日本(札幌、つくば、那覇)及び南極昭和基地の上空のオゾン層の状況(2019年)

令和2年8月5日更新

診断

オゾン全量の状況

   2019年の日本の月平均オゾン全量は、札幌では、1月に少なく注)、6月に多くなりました。つくばでは、1、2、8、9月に少なく、5、6月に多くなりました。観測開始(1957年)以来、1月はその月として3番目に少なく、2月はその月として1番目に少なく、9月はその月として2番目に少ない値となりました。 那覇では、1~3、7、9月に少なくなりました。観測開始(1974年)以来、2月はその月として1番目に少なく、9月はその月として3番目に少ない値となりました。これらは、対流圏界面の高度の高低による影響に加え、2019年の赤道付近を除く低緯度帯では、成層圏準2年周期振動(QBO)が3月頃まで負の位相(赤道付近で高度とともに東風から西風に変化)であったことと対応しています。
   2019年の南極昭和基地上空のオゾン全量は、5、6月に少なく、3、4、8~12月に多くなりました。南極オゾンホール発生時期(8~12月)については、2019年の南極オゾンホールの面積が小さく推移し消滅も早く、南極昭和基地がオゾンホールの境界や外側に位置することが多かったことによります(「南極オゾンホールの状況(2019年)」を参照)。

日本及び南極昭和基地上空の月平均オゾン全量

図1 日本及び南極昭和基地上空の月平均オゾン全量(2019年)

図の実線は参照値(1994~2008年の月別累年平均値)、縦線はその標準偏差。
昭和基地の点線はオゾンホールが明瞭に現れる以前(1961~1980年)の月別累年平均値。
は、月平均オゾン全量を表し、参照値と比較して「多い」こと、
は、月平均オゾン全量を表し、参照値と比較して「並」であること、
は、月平均オゾン全量を表し、参照値と比較して「少ない」ことを示す。

注)ここでは、月平均値の参照値(1994~2008年 平均)からの差が参照値の標準偏差以内にあるときを「並」、それより多いときを「多い」、少ないときを「少ない」としている。


オゾンの高度分布の状況

   つくばの2019年のオゾン分圧(図2(a))では、1年を通して高度18~28 km付近にオゾン分圧の高い層を示し、中でも4、5月の高度18~24km付近は高い値が観測されました。また、3、4月は高度8km付近の低い高度まで、オゾン分圧の高い領域が広がっていました。オゾン分圧の規格化偏差(図2(b))では、高度約20~32 kmで概ね負偏差となりました。前述の月平均オゾン全量(図1)において「多い」となった5月と6月については、5月は高度8~18km付近でやや大きな正偏差、6月は高度6~16km付近でやや大きな正偏差となりました。また「少ない」となった1、2、8、9月については、1月は高度8~22km付近でやや大きな負偏差、2月は高度10~32km付近でやや大きな負偏差、そのうち18~20km付近で大きな負偏差、8、9月は高度18~30km付近でやや大きな負偏差となりました。その他、3月は高度16~32km付近でやや大きな負偏差、そのうち18~20kmで大きな負偏差、4月は高度10~16km付近で大きな正偏差、高度26~30km付近で大きな負偏差、10月は高度20~30km付近で大きな負偏差となりました。
   南極オゾンホールの鉛直構造の特徴は、通常はオゾンが多い高度14~22 km付近において、オゾンが大きく減少することです。南極昭和基地上空における2019年のオゾン分圧(図2(c))は、9月上旬に高度14~22 km付近で顕著に低くなりはじめ、次第により低い高度へ広がり、10月上旬には高度22 km以下の高度で5 mPa以下となりました。その後、10月下旬以降は、高度14~26km付近で急激にオゾン分圧が高くなりました。さらに2019年の特徴として、8月末に成層圏突然昇温が発生、極渦が弱かったことでオゾンホールの外側にある高濃度のオゾンが流入したため、9月上旬にオゾン分圧が低くなった高度より高い22~28km付近でオゾン分圧が高くなりました。オゾン分圧の月平均値による規格化偏差(図2(d))をみると、8~12月は高度約10 km以上で大きな正偏差がみられました。特に9月は、高度22~28km付近、11月は12~16km付近で顕著な正偏差となりました。

(a)つくばのオゾン分圧

(b)つくばのオゾン分圧規格化偏差

オゾン分圧 オゾン分圧規格化偏差

(c)昭和基地のオゾン分圧

(d)昭和基地のオゾン分圧規格化偏差

オゾン分圧 オゾン分圧規格化偏差

図2 つくばと南極昭和基地におけるオゾン分圧と規格化偏差の高度分布(2019年)

オゾン分圧図(a)(c)はオゾンゾンデ観測の個々の観測値を、規格化偏差図(b)(d)は月平均値を用いて作成。
規格化偏差は1994~2008年における月平均値の累年平均値からの偏差を累年平均値の標準偏差で割った値。
観測値のない高度については、前後の期間のオゾン分圧から内挿処理を行っている。
1994~2008年の累年平均値及び標準偏差の図については、「オゾンの世界分布と季節変化」に掲載している。



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