《顕著な天候事例》停滞前線による大雨(2018年7月)

 2018年7月1~5日は北海道付近に前線が停滞して雨が降り続きました。この時期の北海道に数日にわたって前線が停滞するのは珍しく、記録的な大雨となりました。 このため、河川の氾濫や土砂災害、道路や農地の冠水、交通障害等が発生しました。
図1 2018年7月1~5日の地上天気図と同時刻の衛星画像
上川地方を中心に、5日間で200mm以上の雨が降った所が多く、また、7月の月降水量が統計開始以来最も多くなったアメダス地点も20地点を超えました。
図2 2018年7月1~5日の降水量
表1 2018年7月1~5日の降水量(上位10地点)

2018年7月はじめに北海道付近で前線が停滞した背景

 図3は、左上が2018年7月1~5日の地上天気図を平均したもの、左下が平年の7月1~5日の地上天気図を平均したもので、2枚の差(2018年と平年の違い)を示したのが右図です。 暖色の場所は、2018年7月1~5日の気圧が平年より高かったことを示し、寒色の場所は、平年より気圧が低かったことを示します。
 日本付近に目をやると、まず、オホーツク海北部の暖色が目立ちます。これは、オホーツク海高気圧と呼ばれる、冷涼な高気圧が発達していたことを表しています。 また、本州南岸から日本の東にかけても暖色域が広がっています。これは、太平洋高気圧が本州に張り出していたことを表しています。 2018年は6月の終わり頃から日本の南東海上で太平洋高気圧が強まり、平年に比べ太平洋高気圧の北への張り出しが強かったため、関東甲信地方では記録的に早い梅雨明けとなりました。
 一方、2つの高気圧に挟まれた北海道付近には、薄い水色の領域が見られ、平年より気圧が低かったことを示しています。 これが前線や、前線上に発生した低気圧を表しています。
 つまり、北海道の北と南で高気圧の勢力が強かったため、その間にあたる北海道付近に前線が停滞し、雨が降り続いたのです。 また、前線に向かって、北からは冷たい空気が流れ込み、南からは暖かく湿った空気が流れ込んだため前線の活動が活発となり、記録的な大雨となりました。
図3 2018年7月1~5日の平均地上天気図(左上)、平年の7月1~5日の平均地上天気図(左下)、 2018年と平年の7月1~5日の平均地上天気図における気圧差(右)

まとめ

 2018年7月1~5日に北海道付近で前線が停滞し、北海道は記録的な大雨となりました。 この時期に数日にわたって北海道付近で前線が停滞するのは珍しいことです。 6月の終わりから日本の南東海上で太平洋高気圧が強まり、関東甲信地方では記録的に早い梅雨明けとなりました。 太平洋高気圧が平年より北に張り出したため、オホーツク海高気圧との間に前線が挟まれる形となり、同じような場所に停滞したと考えられます。
図4 2018年7月1~5日に北海道付近に前線が停滞した理由の概念図