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北西太平洋の底層の水温変化

平成29年3月21日発表(次回発表予定 平成30年3月20日)
気象庁地球環境・海洋部

診断(2016年)

北西太平洋の底層(水温1.2℃以下の領域)の平均水温は、東経137度線の海域A~Cでは1994年と比較して2016年は有意な変化はみられませんでした。
東経165度線の海域Fでは2011年と比較して2016年は有意な変化はみられませんでした。

※各ボックスをクリックすると各海域でのデータが表示されます

平均水温(℃)1994年との差
19941.187-
20101.191+0.004
20161.189(+0.002)
平均水温(℃)1994年との差
19941.180-
20101.182(+0.002)
20161.182(+0.001)
平均水温(℃)1994年との差
19941.152-
20101.157+0.005
20111.154(+0.002)
20121.154(+0.002)
20131.155(+0.002)
20141.153(+0.001)
20151.154(+0.001)
20161.156(+0.003)
平均水温(℃)1985年との差
19851.109-
19991.113+0.004
20071.114+0.005
20111.114+0.005
平均水温(℃)1992年との差
19921.113-
20111.117(+0.004)
平均水温(℃)2011年との差
20111.069-
20121.066(-0.003)
20131.064-0.005
20141.065-0.005
20151.065-0.004
20161.070(+0.001)
平均水温(℃)1993年との差
19931.071-
20051.071(0.000)
20111.073(+0.002)
20141.075(+0.003)
平均水温(℃)1989年との差
19891.077-
20151.083+0.006
北西太平洋の底層の水温変化の診断における診断を行う観測ライン

北西太平洋における底層の水温

地図中に示す8海域で、1980年代から1990年代にかけて行われた海面から海底までの高精度の海洋観測の結果と、近年実施した同じく高精度の海洋観測の結果から、それぞれの水温1.2℃以下の領域での平均水温を見積もり、それらの平均水温の差を示しています(ただし、海域Fは2011年から)。平均水温の差にある( )付きの値は有意な変化ではないことをあらわします。地図中で薄い灰色で示した部分は、水深が4000mより浅い海域をあらわしています。各海域の詳しい範囲及び使用した観測データについては「北西太平洋の底層の水温変化:補足資料」をご覧ください。平均水温の差の値をクリックすると底層の水温変化の断面図をご覧になれます。

水温は、水圧による水温上昇分を除いたポテンシャル水温であらわします。

注)端数を四捨五入しているため、表記した数値の差は「平均水温の差」と値が一致しない場合があります。

北西太平洋の底層の平均水温データ[テキスト形式:6KB]


解説

気象庁では、2010年から北西太平洋において海面から海底まで、高精度の海洋観測を行っています。2016年は東経137度(海域A~C)、東経165度の海域Fについて観測を行いました。その結果、北西太平洋の底層(水温1.2℃以下の領域)の平均水温は、東経137度線の海域A~Cでは1994年と比較して2016年に有意な変化は見られませんでした。また、東経165度線の海域Fでも2011年と比較して有意な変化はみられませんでした。海域Cでは2010年以降、海域Fでは2011年以降に低下する傾向が見られていましたが、2016年はみられなくなりました。

一方で、1980~1990年代に世界各国が協力して実施した世界海洋循環実験計画(WOCE:World Ocean Circulation Experiment)における海面から海底までの高精度の海洋観測結果と、1990年代以降に行なわれた観測結果の比較から、太平洋の底層において0.005~0.01℃の水温上昇が報告されています(Fukasawa et al., 2004, Kawano et al., 2006, Johnson et al., 2007)。また、気象庁が昨年までに行った海洋観測から、千島列島周辺の海域Dでは1985年と比較して2011年に0.005℃、カロリン諸島周辺の海域Hでは1989年と比較して2015年に0.006℃の上昇がみられています。

IPCC(2013)では、1992年から2005年の期間において3000mから海底までの層で海洋は温暖化した可能性が高いと報告されています。また、北太平洋底層における水温上昇は、深層循環の時間スケール(約千年)と比べてはるかに短い約40年間で、南極周辺の海域における大気海洋間の熱交換の変化が、海底地形に沿って伝播したものであるという数値モデルによる数値実験の結果が報告されています(Masuda et al., 2010)。太平洋の底層水は、大西洋の高緯度域のほか、南極周辺の海域での冷却により沈み込んだ海水を主な起源としています(太平洋における深層循環)。北西太平洋の底層での昇温は、南極周辺の海域における海水の冷却が弱まり、底層までの海水の沈み込みが弱くなった影響が海底地形に沿って数十年かけて北西太平洋まで伝播して水温の上昇として現れたものであることが示唆されます。

南極周辺海域を起源とした深層循環の変化がどのように現れるのか、それが地球温暖化の影響によるものなのかについては、長期的な観測による監視が必要です。

参考文献

  • Fukasawa, M., H. Freeland, R. Perkin, T. Watanabe, H, Uchida, and A. Nishina, 2004: Bottom water warming in the North Pacific Ocean. Nature, 427, 825-827.
  • Johnson, G.C., S. Mecking, B.M. Sloyan and S.E. Wijffels, 2007: Recent Bottom Water Warming in the Pacific Ocean. J. Climate, 20, 5365-5375.
  • Kawano, T., M. Fukasawa, S. Kouketsu, H. Uchida, T. Doi, I. Kaneko, M. Aoyama and W. Schneider, 2006: Bottom water warming along the pathway of lower circumpolar deep water in the Pacific Ocean. Geophys. Res. Lett., 33, L23613 doi:10.1029/2006GL027933.
  • IPCC (2013), Climate Change 2013: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [Stocker, T.F., D. Qin, G.-K. Plattner, M. Tignor, S.K. Allen, J. Boschung, A. Nauels, Y. Xia, V. Bex and P.M. Midgley (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA, 1535 pp.
  • Masuda, S., T. Awaji, N. Sugiura, J. P. Matthews, T. Toyoda, Y. Kawai, T. Doi, S.Kouketsu, H. Igarashi, K. Katsumata, H. Uchida, T. Kawano and M. Fukasawa, 2010: Simulated rapid warming of abyssal North Pacific waters. Science, 329, 319-322.

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