

        では、滋賀県は活断層のリスクはあるのでしょうか。

        地震に備えましょう

        実は、近畿地方には国内でも活断層が集中的に分布していて、それらの活動度も高い近畿三角帯という区域があります(後述)。滋賀県のほとんどがこの近畿三角帯に含まれます。

        地震調査研究推進本部は、陸域及び沿岸海域に分布し、M6.8以上の地震を引き起こす可能性のある活断層について、対象とする地域ごとに総合的に評価した活断層の地域評価を行ってきました。これまで、関東地域、中国地域、四国地域及び九州地域の地域評価が公表されていましたが、先月8月28日に近畿地域の地域評価が公表されました。

        地震調査研究推進本部は、近畿地域を、近畿北西部、近畿三角帯、紀伊半島の3つの区域に分けて地域評価を行い、M6.8以上の地震が今後30年以内に発生する確率を各区域で評価しました(右図)。これによりますと、近畿北西部は30%、滋賀県のほとんどが含まれる近畿三角帯は40%-60%、紀伊半島は7%、近畿地域の全域では50%-60%になります。

        個別の主要活断層帯の評価も改訂が行われています。例えば、改訂前の琵琶湖西岸断層帯北部の今後30年以内の発生確率は1%-3%でしたが、改訂後の琵琶湖西岸断層帯北部区間の今後30年以内の発生確率は3%-14%と評価されました。なお、平成7年(1995年)兵庫県南部地震で活動した活断層、六甲・淡路島断層帯淡路島西岸区間(野島断層を含む区間)の地震直前の今後30年以内の発生確率は0.02%〜10%となっています。活断層の地震は発生確率が低いと感じるかもしれませんが、身近な危険としてとらえましょう 。

        地震は活断層で起きるものだけではありません。2026年は甚大な被害が発生した昭和南海地震(1946年12月21日)の発生から80年となる節目の年です。前回の南海トラフ地震(昭和東南海地震(1944年)及び昭和南海地震(1946年))が発生してから約80年が経過した現在では、次の南海トラフ地震発生の切迫性が高い状態です。

        地震は身近な危険です。しかしながら地震は予知できません。だからこそ日頃からの備えを行うことが大事です。自分は大丈夫だと思ってはいませんか?このコラムをここまで読んでいただいた皆さん、今から準備を始めましょう。


        令和8年9月

        彦根地方気象台

        南海トラフ地震防災官


    • 令和8年8月「夏休み琵琶湖周辺での水難事故に注意しましょう!!」

        滋賀県は、周辺を1,000メートル級の山に囲まれた盆地地形をなしており、広さ670平方キロメートルに及ぶ、日本最大の湖「琵琶湖」を有している自然豊かな場所です。

        そのため、夏になると京阪神や中京地域から豊かな自然環境を求めて、水泳、魚釣り、カヌー、サップ、キャンプ、キャニオニングなどで、多くの人が琵琶湖などの水辺を訪れます。

        一方、これらのレジャーに伴い、滋賀県内(主に琵琶湖)では、水難事故が、毎年およそ14〜19件*1の規模で発生しており、発生した事故の約半数が死亡・行方不明となる極めて致命率の高い傾向が続いています。

        なぜ、比較的穏やかに見える琵琶湖でこのような水難事故が発生するのでしょうか?

        滋賀県の水難事故には主に以下のような特徴*1があります。

        ・滋賀県の水難事故の大部分は琵琶湖周辺で発生

        ・7月、8月に集中して発生

        ・該当者の7割程度は県外の方

        つまり、県外から夏休み期間などにレジャー目的で琵琶湖に訪れる人々が、水難事故にあわれている場合が多いことなどから、琵琶湖のリスクや天候による影響等、琵琶湖周辺に生活している人々に比べ、県外から訪れる人々が危険性を認識していない場合も多いと考えられます。

        水泳中の事故については、琵琶湖の周辺の湖水浴場の特徴なども原因の一つと言われています。琵琶湖は約400万年前に三重県伊賀市付近にあり、その後日本列島周辺の近くの地盤変動の影響により、少しずつ北へ移動、約40万年頃に現在の位置*2となったと言われています。つまり、太平洋や伊勢湾側から北に力が加わり、北へ押し上げられている状態です。そのため、水深が南湖は浅く、北湖は深くなっています。また、それら地殻変動の影響により滋賀県の東側の山地は三重県側では急峻な地形となっており滋賀県側では伊吹山地や鈴鹿山脈に源流を持つ多くの河川が深く比較的緩やかな渓谷を形成しています。それらの河川から運ばれた土砂などの影響も加わり、琵琶湖の東側の浜辺は比較的遠浅な湖底を形成しています、一方、琵琶湖の西岸側は同様に地殻変動の影響で比良山地などの非常に急峻な地形となっており、その麓の砂浜も同様に水際から急に深くなる砂地が多く存在しています。*2

        水際から急に深くなる場所では、急に足が立たなくなり慌てて上がろうとしても急な傾斜の砂地が崩れて上がれなくなるなどが原因となって、溺れるなどの事故か発生しやすいと言われています。一方、東側の砂浜は比較的遠浅な浜が多くなりますが、波の特性から、強風が遠浅の浜に吹き寄せる場所や流れの強い河川の河口周辺では川の流れと反対の風波とぶつかって波が高くなり、湖面が荒れやすくなります。サップやカヌー、ボートなどを使用しているレジャーでは、バランスを崩し転覆などの事故が発生しやすくなります。

        なお、東岸、西岸を問わず、岸から湖に向かって風が吹いている場合には、岸近くの風は陸地や山の影響で弱くなっていても、沖では遮るものがないので強風となっている場合があります。そのような場所で沖に出た場合には、岸に戻れなくなる、あるいは乗物の操作が困難になる場合があり、波も高くなることから転覆事故にもつながります。更に、夏には積乱雲による急な強い雨や雷、突風などが発生し、これらが水難事故の原因となる場合もあります。

        琵琶湖でのレジャーを楽しむ場合には、琵琶湖の特徴を把握し、出かける前から天気予報などをこまめに確認する、悪天が予想される場合には予定を変更する。また、雷注意報が発表されているなど、大気の状態が不安定で積乱雲が発達し、急な現象が起こる可能性がある場合には、現地で気象庁の「雨雲の動き」などを携帯端末などで随時確認する、風や気温、雲の状況などを注意深く監視し、危険な状況になる前に早めにレジャーを中止し、安全な場所に移動するなどを心掛け、美しい湖(琵琶湖)で楽しい時間を過ごしてください。


        琵琶湖西側に沈む夕日から湖上にのびるサンロード
        琵琶湖西側に沈む夕日から湖上にのびるサンロード
        (荒神山山頂から撮影 撮影者:筆者)
    • 令和8年7月「セミと気象台」
        あぶらぜみ
        あぶらぜみ
        にいにいぜみ
        にいにいぜみ

        ホームページをご覧のみなさま、こんにちは。彦根地方気象台の水害対策気象官です。

        日に日に暑さが増し、ニイニイゼミの声も聞こえるようになりました。アブラゼミやクマゼミの声が聞こえるようになるのももう少しでしょうか(投稿する頃には鳴いているかもしれません)。

        彦根地方気象台では以前、ツクツクボウシ(気象庁の観測名ではツクツクホウシ)、ニイニイゼミ、ハルゼミ、ヒグラシ、ミンミンゼミの初鳴日を観測していました。他の気象台や測候所ではクマゼミやイワサキクサゼミ(気象庁の観測名ではクサゼミ)の初鳴日を観測しているところもありました。初鳴日とは、対象の動物の鳴き声を初めて聞いた日で、気象台や測候所の概ね周囲5km未満の距離で職員が観測したものを記録していました。近年は気象台・測候所周辺の生物の生態環境が変化しており、動物季節観測においては対象を見つけることが困難となってきていることから、セミを含めた動物の初鳴日や初見日の観測は、2020年度までに廃止されました(それより前に廃止となった種目も多数あります)。セミの初鳴日などの記録はこちらから見ることができます。

        私は、彦根地方気象台に配属されて、3年目となりますが、彦根城やベルロード、くすのき通りなど、気象台から5km未満の範囲で声を聞くことができるセミは、ニイニイゼミ、アブラゼミ、クマゼミ、ヒグラシ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシ、チッチゼミの7種かと思います(おおよそ初鳴日が早い順に並べています)。気象台でかつて観測していたハルゼミはその名の通り、5月に出現するセミで、松林を好みます。気象台の観測でも初鳴日は5月が多いのですが、今年は聞けずじまいでした。同じく松林を好むチッチゼミ(こちらは10月まで聞くことができる秋のセミです)がいるので、おそらく同じ場所にまだ生息していると思います。

        最後に、前半で少し触れたイワサキクサゼミについても紹介します。イワサキクサゼミは沖縄県に生息する日本最小のセミです。その名の通り、サトウキビなど草の汁を吸います。種名のイワサキは岩崎卓爾(いわさき たくじ)氏に由来し、八重山地方の昆虫や爬虫類には、イワサキを冠する種が多く存在します。岩崎卓爾氏は石垣島測候所(現在の石垣島地方気象台)の所長を務めた人物で、私にとっては偉大な先輩です。日々、最新鋭のシステムに囲まれて、防災情報の解説や基準作りに励んでいますが、自然に対して興味を持つことの大切さは忘れないようにしたいと思います。


        令和8年7月

        彦根地方気象台

        水害対策気象官


    • 令和8年6月「夏の暑さに注意!」
        日本の夏平均気温偏差
        ※1898年以降観測を継続している気象観測所の中から、
        都市化による影響が小さく、
        特定の地域に偏らないように選定された15地点のデータを利用
        彦根の年間猛暑日日数

        ホームページをご覧のみなさん、こんにちは。彦根地方気象台の地域防災官です。

        今回は「夏の暑さ」についてのお話です。

        気象庁では、様々な形で提供される天気予報などが誰にでも正確に伝わるよう、報道機関などのご意見を伺いながら天気予報などに使う予報用語を定めています。この中には「気温に関する用語」があり、日最高気温が25℃以上の日を「夏日」、日最高気温が30℃以上の日を「真夏日」と定めていました。しかし、温暖化の影響などで日本の気温は上昇傾向にあり、情報等で利用する必要が出てきたため、平成19年には日最高気温が35℃以上の日を「猛暑日」と定め、「熱中症」という用語も新たに加えました。さらに今年は、ここ3年連続で夏に顕著な高温を記録したほか、40℃を超える気温が毎年のように観測される状況をうけ、日最高気温が40℃以上の日を「酷暑日」と新たに名称を定めました。

        では、日本の夏(予報用語で6月~8月までの期間)の平均気温の傾向を見てみましょう。日本の平均気温の基準値(1991〜2020年の30年平均値)からの偏差は、2010年頃からは正偏差の年がほとんどで、正偏差が大きかった年の1〜5位はすべて2010年以降で、ここ3年は記録を更新し、2025年は最も高い値となりました

        これまでの観測結果から、日本の年平均気温や季節ごとの平均気温は上昇傾向にあり、真夏日、猛暑日、熱帯夜等の日数も増加しています。ちなみに、全国で「酷暑日」となる日最高気温40℃以上を観測した地点は、914 地点中、2023年は2地点、2024年は9地点で、最も大きい正偏差となった2025年は25地点(のべ30地点)でした。

        滋賀県内のアメダス地点では統計開始以降、日最高気温40℃以上(酷暑日)を観測した地点はありませんが、日最高気温35℃以上(猛暑日)は増加しており、彦根のデータをみると、2010年以降は急速に増加しています。彦根での「猛暑日」は、統計開始の1894年から2025年までで326日あります。月別にみると、ほとんどが7月、8月に出現していますが、6月でも4日あり(9月は10日)、6月に観測されたのは2011年以降で、地球温暖化の影響が大きいのかもしれません。

        今年の夏も暑くなりそうです。こまめな休憩や水分補給・塩分補給など、暑さ対策をお願いします。


        令和8年6月

        彦根地方気象台

        地域防災官


    • 令和8年5月「5月の天気が関わる用語について」

        ホームページをご覧のみなさま、こんにちは。彦根地方気象台の防災情報係です。

        みなさまは5月、天気と聞いて、何を思い起こしますでしょうか?おそらく、五月晴れや五月雨、あるいはメイストームなどの語が主に浮かんでくるかもと思います。

        五月晴れ(さつきばれ)という言葉は、本来旧暦の五月、現在の6月半ばから7月半ばの梅雨時期の晴れ間をいう言葉でした。しかし時が経つにつれて新暦5月の晴れの意味でも使われるようになったということです。

        一方で五月雨(さみだれ)は、旧暦五月に降る長雨、つまり梅雨を表します。断続的に長く続く雨、転じて、物事を断続的に行うさまを「五月雨式」のように表現します。他には奥の細道で五月雨を詠った松尾芭蕉の句、「五月雨を 集めて早し 最上川」が有名ですね。

        また5月のことを英語でMayということから、5月に現れて日本海や北日本付近で急激に発達して台風並みの大雨や暴風をもたらす低気圧を春の嵐「メイストーム」といいます。ちなみにこの語は和製英語です。今年も大型連休に北日本を直撃し、この時期としては強い寒気が流れ込んでいたこともあって、北海道旭川市で5月としては21年ぶりの積雪を観測しました。

        5月の天気が関わる用語について

        彦根地方気象台の観測データによれば、5月の日最高気温の月平均の平年値※では22.6℃、同じく日最低気温では13.5℃と、人にとって比較的過ごしやすい気温になっています。また平均相対湿度の年平年値は74%であり、5月は年間でも4月に次いで低い71%となっています。なので5月は梅雨時期のじめじめとした80%近い湿度に比べると、気温が高くないこともあって蒸し暑くなく相対的にからっとしていて快適です。

        また直近の2017年5月から2026年5月前半までの10年間における5月の、6時~18時が晴れ(晴れ及び快晴)の日を選んで、その時間内の最大風速の平均を計算したところ、およそ毎秒5.0 m、木の葉や小枝が揺れる程度の風であることがわかりました。

        左図は今年5月5日の地上天気図です。滋賀県は移動性の高気圧に覆われて、彦根でも晴れていました。1日を通じて穏やかに風が吹いていて、さわやかな一日でした。五月晴れの日の典型的な例と言えます。

        初夏の薫風(くんぷう)の下、五月晴れの気持ちの良い日に、お出かけしてみてはいかがでしょうか。

        ※平年値(1991年~2020年)



        令和8年5月

        彦根地方気象台

        防災情報係


    • 令和8年4月「JETT(気象庁防災対応支援チーム)について」
        JETT(気象庁防災対応支援チーム)について
        JETT(気象庁防災対応支援チーム)について

        ホームページご覧の皆様、はじめまして彦根地方気象台の防災指導係です。

        今回はJETT(気象庁防災対応支援チーム)についてコラムを執筆させていただきます。


        JETTはJMA Emergency Task Team(気象庁防災対応支援チーム)の略称です。大規模な災害が発生した(又は発生が予想される)場合に、都道府県や市町村等へJETTとして気象庁職員を派遣します。「地域における気象防災業務のあり方(報告書)」(平成29年 8月)の提言を踏まえ、平成30年5月1日に創設されました。

        国土交通省のTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)の一員として活動します。

        派遣された職員は、地方公共団体や各関係機関の防災対応を支援します。現場のニーズや各機関の活動状況を踏まえたきめ細かな解説を行い、災害地と気象台で、最新の災害発生状況や気象情報を、即時共有します。


        JETT

        具体的な活動として例をあげると、ヘリコプターによる消火活動の際、より効果的な消火活動のため、上空の風の情報をリアルタイムで共有します。災害時の復旧活動の際は、安全な活動のために、雨などの予報情報を伝えています。


        JETTの派遣には次の二種類があります。

        ・単発型派遣:災害対策本部会議などで解説対応を行うためだけに短時間出向くもの(例:県の災害対策本部会議又は事前説明会に出席し気象解説するため、県庁で1時間程度の対応)。

        ・駐在型派遣:長時間駐在して情報収集や解説対応等を行うもの(例:台風接近に伴い、午後から翌日の午前中まで県庁に駐在)。


        JETT創設の平成30年度の派遣実績は9事例でしたが、令和6年には44事例と増加しており、災害時の現場や各機関の活動状況を踏まえた気象等の解説が求められているのだと感じているところです。

        今後もJETTの活動がみなさまの安全・安心につながれば幸いです。私もJETTに派遣された際は、少しでもみなさまのお役に立てるように頑張ります。


        令和8年4月

        彦根地方気象台


    • 令和8年3月「さくらの観測について」
        彦根地方気象台で観測したさくらの写真(2025年4月撮影)
        彦根地方気象台で観測したさくらの写真(2025年4月撮影)

        ホームページご覧の皆さん、はじめまして彦根地方気象台職員です。

        このコラムが掲載される頃、さくらの開花についての話題が多くなってきます。


        気象台では生物季節観測という業務があり指定した植物(うめ、さくら、あじさい、すすき、いちょう、かえで)で標本(木)を定めて季節の進み具合や気候の違い、変化など、総合的な気象状況の推移を知るために観測しています。

        さくらについては開花日と満開日の観測を実施しています。開花日とは、標本木で5~6輪以上の花が開いた状態となった最初の日をいい、満開日とは、標本木で約 80%以上のつぼみが開いた状態となった最初の日をいいます。観測の対象は主に「そめいよしの」です。「そめいよしの」は江戸末期からはじまる品種で、九州から北海道の石狩平野あたりまで植栽されているといわれています。「そめいよしの」は「えどひがん」と「おおしまざくら」の交雑種で、「そめいよしの」が生育しない地域では、「ひかんざくら」(南西諸島)、「えぞやまざくら」(北海道の一部)を観測します。


        桜開花日の平年差

        さくらの観測について、全国の観測対象地点(58地点)で開花日の観測を実施しており、1953年以降の経年変化を示したものが右図です。黒い折れ線は平年差(観測地点で現象を観測した日の平年値(1991~2020年の平均値)からの差を全国平均した値)を、青い折れ線は平年差の5年移動平均値を、赤い直線は長期的な変化傾向(トレンド)を示しています。右図から「さくらの開花日」の長期的な変化傾向(トレンド)は、10 年あたり 1.2 日程度早くなっています。


        参考までに彦根地方気象台のさくらの開花日の早い順を調べたものが下の表となり、さくらの開花の観測を開始した1953年から2025年までの上から10位までを記載しました。結果1990年以降、早い開花日がランクインしています。原因としては様々な要因が考えられますが、長期的な気温上昇が影響しているものと考えられます。


        様々な場所に植栽されているさくらですが、名所や公園などで花見を楽しむほか、少し視点を変えて町全体を見渡すことのできる場所、例えば山や高いビルの展望スペースから、さくら色になった町なみを観るのも楽しいひと時かも。

        彦根地方気象台で観測したさくらの開花日の早い順
        表:彦根地方気象台で観測したさくらの開花日の早い順

        令和8年3月

        彦根地方気象台


    • 令和8年2月「古典『鶯宿梅』と梅の開花のお話」
        梅とはれるん
        梅とはれるん

        ホームページをご覧の皆様、こんにちは。彦根地方気象台の現業班員です。2月のコラムを担当させていただきました。最後までお読みいただけると嬉しいです。


        立春を過ぎ、春へ向かうといってもその足取りは三寒四温でしょう。1月末の寒波によって彦根地方気象台では最大33 cmの積雪を観測しました。気象庁の1か月予報(2月12日発表)では、近畿地方の向こう1か月の気温は平年並か高い予想となっています。

        さて、寒い話ばかりでなくあたたかい話も。古典『大鏡』から『鶯宿梅(おうしゅくばい)』のお話です。


        あるとき、清涼殿の梅が枯れてしまったので蔵人が代わりとなる梅を私(この話の主人公)に探すよう申しつけ、都中をあちこち歩き回りようやく、とある家の庭にてそれは見事なものを見つけました。植え替えるため根を掘り返し持っていこうとしたところ、その家の主人が「これを木に結び付けて参上して」と召使いにお伝えしていたので、なにか訳があるのだろうとそのまま持ってこさせました。帝がお気づきになり、ご覧になられました『それ』には女性の筆跡で、『勅なれば いともかしこし鶯の 宿はと問はば いかが答へむ』と。不思議に思われたので、調べさせたところ、その家は紀貫之のご息女の住まいでした。「残念なことをしてしまった」と、帝はきまりが悪そうにされて、私も、褒美として衣類をいただいたものの逆に辛くなってしまいました。


        その時には、貫之はすでに亡くなっていました。梅の和歌に親しい方でしたから、父の形見である梅を手放すのはたとえ勅旨であってもいたく思われたでしょう。心惜しい気持ちを『鶯の宿』と歌に託した彼女もさすが紀氏であり、話としては短いながらも家族愛のぬくもりを感じる優雅な故事です。また、原文に記述はありませんが、帝は歌にこめられた嘆きを聞き、自分の行いを恥じ入って、この梅を返されたそうです。ことわざに『梅に鶯』というものがあります。『取り合わせの良いもの、美しく調和するもの』という意味で、この二つは古くからの風流な組み合わせですが、実際に梅の木で見かけるのはメジロが多いそうです。際立つ緑色したメジロと間違われたままそのイメージが広がっているのでウグイスは少し気の毒ですね。

        最近ニュースを見ていると、ところどころで梅の開花の便りが届いているようです。彦根地方気象台の敷地内の標本木では2月6日(金)に開花を観測し、平年(2月20日)より14日早い開花となりました。気象庁では生物季節観測といって、対象としている植物を調査し、季節の推移や気候の違いを観測する業務があります(詳しくは過去コラム令和7年12月分)。梅は春の訪れを知るための指標としています。

        梅は冬から春先にかけて見頃を迎えます。皆様も季節の花を楽しんでみてはいかがでしょうか。


        令和8年2月

        彦根地方気象台

        現業班員


    • 令和8年1月「乾燥と火事の関係について」
        令和5年度四季別出火状況
        水蒸気量の例

        ホームページをご覧のみなさま、こんにちは。彦根地方気象台の現業班員です。


        昨年4月に気象庁に入庁し、早いことに1年が経とうとしています。私の担当する主な業務は、観測データの品質管理や観測測器の点検、予報官の補助などを行っています。

        さて、今回は1月ということもあり、冬本番の時期になってきましたので、冬から春先にかけて特に起きやすい現象である「乾燥」と火事の関係について、お話していきます。

        冬から春先にかけて、火事のニュースや街中を駆ける消防車を見かけたり、消防車のサイレンを聞くことが多くなると感じる方も少なくないと思います。なぜ、冬になると火事が起きやすくなるのでしょうか。

        実は、空気中の水蒸気量が大きく関わってくるのです。空気中の水蒸気の最大量は、温度によって変わります。気温が高い日には、空気は水蒸気量を多く含むことができますが、気温が低い日には空気中の水蒸気量が少なくなるので、空気が乾燥します。このため、冬場には紙や布、木材といった身の回りの可燃物に含まれる水分が空気中に奪われて非常に燃えやすい状態となり、ほんの小さな火種でも一気に火が燃え広がりやすくなります。特に強風を伴う乾燥した日は、風によって屋外の火災があっという間に延焼する危険性が高まるので、さらに火災への注意が必要です。

        気象庁では、市町ごとに一定の条件を満たすと「乾燥注意報」という気象情報を発表しています。木材の乾燥の程度を表す指標として用いられ、過去の数日間の湿度を考慮して計算される実効湿度と相対湿度が1日のうちに一番小さい値で表される最小湿度によって、火災の予防上注意を必要とする場合に発表します。そのため、皆様のお住まいの市町に「乾燥注意報」が発表されていましたら、身の回りの火の元にいつも以上に気を付けてください。

        火事を防ぐために、どのようなことをしたらよいでしょうか。決して特別なことをする必要はありません。例えば、暖房器具の周囲の整理をする、火をつけたままコンロのそばから離れない、屋外での火の取り扱いに注意するなど日頃から意識をすれば容易にできることです。そして、加湿などで室内の環境を整えることも間接的な対策になります。乾燥している日は、屋内または屋外にいるときも小さな火種が大きな火事に繋がる可能性がありますので、火の取り扱いには十分に留意してください。

        また、空気が乾燥すると、インフルエンザなどの感染症も流行しますので、手洗いうがいなど感染症対策を行い、お身体にお気をつけ下さい。


        令和8年1月

        彦根地方気象台

        現業班員


    • 令和7年12月「生物季節観測について」
        梅の開花
        2025年3月3日 梅の開花
        さくらの開花
        2025年4月4日 さくらの開花

        ホームページをご覧のみなさま、こんにちは。彦根地方気象台(以下、「彦根地台」とします。)の主任技術専門官です。

        気象官署で行う生物季節観測は、観測された結果が季節の遅れ進みや気候の違い、 変化など総合的な気象状況の推移を把握するのに用いられる他、新聞やテレビなどで季節の話題として利用されています。一番身近なものとしては、桜の開花の観測があります。

        観測の方法は、全国で統一した方法で観測できるように生物季節観測指針で定められています。観測対象種目は、「うめ」は春の訪れ、「さくら」は春、「あじさい」は夏の訪れ、「すすき」は秋の訪れ、「いちょう」「かえで」は晩秋といったかたちで、年を通じた季節の変化を監視するために選定されています。

        植物によって違いますが、現象として、開花、満開、紅(黄)葉、落葉を観測しています。県内広くに植物が生息していますが、場所によって植物の成長に差が生じることから、原則として気象官署の敷地内に観測用の標本木を定め、この1本を対象に観測を行っています。ただ、病気や不測の事態に備えて、原則として副標本木を1本、可能であれば複数本選定しています。彦根地方気象台では、いろはかえでのみ敷地外で観測していますが、それ以外は気象台の敷地内で全て観測を行っています。

        以前は植物だけでなく、動物の観測も行っていましたが、近年は気象台周辺の生物の生態環境が変化しており、観測が難しくなったことから令和2年末に彦根地方気象台では、ひばり、うぐいす、つばめ、もず、とのさまがえるの初見や初鳴、昆虫では、もんしろちょう、きあげは、しおからとんぼ、ほたる、あぶらぜみなどの観測を廃止しました。しかし、これら観測種目の過去の観測日や平年値を調べることができます。

        昨今、日本は四季から二季になどと言われ、昔ながらの自然を感じることが少なくなったかもしれません。紹介したように、全国の気象台では、植物による生物季節観測を続け、HPで公開していますので、こちらをご覧いただき少しでも季節の変化を感じていただけたらと思います。

        気象庁HPの生物季節観測の情報(https://www.data.jma.go.jp/sakura/data/)

        彦根地方気象台HPの生物季節観測(https://www.data.jma.go.jp/hikone/seibutsu/seibutsu.html)

        彦根地方気象台X(旧Twitter)(https://twitter.com/JMA_Hikone)


        令和7年12月

        彦根地方気象台

        主任技術専門官