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農業分野における気候リスクへの対応の実例:
2週目の気温予測を使った小麦赤かび病対策

このページでは、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)との共同研究で得られた成果のうち、小麦赤かび病防除に活用できる2週間先の小麦開花期予測情報作成にむけた取り組みを紹介します。


背景と目的

小麦赤かび病の写真
図1 小麦赤かび病の写真(農林水産省 2008)

高温多湿な日本では、赤かび病(図1)は小麦の最重要病害です。 赤かび病は収量を低下させるだけでなく、小麦粒中にかび毒を蓄積させます。 かび毒の濃度が低くても長期間摂取し続けると体重低下や成長抑制などが引き起こされる可能性があるため、 食品の安全性上の問題となっています (農林水産省 2008)。 このため、収穫された麦の中に赤かび粒が確認されると規格外となり、さらに、かび毒の濃度が1.1ppmを超えると出荷できなくなるなど、その影響は甚大です。

小麦は開花期に赤かび病に感染しやすいため、赤かび病対策には開花期の薬剤防除が基本となります。 近年は無人ヘリコプターを使った薬剤散布による防除が主流となりつつあり、防除予定日を2~3週間前に決定する必要がある一方で、防除実施日が開花期からずれるほど発病度は高くなってしまうことから、 開花期予測が重要となってきています。


気温予測値を使った開花期予測の検討

小麦は、気温や日長によって発育速度が変わることが知られています。 そのため、小麦の開花期を予測するには、気温の予測が必要です。 これまで、当日以降の気温の予測値として、一般的に平年値が使われていますが、 近畿中国四国農業研究センターと気象庁との共同研究において、 気温予測値を使った開花期予測の検討を行ってきました。 ここでは、その予測精度について、紹介します。

2013年の予測結果

小麦開花期予測のシミュレーション結果
図2 2013年春の小麦開花期予測のシミュレーション結果。横軸は予測を実施した日、縦軸は開花日。 実線は気温予測値を使った開花日(水色)、平年値を使った開花日(オレンジ)を示し、マーカーは実況値をモデルにあてはめた開花日(赤色の菱形)と実際の開花日(緑色の丸)を示す。

図2は、2013年春の小麦開花期予測のシミュレーション結果を示しています(品種はチクゴイズミ)。 オレンジ色の線が気温平年値を使った予測、水色の線が気温予測値を使った予測で、 横軸が開花期予測を実施した日を意味します。 実際の開花期である4月30日について、1か月程度前から良い精度で予測できていることがわかります。

このように、気温予測値を使った予測を使うことで、適切な開花期予測ができる可能性があることがわかります。

開花期予測の精度

次に、1991~2010年の20年間において、開花期予測の精度について確認してみます。

表1は、それぞれ3月31日、4月10日、4月20日から予測した場合の、 平年値を使った場合の開花期予測に比べて、気温予測を使った結果が改善したかどうかをまとめたものです。 開花3週間前、すなわち予測日が4月10日の場合、改善した年は20年中13年、改悪は3年であり、改善する年のほうが多いことがわかります。

表1 1991~2010年の小麦開花期シミュレーション結果。「効果なし」とは、気温予測値を使った開花予測日が平年値を使った開花予測日と同じであるが、実際の開花期と異なることを意味する。
項目 予測日
3月31日 4月10日 4月20日
改善した年数 8 13 7
予測値、平年値ともに誤差なしの年数 1 2 8
効果なしの年数 9 2 4
改悪した年数 2 3 1

小麦開花期予測のシミュレーション結果
図3 1991~2010年の小麦開花期予測の誤差(二乗平均平方根誤差:RMSE)。予測値として、平年値(青)と2週間先までの気温予測値(赤)を用いた結果。

最後に、20年分の開花期予測の精度について、量的に確認してみます。 図3に、それぞれ3月31日、4月10日、4月20日から予測した場合の、 平年値を使った場合と気温予測を使った場合の開花期予測の誤差を示します。 どの予測日においても、平年値を使った場合に比べて、気温予測を使った場合は、 開花期の予測が1日程度改善していることがわかります。

以上のように、小麦の開花期予測において、気温予測を用いる有効性が確認されました。


2週目気温を使った予測情報

これらの検討を受けて、農研機構では、以下のHPで、2週間先までの気温予測を使った小麦の開花期などの発育ステージ予測を提供しています。

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