2016年8月は台風が相次いで北海道に上陸・接近し、北海道の天候に大きな影響を及ぼしました。
8月17日に第7号が上陸したのに続き、21日に第11号、23日に第9号と、わずか1週間の間に3つの台風が北海道に上陸しました。
1年で3つの台風が北海道に上陸したのは、1951年の統計開始以来初めてのことです。
《顕著な天候事例》台風と前線による記録的多雨(2016年8月)

図1 2016年8月の北海道の天候に影響を及ぼした台風の経路

図2 8月21日21時の天気図
同日23時過ぎに台風第11号が釧路市付近に上陸した。
これら台風による降水に加え、北海道付近に停滞していた前線の活動も活発となったため、オホーツク海側や太平洋側を中心に各地で記録的な大雨となり、
道内のアメダス225地点中、89地点において通年の月降水量の記録を塗り替えました。
また、河川のはん濫、土砂災害、住家の浸水害などが発生しました。

図3 2016年8月の降水量

図4 2016年8月の降水量平年比
2016年8月に台風が相次いで発生した背景
図5は、台風第5~11号が発生した位置と発生日です。
台風が相次いで発生した要因として、フィリピン付近から日付変更線付近で、台風のもととなる積乱雲が多く発生したことが挙げられますが、これには、
また、フィリピン付近で積乱雲の発生が多かったことには、この海域の海面水温が平年より高かったことも影響しました。 これには、2016年春に終息したエルニーニョ現象が関係していると考えられます(詳しくはこちら)。
- 太平洋中部から上空の気圧の谷が移動してきたこと
- 積乱雲が多く発生する領域が移動してきたこと
また、フィリピン付近で積乱雲の発生が多かったことには、この海域の海面水温が平年より高かったことも影響しました。 これには、2016年春に終息したエルニーニョ現象が関係していると考えられます(詳しくはこちら)。

図5 2016年8月に台風が発生した位置とその発生日
2016年8月に台風が相次いで北上した背景
図6の左上は2016年8月の地上天気図、左下は平年の8月の地上天気図、2枚の差(2016年と平年の8月の違い)を示したのが右図です。
暖色の場所は、2016年8月の気圧が平年より高かったことを示しており、カムチャツカ半島から千島の東にかけては、
平年より気圧が高かったことが分かります。一方、寒色は平年より気圧が低かったことを示しており、
日本付近では気圧が低かったことが分かります。
つまり、2016年8月は太平洋高気圧が日本のはるか東で強かったものの、西への張り出しは弱かったと言えます。
また、上空の偏西風も蛇行していました。
このため、太平洋高気圧の縁に沿って台風が北海道へと北上しやすく、また、南から暖かく湿った空気が入りやすかったため、 前線の活動も活発となりました。
このため、太平洋高気圧の縁に沿って台風が北海道へと北上しやすく、また、南から暖かく湿った空気が入りやすかったため、 前線の活動も活発となりました。

図6 2016年8月の地上天気図(左上)、平年の8月の地上天気図(左下)、2016年と平年の8月の地上天気図における気圧の差(右)
まとめ
2016年8月は、フィリピン付近から日付変更線付近で積乱雲の発生が多かったため、台風が相次いで発生しました。
これは、上空の気圧の谷や、積乱雲が多く発生する領域が、この海域へ移動してきたことが主な要因です。
さらに、フィリピン付近で海面水温が平年より高かったことも影響していました。
また、太平洋高気圧の西への張り出しが弱く、日本付近では気圧が低かったため、太平洋高気圧の縁に沿って台風が北海道へと北上しやすく、 南から暖かく湿った空気が入りやすかったため、前線の活動も活発となりました。
これらの背景が重なって、2016年8月の北海道は記録的な多雨になったと考えられます。
また、太平洋高気圧の西への張り出しが弱く、日本付近では気圧が低かったため、太平洋高気圧の縁に沿って台風が北海道へと北上しやすく、 南から暖かく湿った空気が入りやすかったため、前線の活動も活発となりました。
これらの背景が重なって、2016年8月の北海道は記録的な多雨になったと考えられます。

図7 2016年8月が記録的な多雨となった理由の概念図