つくば及び南極昭和基地の上空のオゾン層の状況(2024年)
診断
オゾン全量の状況
2024年のつくばの月平均オゾン全量は、1月、3月、4月、5月、6月、12月に多く注)なり3月と6月は観測開始(1957年)以来、その月として2番目に多い値となりました。1月から6月にかけてオゾン全量が多かった要因については、北半球で冬季から春季にかけて北極域へのオゾン輸送が活発であったこと(Newman et al., 2024)が影響したと考えられます。12月のオゾン全量が多かったのは、対流圏界面の高度が平年と比べて低かったためとみられます。
2024年の南極昭和基地上空の月平均オゾン全量は、4月、5月、8月に多くなりました。4月と5月は観測開始(1961年)以来、その月として2番目に多い値となりました。4月、5月は対流圏界面の高度が平年と比べて低かったことが要因として考えられます。8月は、南極上空に形成される極渦が不安定で、高度20km付近の気温の低い領域が小さく、オゾンホールの拡大が遅れたことが影響したと考えられます。一方で1月は月平均オゾン全量が少なく、観測開始(1961年)以来、1月として最も少ない値となりました。1月については、2023年の南極オゾンホールの規模が比較的大きくかつ消滅が遅かった影響が残ったことが要因として考えられます(南極オゾンホールについては「南極オゾンホールの状況(2023年)」・「南極オゾンホールの状況(2024年)」を参照)。
図1 つくば及び南極昭和基地上空の月平均オゾン全量(2024年)
図の実線は参照値(1994~2008年の月別累年平均値)、縦線はその標準偏差。
南極昭和基地の点線はオゾンホールが明瞭に現れる以前(1961~1980年)の月別累年平均値。
●は、月平均オゾン全量を表し、参照値と比較して「多い」こと、
●は、月平均オゾン全量を表し、参照値と比較して「並」であること、
●は、月平均オゾン全量を表し、参照値と比較して「少ない」ことを示す。
注)ここでは、月平均値の参照値(1994~2008年の月別累年平均値)からの差が参照値の標準偏差以内にあるときを「並」、それより多いときを「多い」、少ないときを「少ない」としている。
オゾンの高度分布の状況
つくば上空における2024年のオゾン分圧(図2(a))は、1年を通して高度18~28km付近にオゾン分圧の高い層を示し、中でも1~3月の高度20~24km付近は高い値が観測されました。 オゾン分圧の規格化偏差(図2(b))では、前述の月平均オゾン全量(図1)において「多い」となった1月、3月、4月、5月、6月は、高度4~14km付近で正偏差が広がり、5月の高度8km付近では顕著な正偏差となりました。12月は高度12~16km付近で正偏差となりました。その他の月は月平均オゾン全量(図1)で「並」でしたが、7~10月の高度16~24km付近で大きな不偏差となりました。
南極オゾンホールの鉛直構造の特徴は、通常はオゾンが多い高度14~22km付近において、オゾンが大きく減少することです。 南極昭和基地上空における2024年のオゾン分圧(図2(c))は、9月上旬にはほぼ全ての高度で7.5mPa以下と顕著に低くなりました。それ以降は、一時的に高度22~26km付近で7.5mPa程度のオゾン分圧がみられた他は、概ね5mPa以下の状態が継続しました。その後、11月下旬頃から高度20~24km付近で急激にオゾン分圧が高くなりました。 オゾン分圧の規格化偏差(図2(d))をみると、月平均オゾン全量(図1)において「少ない」となった1月は多くの高度で負偏差となりました。一方、月平均オゾン全量(図1)において「多い」となった4月、5月、8月は多くの高度で正偏差となり、特に8月の高度8km付近や26km付近で大きな正偏差となりました。
(a)つくばのオゾン分圧 |
(b)つくばのオゾン分圧規格化偏差 |
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(c)南極昭和基地のオゾン分圧 |
(d)南極昭和基地のオゾン分圧規格化偏差 |
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図2 つくばと南極昭和基地におけるオゾン分圧と規格化偏差の高度分布(2024年)
オゾン分圧図(a)(c)はオゾンゾンデ観測の個々の観測値を、規格化偏差図(b)(d)は月平均値を用いて作成。オゾンゾンデの2024年観測総数は、つくばは42回、南極昭和基地は48回。つくばの8月は観測回数が0回だったため描画していない。
規格化偏差は1994~2008年における月平均値の累年平均値からの偏差を累年平均値の標準偏差で割った値。
観測値のない高度については、前後の期間のオゾン分圧から内挿処理を行っている。
1994~2008年の累年平均値及び標準偏差の図については、「オゾンの世界分布と季節変化」に掲載している。




