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土砂災害警戒情報 |
ホームページをご覧のみなさま、こんにちは。彦根地方気象台の土砂災害気象官です。
今回は、土砂災害警戒情報についてお話します。
令和5年の全国の土砂災害の発生件数は1471件、直近10年(H25-R4)の平均の1446件を上回ったとされています。令和6年の件数も公表されており、発生件数は1433件、直近10年(H26-R5)の平均1499件と同程度とされています。(国土交通省報道発表より)最近10年の土砂災害の発生件数はその前の10年よりも増加傾向で、これは地球温暖化により、雨の降り方が変わってきたことも増加した要因のひとつとして考えられています。
自然災害による死者・行方不明者のうち、土砂災害の占める割合が高くなっています。土砂災害は、一旦発生すると人命が失われ、建物が壊滅的な被害を受け、道路が寸断されてしまうなど甚大な被害につながりやすいのもひとつの特徴です。また、土砂災害は屋内で被災する割合が高い傾向にあります。
土砂災害は、台風や前線の停滞などにより降雨が続き、地中にたくさんの水分を含んでいる状況で、さらに非常に激しい雨や猛烈な雨といった強い雨が降る時や、降った後に発生する危険があります。
土砂災害は局所的、突発的に被害が発生しやすいことが特徴で、被害の発生しやすい場所は地形や地質、過去の土砂災害の発生実績からある程度推定することができますが、土砂災害発生の精度の高い予測は困難です。これは地中の状況がわかりづらく、視覚的に危険性が認識しにくいことが要因としてあげられます。このようなことから、土砂災害の危険性がある場所は、崖崩れや土石流の発生しやすい場所で、土砂災害警戒区域に指定されています。
土砂災害警戒情報は、降雨による土砂災害がいつ発生してもおかしくない状況となった時に、市町村長の避難指示の発令判断や住民の自主避難の判断を支援するよう、都道府県と気象庁が共同で発表している情報です。危険な場所からの避難が必要な警戒レベル4に相当します。
土砂災害警戒情報の発表基準は、過去の土砂災害発生・非発生時の雨量データをもとに、地域毎に設定されています。
土砂災害警戒情報は避難にかかる時間を考慮して2時間先までに基準に到達すると予測された時、危険が高まっている状況と判断して発表します。土砂災害警戒情報を発表する場合は、2時間程度、さらに短い時間しかない場合もありえますので、土砂災害警戒情報が発表された際は躊躇なく避難できるようにするなど、身の安全の確保を準備していただければと思います。
お住まいの場所などで土砂災害警戒情報が発表された際には、避難が必要となる状況となっている可能性がありますので、各市町村が発令する避難指示などの情報をご確認ください。
また、気象庁HPに掲載されている土砂キキクル(危険度分布)をぜひ活用してください。土砂キキクルは、大雨による土砂災害の危険度の高まりを1km四方の領域ごとに5段階に色分けして示す情報で、10分毎に更新しています。特に「危険」(紫)が出現した場合、土砂災害警戒区域等では、過去の重大な土砂災害発生時に匹敵する極めて危険な状況となっており、命に危険が及ぶような土砂災害がすでに発生していてもおかしくありません。このため、避難にかかる時間を考慮して、2時間先までの予測値を用いて危険度を示しています。また、土砂キキクルでは土砂災害警戒区域等を重ね合わせることが出来ます。
特に土砂災害警戒区域等にお住まいの方は、この情報が発表された時には土砂キキクルを確認し、遅くとも該当領域に「危険」(紫)が出現した時点で速やかに避難を開始することが重要です。危険を感じたら躊躇することなく自主避難を検討してください。また、土砂災害発生の可能性がある状況では崖などからなるべく離れた上の階で就寝するなどをお願いします。
気象台では、災害につながるような現象が予想される場合、段階的に気象情報を発表します。「数日後に災害が起こるような雨があるかも」という情報があれば、早めに心構えや準備をすることができます。
今回は、土砂災害に関してお話させていただきましたが、大雨では他にも、浸水や洪水による災害があります。大雨による災害から身を守るためには、平時からハザードマップや過去の災害事例を確認し、自分のいる場所でどのような災害が起こり得るのか、災害リスクを把握しておくことが大切です。お住まいの場所のハザードマップを今一度、ご確認ください。
●警戒レベル「避難情報に関するガイドライン」(内閣府(防災担当)では、住民は「自らの命は自らが守る」意識を持ち、自らの判断で避難行動をとるとの方針が示され、この方針に沿って自治体や気象庁等から発表される防災情報を用いて住民がとるべき行動を直感的に理解しやすくなるよう、5段階の警戒レベルを明記して防災情報が提供されることとなっています。
●土壌雨量指数 大雨による土砂災害リスクの高まりを把握するための指標で、降った雨が土壌中にどれだけたまっているかを数値化したものです。土砂キキクルは、土壌雨量指数を使用したもので避難行動に要する時間を確保するため2時間先までの予測値を用いています。台風や前線の停滞などにより長期間にわたって雨が続いたときに、土砂災害が発生しやすくなるという特徴を考慮しています。雨量と降水短時間予測雨量から土壌雨量指数を推定計算して土砂災害警戒情報などの発表基準に使用しています。
令和7年9月
彦根地方気象台
土砂災害気象官
彦根地方気象台のコラム(過去分)
おおむね1年分を掲載予定です。
- 令和7年8月「地震について」
- 令和7年7月「地球温暖化について」
- 令和7年6月「熱中症に注意!!」
- 令和7年5月「地球の磁場(地磁気)について」
地球磁気圏の構造模式図(出典:気象庁地磁気観測所ホームページ) ホームページをご覧のみなさま、こんにちは。彦根地方気象台の現業班員です。観測測器の点検や観測データの確認を行っています。
今回は地球の磁場(地磁気)についてお話したいと思います。方位磁石がおおよそ北を向くことから分かるように地球には磁場があります。この磁場を「地磁気」と呼んでいます。この地磁気は大まかに見て北極付近にS極、南極付近にN極があるような磁場です。気象庁では柿岡(茨城県)に本所、女満別(北海道)、鹿屋(鹿児島県)に観測施設、父島(東京都)に観測点を置き、地磁気を観測しています。
宇宙空間に広がった地磁気は、太陽から放出された高エネルギー粒子の流れ(太陽風)の影響を受け、太陽と逆側に吹き流されたような形をしています(図)。この地磁気が支配する領域を磁気圏(図の薄緑色の領域)といい、地球は磁気圏を持つことで高エネルギー粒子から直接さらされずに守られています。しかし、太陽表面での爆発現象(太陽フレア)が発生すると、それまでの太陽風より強い圧力がかかり、磁気圏が押しつぶされ、太陽風のエネルギーが地球の近くまで到達します。太陽フレアによって放出された高エネルギー粒子が地球に到達して地磁気が顕著に乱れた場合を磁気嵐と呼んでいます。
磁気嵐が発生すると停電や通信障害を起こしたり、普段オーロラが観測されない低緯度の地域でもオーロラが観測されたりすることがあります。1989年3月の大磁気嵐の時にはカナダのケベック州で大規模な停電が発生しました。また、2024年5月11日の磁気嵐では大規模な現象となり北海道から兵庫県にかけ低緯度の地域でもオーロラが観測されました。気象庁では2024年5月11日に地磁気の大きな乱れが観測されていることについての報道発表を行いました(https://www.jma.go.jp/jma/press/2405/11a/20240511_chijiki.html)。
この地磁気に影響を及ぼす太陽フレアの発生数は太陽活動に大きく影響を受けているのですが、この活動は約11年周期で極大(活発)と極小(静穏)を繰り返しています。極大期には太陽表面の黒点が多く発生し、この黒点付近で太陽フレアが発生するそうです。今周期の極大期は今年(2025年)到達すると予想されています。太陽活動を含む最新の宇宙天気情報は国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)のホームページ(https://swc.nict.go.jp/)、最新の地磁気の観測状況は気象庁地磁気観測所のホームページ(https://www.kakioka-jma.go.jp/index.html)から確認できますので、ご興味がありましたらのぞいてみてください。
出典
https://www.kakioka-jma.go.jp/knowledge/mg_bg.html
https://www.kakioka-jma.go.jp/knowledge/qanda.html
令和7年5月
彦根地方気象台
現業班員
- 令和7年4月「さくらの開花予想」
開花日の標本木(2025/04/04) 満開日の標本木(2025/04/09) ホームページをご覧のみなさま、こんにちは。彦根地方気象台の入場です。昨年の10月に採用され、早くも入庁して半年が経ちました。現在は主に観測・測器の業務を担当しながら、予報業務に関する知識の習得に励んでいます。
さて、今回は4月ということでさくらに関して取り上げます。気象台では、生物季節観測業務としてさくらの観測を行っています。各気象台では標本木という観測の対象となる木を決めており、その標本木で5~6輪の花が開いた状態となった最初の日をさくらの開花日、標本木で約80%以上の蕾が開いた状態となった最初の日をさくらの満開日としています。彦根地方気象台の標本木(そめいよしの)は敷地内にあり、1953年から観測を行っています。今年の彦根地方気象台では、さくら(そめいよしの)の開花を4月4日(平年より3日遅い)、満開を4月9日(平年より1日遅い)に観測し、近畿地方にある気象台の中ではさくら(そめいよしの)の開花・満開が共に最も遅い官署となりました。
さくらは前年の夏ごろに翌春咲く花のもととなる花芽を形成し、休眠状態に入ります。秋から冬にかけて低温にある一定期間さらされると、休眠状態から覚めます。このあとに春先の気温の上昇に合わせて花芽が発育し、開花に至ります。このため、さくらの開花は春先の気温と密接な関係があります。
ところで簡易的なさくらの開花予想の手法として、「600 度の法則」と「400 度の法則」という手法があるのをご存じでしょうか。「600 度の法則」は、2月1日からの日最高気温を足し合わせていって 600 度を越えた日にさくらが開花するというものです。「400 度の法則」は、2月1日からの日平均気温を足し合わせていって 400 度を越えた日にさくらが開花するというものです。
実際に過去3年間の彦根で計算してみました。一昨年は開花日が3月23日で、「600 度の法則」と「400 度の法則」で求まった開花日がそれぞれ3月24日、3月26日でした。昨年は開花日が4月2日で、「600 度の法則」と「400 度の法則」で求まった開花日が共に3月30日でした。そして今年は開花日が4月4日で、「600 度の法則」と「400 度の法則」で求まった開花日がそれぞれ4月2日、4月6日でした。調べた範囲内ではありますが、実際の開花と3日以内の誤差に収まっており、この簡易的な計算がおおよそ合っていることが分かります。誰でも簡単に予想できますので、興味があればぜひやってみて下さい。ただし、これらの法則は開花直前に強い寒気に見舞われる等の影響で大きくずれることがありますので、あくまで一つの目安と思って頂ければと思います。
※なお気象庁は2009年まで開花予想を行っていましたが、現在は行っていません。
令和7年4月
彦根地方気象台
入場
- 令和7年3月「扇状地という地形について」
百瀬川扇状地(地理院地図より作成) 百瀬川扇状地の範囲(赤枠線)(地図は地理院地図より引用) ホームページをご覧のみなさま、こんにちは。彦根地方気象台の上田です。昨年4月に雄大な琵琶湖を望むこの彦根地方気象台に着任し、早いもので1年間お世話になっています。私の業務は主に観測・測器に関する仕事で、データの品質管理や予報官の補助などを行っています。
私は、学生の頃に「扇状地」と呼ばれる地形について研究を行っていたことがあります。扇状地は、洪水など土砂災害が何度も繰り返されることで成り立った地形です。学術的には、“山地の集水域から発する河川によってもたらされた礫や砂などの岩屑が山麓部に半円錐形状に堆積することでできた地形”として定義される地形を言い、滋賀県にも大規模なものが10~20個程度存在しています。
高島市にある百瀬川扇状地を例にしました。社会科で習うような知識がこの図の中にもいくつか含まれており、扇端と呼ばれる扇状地の末端付近には県道335号線が走り、集落が立地しており、大昔は、伏流してきた川の水の湧水地であったことがわかります。国道303号線が通るあたりは扇状地の中央付近ということで、扇央という部分になります。この辺りには地図を見ると果樹園が立地しているのも見て取れ、これは水はけのよい地形であることも表します。最後に川の山地の出口付近を扇頂といいます。そして、百瀬川は中流域まで天井川となっており、扇状地の特徴をよくつかめる良い例だと思います。
最近では治水技術が大幅に向上し、河川の洪水なども少なくなってきました。それでもなお、想定を超えるような水害が発生しないとは言い切れません。扇状地の大きさは、ひとたび洪水が起これば大きな被害が出るよと自然が示している指標でもあります。普段から水害に対する意識も働かせたいものです。
令和7年3月
彦根地方気象台
上田
- 令和7年2月「「リスクコミュニケーション」ご存じですか?」
彦根地方気象台 リスクコミュニケーション推進官 小野 善史です。
気象台にリスクコミュニケーションを推進する専門職が令和6年4月から配置されています。
ところで、「リスクマネージメント」や「リスクコミュニケーション」と呼ばれる取組はご存じでしょうか?今回のコラムでは、これらについて簡単に説明し効果についての意見を述べたいと思います。
自然災害に対する対応でこれらをあてはめて整理すると、「リスクマネージメント」とは、様々な危機や危険性、脆弱性を事前に洗い出しそれらを適切に管理、把握することです。近年では、気候変動による影響も加わり極端な大雨・大雪・高温などの現象が増加しており、更に、毎年ように日本のどこかで大きな地震による被害なども発生しています。これらのリスクに効果的に対応するためには、「リスクマネージメント」を適切に実施、それらへの対応方法を考慮し対応準備をしておくことが重要となります。
そのため、「リスクコミュニケーション」とよばれる、社会や身の回りにあるリスクに関する正確な情報を、行政、専門家、企業、住民などで共有、相互に意思疎通を図り、それらに対応するための合意形成を図っておくことが、効果的な災害対策につながります。
自助・共助・公助に加え社会全体での連携・協同行うことにより、効果的な災害対応となると考えます。そのたには、「リスクマネージメント」と「リスクコミュニケーション」を組み合わせることがとても重要だと考えています。
このような取組を皆さんと一緒に推進していくのが、気象台のリスクコミュニケーション推進官の重要な役割だと考えています。
皆さんがお住まいの地域や自宅等での安全安心を得るためには、ある程度のコストや手間、労力が必要となります。それらのひと手間、ふた手間があなたや家族、友人、地域などを守ることに必ず繋がります。まずは、自宅周辺のリスクを把握し、対応準備を始めてみましょう。そして、積極的に地域の自治会や防災減災の活動、災害ボランティアなどを通じて、社会とのリスクコミュニケーションを進めて行きましょう。
令和7年2月
彦根地方気象台
小野
- 令和7年1月「雪の結晶」
画像① 「雪の結晶」のイメージ図 画像② 雪結晶の種類と気温,氷飽和を超える水蒸気量との関係(小林ダイヤグラム:Kobayashi, 1961を改変).荒木(2018)「世界でいちばん素敵な雲の教室」より. ホームページをご覧のみなさま、こんにちは。今年も引き続き「気象台コラム」をよろしくお願いします。彦根地方気象台の白木です。昨年4月に新卒採用され、早くも9か月が経つことに驚きを隠せません。観測データ・観測測器に関する業務などを行い、先輩方にたくさんのことを教えてもらいながら予報・観測技術の習得に励んでいます。
昨年、一昨年と2年にわたって、1月のコラムでは「湖北の冬の風物詩」として「山本山のおばあちゃん」ことオオワシに関するコラムが掲載されました。今年は、テーマを変えて昨年12月に続き「雪」についてご紹介したいと思います。
みなさんは、「雪の結晶」といえばどのような形を思い浮かべますか?
画像①のように複雑に枝分かれした結晶を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。実は、2012年に発表された研究※1によると、雪の結晶は細かく分けると121もの種類に分類できるそうです。同じ雪といえども降る日が違えば、全く違う結晶なんてことがあり得るのです。では、なぜこんなにも違いができるのでしょうか?
雪の結晶の形を決めるのは、雲の中の温度と水蒸気の量です。温度によって、角板状になるか角柱状になるかが決まり、水蒸気の量で結晶の複雑さが決まります。水蒸気の量が多ければ多いほど、複雑な形になるのです。このことをグラフにすると画像②のようになります。つまり、画像①は雲の中の温度が-10℃~-20℃くらいで水蒸気の量が多い時にできる樹枝状の結晶ということなのです。
たくさんの種類がある雪の結晶ですが、肉眼で見るには小さすぎます。最近では、100円ショップにもスマートフォン用のマクロレンズが売っているということで、それを用いて観察に挑んでみました。しかし、タイミングや方法を間違えていたようで観察できませんでした。次の機会に再挑戦したいと思います。
雪が降ると大変なことが多いですが、見方を変えて「雪の結晶」に注目してみると、新たな発見・楽しみがあるかもしれませんよ。観察する際は暖かくして安全には十分にご注意くださいね。私も雪とはあまり馴染みのない地域に住んでいたので、雪国で過ごす初めての冬に不安がいっぱいですが、初めてを楽しみつつ元気に過ごしたいです。
※1 菊地勝弘,亀田貴雄,樋口敬二,山下晃,雪結晶の新しい分類表を作る会メンバー(2012年)「中緯度と極域での観測に基づいた新しい雪結晶の分類 -グルーバル分類-」『雪氷』74巻(第3号)、223-241
令和7年1月
彦根地方気象台
白木
- 令和6年12月「初冠雪について」
比良山(2024年11月19日) 伊吹山(2024年12月1日) ホームページをご覧のみなさま、こんにちは。彦根地方気象台の西村です。各種注意報・警報等基準の評価や見直しを担当しています。
12月に入り、気温も下がって冬らしくなってきました。彦根地方気象台では、冬季の季節現象として、「初冠雪」、「初氷」、「初霜」、「初雪」を観測しています。今回はその中から、「初冠雪」についてお話しします。
冠雪とは、雪やあられなどが山頂付近に積もり、白く見えることをいい、寒候年(前年8月から当年7月まで)に、付近の気象台から初めて冠雪が確認できたときを、その山の初冠雪といいます。彦根地方気象台では、伊吹山と比良山(比良山系)の初冠雪を観測しています。現在、近畿地方で初冠雪を観測している官署は彦根地方気象台のみとなっています。
初冠雪の観測は、気象台の屋上から職員が目視で行いますが、気象台から伊吹山までは約20km、比良山までは約30kmと距離があるため、山頂付近が雲に隠れて見えないこともよくあります。そういった場合は、繰り返し観測を行い、雲の切れ間から山頂が見えるのを待ちます。昨年に比良山の初冠雪を観測した際は、山頂付近に朝から雲がかかっていたため、お昼頃まで繰り返し観測を行いました。
初冠雪を観測した場合は、彦根地方気象台ホームページの新着情報や季節現象(初冠雪・初霜・初氷・初雪)のページを更新するほか、TVのニュース番組でも取り上げられることがあります。また、今年の3月から始めた彦根地方気象台の「X(旧Twitter)」にも投稿しています。
今年は11月19日に比良山、12月1日に伊吹山の初冠雪を観測しました。来年は、気象台の観測する季節現象からも、冬の訪れを感じてみてください。
令和6年12月
彦根地方気象台
西村
- 令和6年11月「注意報や警報の基準値について」
ホームページをご覧のみなさま。彦根地方気象台の黒田です。今年4月にこちらに着任しました。私は主に、大雨(浸水害)と洪水の注意報・警報の基準値の見直し作業を担当しています。市町ごとの注意報・警報の基準値は気象庁ホームページにも掲載されています(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kijun/shiga.html)。ちょっと見つけづらいかもしれませんが、気象庁ホームページの検索窓で「市町名 警報基準」などと入力すると、見つけられると思います。
この注意報・警報の基準値は常に見直されています。大雨(浸水害)と洪水については、ほぼ毎年見直しを行っています。基準値は過去に発生した浸水などの被害をもとに設定します。ただ、堤防の整備や排水設備の拡充によって、以前と同じような雨の降り方でも被害が発生しなくなっている場所もあります。そのため、基準値の見直しが必要になるわけです。
基準値といえば、河川に量水標という水位を測る物差しのようなものがあります。この量水標をよく見ると、避難判断水位や氾濫危険水位といった言葉が書かれていたり、赤や黄で色分けされていたりするものがあります。これらは警戒レベルを表していて、河川や観測所によって基準値が異なります。河川の中には数時間先までの水位を予測している「洪水予報指定河川」というものがあります。気象台では、洪水予報指定河川で、水位が基準値を超えるか、超えると予想される場合に指定河川洪水予報という情報を、都道府県や国土交通省と共同で発表しています。指定河川洪水予報には水位に応じて、氾濫注意情報や氾濫危険情報などといった種類があります。滋賀県では姉川、高時川、日野川、杣川、野洲川、瀬田川、琵琶湖が洪水予報指定河川となっています。このうち、姉川、高時川、日野川、杣川、野洲川上流、琵琶湖は滋賀県が、野洲川下流と瀬田川は国土交通省が管理しています。
世の中には、気象庁以外が発表している「〇〇警報」や「〇〇注意報」があります。これからの季節はインフルエンザの流行レベルをニュースなどで見かけることが多くなるでしょう。これらの警報や注意報についてもどんな基準で発表されているか、調べてみると面白いかもしれません。
令和6年11月
彦根地方気象台
黒田
- 令和6年10月「大気光象」
ハロ(気象庁提供) 薄明光線 ホームページをご覧のみなさん、こんにちは。彦根地方気象台の中西といいます。今年の4月に新卒で採用され、観測・測器に関する業務や現業作業の補助などをしながら、予報や観測技術の習得に取り組んでいます。
採用されて以来、その一つとして行っているのが屋上での雲の観測で、ときには大気光象に出会うこともあります。大気光象とは、太陽や月の光が、大気中の水滴や氷晶などに当たって、反射したり曲げられたりすることで見られる現象のことをいいます。虹もその一つで、他には彩雲、ハロ(暈ともいいます)、幻日、グリーンフラッシュなどがあります。現象が生じる原理が分かると、その現象に出会いやすくなります。みなさんにも、空を見ることを楽しんでもらいたいと思い、そのいくつかをご紹介させていただきます。今回取り上げるのは、特に私自身出会うことが増えたハロと、個人的に好きな現象である薄明光線です。
ハロは、太陽を中心としてできる虹色の光の輪のことをいい、太陽の光が氷晶に当たって屈折されることで生じます。光が屈折されて出てくる角度は約22度となる場合が多く、よく太陽から約22度離れたところに光の輪が見られます。また、虹色に見えるのは、太陽の光が当たるのが球形の水滴ではなく、プリズムの役目を果たす平たい六角柱の形をした氷晶であるためです。そのため、氷晶を含んだ薄い雲である巻層雲が広がっているときはハロに出会いやすく、ハロが出ているかどうかは、中層に広がる高層雲かそれよりも高いところにできる巻層雲かを見分ける判断要素の一つとして用いられます。
薄明光線は、太陽が雲に隠れているとき、その光が雲の隙間や端から漏れて放射状に広がって見える現象です。太陽の光の帯が地上まで延びているように見えることから、旧約聖書にある話に由来して「天使の梯子」、「ヤコブの梯子」という名称でも知られています。この現象は、太陽の光が大気中に浮遊している微粒子によってミー散乱※1されることで生じます。とくに層積雲や高積雲が広がっており、雲に切れ目があるときは出会いやすいタイミングです。
この他にも、身の回りで生じる大気光象がたくさんありますので、ぜひ探してみてください。
※1 電磁波の波長と粒子の大きさが同程度のときに生じる散乱。雲が白く見えるのは、この散乱のため。
令和6年10月
彦根地方気象台
中西
ホームページをご覧いただきありがとうございます。彦根地方気象台長の栂野弘行(とがのひろゆき)です。
昨年、一昨年と2年続けて猛暑が続きましたね。エアコンなしでは夜も寝れなかったので、夏場は昼も夜もエアコンがほとんどフル稼働でした。
気象庁が出している季節予報では、今年の夏も暖かい空気に覆われ全国的に気温は高めと予想しています。熱中症には十分に気を付けてください。
昨年、滋賀県内の熱中症による救急搬送人数が990名と過去5年間で最多となり、近年の増加傾向は右肩上がりに続いています。 図1は令和6年までの10年間の搬送人数を月別の平均で比べたものです。全国的に見ても7月から8月に多くの方が熱中症により搬送されており、その傾向は滋賀県の統計でも同様となっています。
図2は、滋賀県内のアメダスの気温と搬送人数を週単位で比較(10年平均を週単位で比較)してみました。大まかな傾向が見て取れるかと思いますが、二つのグラフを比較すると、最高気温の平均が30℃に迫る6月の末ころから搬送人数が急激に増え、暑さのピークを迎える7月末から8月初めで搬送人数もピークを描いています。
近年、熱中症により亡くなられる方が1,000人を超える年が続いています。熱中症は自覚症状が無いまま、いきなり悪化して緊急搬送される事もありますので、本人が気を付けるのは勿論ですが、周りの人も炎天下で運動や作業をしている人のことを気にかけてあげることが大事です。
また、事前対策として、7月の本格的な暑さとなる前に、体を暑さに慣れさせるため軽い運動や湯船に入っての入浴で適度な汗をかいて暑熱順化を進めましょう。暑熱順化は個人差があって数日から2週間程度かかるそうです。
ただ、令和4年の6月下旬には東・西日本で記録的な高温となり、熱中症による月の全国搬送人数が15,969人にも上り、例年をはるかに超える人数となっていました。その後の令和5年・令和6年の6月も2年連続で7,000人を超える搬送人数となっており、6月中でも十分に注意は必要です。
体が暑さに慣れる前の時期、過度な運動で熱中症になる場合がありますので、無理のない範囲で運動をして、こまめに水分補給するなど十分に注意してください。
今年度も気象庁・環境省が共同で発表している熱中症警戒アラートは4月23日から開始しています。このアラートや2週間気温予報、早期天候情報などの気象情報を活用して、十分な暑さ対策を取っていただき熱中症にかからないようお気をつけください。
令和7年6月
彦根地方気象台
栂野
- 令和7年5月「地球の磁場(地磁気)について」
ホームページをご覧のみなさま、こんにちは。彦根地方気象台の調査官です。
今回は「地球温暖化」についてのお話です。
気象庁では、日本における気候変動対策の効果的な推進などに役立てることを目的に、「日本の気候変動2025」を公表しています。
その中で滋賀県では、厳しい温暖化対策をとった場合、気温は20世紀末の平均気温(1980~1999年の平均)から、21世紀末の平均気温(2076~2095年の平均)は約1.4℃上昇し、対策を取らなかった場合、約4.4℃上昇すると予測されています。
このような気温上昇は、猛暑日や熱帯夜のような暑い日の増加をもたらすとともに、雨の降る日数の減少と激しい雨の降る日の増加をもたらすと言われています。
また、気温の上昇によって、熱中症などの健康被害の増加や農産物の生育に適した地域の北上など、多くの影響を与えることが懸念されています。
今、地球温暖化の緩和や適応に向けて、再生可能エネルギーへの切り替えや農作物の品種改良など様々な対策が取られています。個人でも、省エネの製品への切り替えや移動に公共交通機関を利用するなど、一人一人が二酸化炭素の排出に気を配ることでよりよい結果につながります。
そのような活動が、みなさんの将来の今と変わらない生活につながればすてきですね。
令和7年7月
彦根地方気象台
調査官
- 令和7年6月「熱中症に注意!!」
日本付近のプレートの模式図 日本付近で発生する地震 ホームページをご覧のみなさま、こんにちは。彦根地方気象台の南海トラフ地震防災官です。
今回は「地震」についてのお話です。
日本周辺は海のプレート(太平洋プレート、フィリピン海プレート)が1年あたり数cmの速度で動いており、陸のプレート(ユーラシアプレート、北米プレート)の下に沈み込んでいます。このため、日本周辺ではプレートに複雑な力がかかっているため世界でも有数の地震多発地帯となっています。
昨年の正月に発生した石川県能登地方の地震や昨年8月の南海トラフ地震臨時情報の発表につながった日向灘の地震もこれらプレートの動きが原因となっています。一般に活断層による地震は数千年に1回、プレート境界で発生する海溝型地震は数十年から数百年の周期で繰り返し発生しています。
近年、滋賀県内で活断層による大きな地震は発生していませんが、滋賀県内やその周辺地域には活断層が多く見つかっており、歴史的には大きな被害を伴う地震が発生していることがわかっています。南海トラフ地震は概ね100年~150年周期で発生しており、前回の1944年昭和東南海地震、1946年昭和南海地震から約80年が経過し次の南海トラフ地震の発生の可能性が高くなってきています(2025年1月1日時点で今後30年以内の地震発生確率が80%)。
現在の科学的知見では、日時と場所、大きさを特定して地震を予知することはできませんが、南海トラフ沿いで異常な現象が観測されるなど、「地震発生の可能性が平時より高まったこと」は分かるため、気象庁から南海トラフ地震臨時情報を発表し、政府や自治体から、「巨大地震注意」や「巨大地震警戒」のキーワードに応じた防災対応が呼びかけられます。
日本に生活する上で地震に対する準備は必要で、家具の耐震固定や非常用持ち出し袋の準備、避難場所・避難経路の確認など日頃からの備えが重要です。
また秋頃に防災訓練を実施している自治体も多いので、地震に限らず一度参加して具体的な避難のイメージを持ってみてはどうでしょうか。
令和7年8月
彦根地方気象台
南海トラフ地震防災官
- 令和7年7月「地球温暖化について」