北半球高緯度のオゾン層の状況(2024年)
診断
2024年の北半球高緯度のオゾン層
2024年3月の北半球高緯度における月平均オゾン全量を、過去に大規模なオゾン層破壊が観測された2020年3月の例とあわせて図1に示します。
2024年3月の偏差分布は、北極域を中心に正偏差となり、+30%以上の正偏差の領域もみられました(図1(b))。
この要因として、2024年の冬季から春季にかけて、成層圏の南北循環(ブリューワー・ドブソン循環)の駆動源の一つである地球規模の波(プラネタリー波)の対流圏から成層圏への伝播が北半球で頻繁に発生し、北極域へのオゾン輸送が活発であったことが影響したと考えられます(Newman et al., 2024)。また、プラネタリー波の伝播は2024年冬季に北半球高緯度で成層圏突然昇温の発生をもたらし、それにより北半球高緯度の下部成層圏(北緯60度以北50 hPa面)における領域最低気温は、オゾン層破壊を促進させる極域成層圏雲が出現する目安の-78℃を継続的には下回らず推移し(図2)、2024年は極域成層圏雲に起因するオゾン層破壊の発生が限定的であったと考えられます。2020年は、冬季から春季にかけて、北半球高緯度の下部成層圏の領域最低気温が極域成層圏雲が出現する目安の-78℃を継続的に下回り(図2)、その結果、3月を中心に大規模なオゾン層破壊が観測されました(図1(d))。
(a)2024年3月のオゾン全量 |
(b)2024年3月のオゾン全量偏差 |
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(c)2020年3月のオゾン全量 |
(d)2020年3月のオゾン全量偏差 |
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図1 2024年3月及び2020年3月の北半球の月平均オゾン全量、オゾン全量偏差分布図
月平均オゾン全量の等値線間隔は15 m atm-cm、偏差の等値線間隔は5 %。
北極点付近の白色域は太陽高度角の関係で観測できない領域。
比較の基準は1997~2006年の月別累年平均値。
図は米国航空宇宙局(NASA)提供の衛星観測データをもとに気象庁で作成した。
図2 北半球高緯度上空(50hPa面)における北緯60度以北の領域最低気温の推移
赤線:2023年7月~2024年6月
、青線:2019年7月~2020年6月。
黒線:累年平均値 (7~12月は1979~2022年、1~6月は1979~2023年)。
灰色領域:標準偏差の範囲、紫色領域:最大値と最小値の範囲。
緑線:極域成層圏雲出現の目安である-78℃を示す。
気象庁の長期再解析(JRA-3Q)をもとに作成した。




