地震波のスペクトル

フーリエスペクトル

 地震波にはさまざまな周期の波が含まれています。 地震波をさまざまな周期の振動の集まりととらえ、周期ごとの地震波の強さに分解し表したものをフーリエスペクトルと言います。 図1は2003年宮城県沖の地震のときの大船渡と2003年十勝沖地震の浦河のフーリエスペクトルです。 大船渡は浦河に比べて周期の短い地震波が卓越していることがわかります。 大船渡は周期が約0.5秒以下の地震波の振幅が大きいですが、周期が1秒以上の地震波は浦河の方が大きくなっています。


大船渡(青)と浦河(赤)の東西動成分のフーリエスペクトル

図1 大船渡(青)と浦河(赤)の東西動成分のフーリエスペクトル




応答スペクトル

 地震波のフーリエスペクトルから、地震波が構造物におよぼす影響を読み取ることは困難です。 地震波によって構造物がどのように振る舞うかを知る方法として応答スペクトルがあります。
 応答スペクトルは構造物がさまざまな固有周期、減衰定数を持つ1質点・1自由度系*と考えたとき、 構造物がある地震波にさらされたときの最大応答値をスペクトルで表したものです(図2)。 応答値が加速度の場合、加速度応答と言います。
 図3はおもな地震のおもな観測点の加速度応答スペクトルを示したものです。 加速度の場合は0.5~2秒付近に主要な変動がよく現れますが、短周期をよく見えるように時間軸を対数表記しています。 加速度に質量をかけたものが力ですから、2003年の宮城県沖の地震のときには、 固有周期が0.3秒程度の構造物は大きい力を受けますが、固有周期が0.5秒以上の構造物は大きな力を受けなかったと言えます。 これに対し、兵庫県南部地震では、固有周期0.5秒~1秒の構造物に大きな力を受けたことがわかります。


* 質点が1つだけで、その質点の運動を記述するために必要な座標軸が1つだけの系のこと


応答スペクトルの概念図

図2 応答スペクトルの概念図




おもな地震のおもな観測点の加速度応答スペクトル

図3 おもな地震のおもな観測点の加速度応答スペクトル