2007年 No.28 火山の概況 (平成19年7月6日 〜 平成19年7月12日)

【活発もしくはやや活発な状況の火山】

樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群では高温状態が続いていると推定される。
三宅島 [やや活発な状況]
多量の火山ガスの放出が続いていると推定される。
硫黄島 [やや活発な状況]
大きな隆起の地殻変動はやや鈍化しながら継続している。
桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)
今期間、噴火は観測されなかったが、長期にわたり噴火活動が継続している。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動はやや活発で、火山性地震はやや多い状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
今期間、噴火は観測されなかったが、長期にわたり噴火を繰り返すなど火山活動の活発な状態が続いている。

【静穏な状況であるがデータに変化があった火山】

岩手山 [静穏な状況]
8日に火山性微動が発生した。
伊豆大島 [静穏な状況(レベル1)
8〜9日に島北部を震源とする地震が一時的にやや増加した。
霧島山(御鉢) [静穏な状況(レベル1)
6〜7日に火山性地震が一時的にやや増加した。


図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山
図1  活動解説を掲載した各火山の今期間の活動状況


注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルを言う。

注2 記号の意味
 ▲:噴火した火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状況の火山
 ◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化のあった火山、もしくはその他記事を掲載した火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山。◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化があった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山。


● 樽前山 [やや活発な状況]

 A火口及びB噴気孔群では依然として高温の状態が続いていると推定される。
 樽前山の火山活動はやや活発な状況が続いており、火口周辺では注意が必要である。
 なお、噴煙活動・地震活動は低調な状態が続いており、地殻変動に特段の変化はなかった。


◇ 岩手山 [静穏な状況]

 8日に継続時間は短いが振幅のやや大きな火山性微動が観測された。しかし、火山性微動発生前後で地震増加はなく、黒倉山山頂の噴気活動や東北大学の傾斜計1)等による地殻変動観測でも特段の変化は認められず、火山活動は静穏に経過している。
 

     1)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されることがある。


◇ 伊豆大島 [静穏な状況(レベル1)]

 8〜9日に、島北部の浅いところを震源とする地震が一時的にやや増加した。最大の地震は、8日14時21分に発生したマグニチュード2)1.4(暫定値)で、伊豆大島町岡田で震度1を観測した。その後、地震活動は静穏な状態に戻っている。三原山の噴気活動や体積計3)及び傾斜計1)による地殻変動データに、この地震活動に関連する特段の変化はなく、火山活動は静穏な状況が続いている。
 GPS、光波距離計3)及び体積計4)による連続観測では、深部へのマグマ注入によると考えられる島全体の膨張傾向が続いている。

     2)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されることがある。
     3)レーザなどを用いて山体に設置した反射鏡までの距離を測定する機器。山体の膨張や収縮による距離の変化を観測している。
     4)センサーで周囲の岩盤から受ける力による体積の変化をとらえ、岩石の伸びや縮みを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されることがある。
  


● 三宅島 [やや活発な状況]

 噴煙高度は火口縁上100〜200mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
 今期間は火山ガス観測を行わなかったが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されており、噴煙活動に大きな変化が見られないことから、依然として多量の火山ガスの放出が続いていると推定される。
 特に風下にあたる地区では火山ガスに対する警戒が必要である。また、雨による泥流にも注意が必要である。
 なお、火山性微動は観測されず、地殻変動に特段の変化はなかった。
 


● 硫黄島 [やや活発な状況]

 国土地理院及び防災科学技術研究所の観測によると、2006年8月に始まった島北部を中心とした島全体の大きな隆起の地殻変動はやや鈍化しながらも継続しており、島内の地震活動は地震回数がやや多いものの落ち着いた状況で推移している。
 硫黄島の火山活動はやや活発な状況が続いており、従来から小規模な水蒸気爆発が見られていた領域では、今後も注意が必要である。


◇ 霧島山(御鉢) [静穏な状況(レベル1)]

 6〜7日に、御鉢付近が震源と推定される火山性地震が一時的にやや増加した。11日には振幅の小さな火山性微動が観測された。しかし、その後は地震活動は静穏な状態で経過しており、火口縁を超える噴気は観測されず、傾斜計1)による地殻変動観測でも特段の変化はなく、火山活動は静穏に経過している。

● 桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)]

 今期間、昭和火口及び南岳山頂火口からの噴火は観測されなかった。
 火山性地震は少ない状態が続いている。火山性微動は観測されなかった。
 12日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は一日あたり300〜600トンと前回7月5日(一日あたり400〜800トン)と比べ、特段の変化はなかった。
 国土地理院のGPS観測によると、姶良あいらカルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入による長期的な膨張傾向が続いている。
 桜島では長期にわたり噴火活動が継続しており、昭和火口及び南岳山頂火口から半径2km以内では注意が必要である。


● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況 (レベル2)]

 噴煙活動はやや活発で、火山性地震はやや多い状態が続いている。硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いている。今期間は天候不良のため硫黄岳山頂火口の噴煙の状況はほとんど確認できなかったが、12日に火口縁上300mまで上がるのが観測された。
 薩摩硫黄島の火山活動はやや活発な状況が続いており、硫黄岳山頂火口周辺では注意が必要である。


● 口永良部島 [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 口永良部島の火山活動はやや活発な状況が続いており、新岳しんだけ火口周辺では注意が必要である。
 なお、遠望カメラ(新岳火口の北西約3kmに設置)による観測では、新岳火口周辺の噴気等は観測されなかった。地殻変動に特段の変化はなかった。


● 諏訪之瀬島 [活発な状況 (レベル3)

 今期間、噴火は観測されなかった。
 火山性微動はやや多い状態で経過し、火山性地震は6日から7日にかけて一時的にやや増加した。また、7日と10日には火山性連続微動が発生した。
 諏訪之瀬島では、長期にわたり噴火を繰り返すなど火山活動は活発な状態が続いており、御岳おたけ火口から半径2km以内では注意が必要である。





表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

 ※ 火山情報発表状況
 今期間、火山情報の発表はありませんでした。

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