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海洋内部のpHの長期変化傾向(北西太平洋)

平成29年3月21日発表(次回発表予定 平成30年3月20日)

気象庁地球環境・海洋部

診断(2016年)

  • 1990年代以降、北西太平洋亜熱帯域の東経137度及び東経165度の深さ約150mから800mにおける海洋内部での水素イオン濃度指数(pH)の低下速度は、10年あたり0.003~0.036でした。
  • 北緯15度以北では、いずれの観測線においても海洋内部で海洋酸性化が進行しています。
海洋内部のpHの長期変化傾向

東経137度及び東経165度の各緯度における海洋内部での水素イオン濃度指数偏差の長期変化

東経137度及び東経165度の各緯度におけるポテンシャル密度25.0σθから26.9σθ(深さ約150mから800m)の海洋内部でのpHの平均平年偏差時系列を示します。平年値は1991年から2010年までの平均としています。
塗りつぶしは標準偏差の範囲(±1σ)、破線は長期変化傾向を示しています。
図中の数字は10年あたりの変化率(低下速度)を示し、"±"以降の数値は変化率に対する95%信頼区間を示しています。
解析手法の詳細は、海洋内部のpHの長期変化傾向(北西太平洋)の見積もり方法をご覧ください。

グラフのデータ[TEXT形式:16KB]

掲載しているデータは、解析に使用するデータの変更などにより修正する場合があります。

解説

北西太平洋亜熱帯域でのポテンシャル密度25.0σθから26.9σθ(深さ約150mから800m)の海洋内部における1990年代以降の水素イオン濃度指数(pH)の低下速度は、東経137度で10年あたり0.011~0.024、東経165度で10年あたり0.003~0.036でした。いずれの観測線においても、北緯15度以北の海洋内部で海洋酸性化が進行しています。

海水のpHは、二酸化炭素の蓄積による要因のほか、海洋の循環や生物活動などによっても変動します。緯度ごとのpHの低下速度をみると、亜熱帯北部のほうが南部よりも低下速度が速い傾向があります。これは、亜熱帯北部ほど人為起源二酸化炭素蓄積量が多いことと整合しています(海洋中の二酸化炭素蓄積量参照)。

Byrne et al.(2010)は、1990年代と2000年代に世界的に行われた高精度・高密度観測の結果から、北太平洋中央部における海洋内部で著しいpHの低下を検出し、このpHの変動への人為起源二酸化炭素の蓄積による寄与と自然変動による寄与は同程度であったことを報告しています。また、ハワイ沖の長期時系列観測点においても、深さ約600mまでの海洋内部でpHが低下しており、その要因として全炭酸濃度の増加のほか、海洋循環場の変動と生物活動による影響を示唆しています(Dore et al., 2009)。

海洋内部におけるpHは、二酸化炭素の蓄積及び海洋の循環や生物活動等による自然変動のそれぞれの要因によって変動しているため、長期的な変化傾向を正しく把握するためには引き続き継続的に監視していくことが重要です。


pHの低下傾向と海洋酸性化

海水のpHが長期間にわたり低下する傾向を『海洋酸性化』といい、おもに海水が大気中の二酸化炭素を吸収することによって起きています。北西太平洋亜熱帯域における現在の海水は弱アルカリ性(海面から深さ1000mにおいてpH約8.1~7.4)を示しています。二酸化炭素は水に溶けると酸としての性質を示し、海水のpHを低下させます。

現在、大気中の二酸化炭素濃度は増加し続けており、海洋はさらに多くの二酸化炭素を吸収・蓄積することになるため、より酸性側になることが懸念されています。(『海洋酸性化』とは、海洋が酸性(pHが7以下)になることではなく、より酸性側に近づいて(pHが低下して)きていることを指しています。)

海洋酸性化の進行は、海水中の化学バランスを変えるため、プランクトンやサンゴ、貝類、甲殻類などの海洋生物の成長に影響が及び(IPCC, 2014)、水産業や観光業などへの影響も懸念されています。

海洋内部のpHの長期変化傾向の診断について

海洋内部のpHの長期変化傾向の診断では、Takatani et al.(2014)の方法に基づき、同じポテンシャル密度の面(等密度面)での塩分で規格化した全アルカリ度は解析期間内では変わっていないという仮定から、全炭酸濃度と全アルカリ度からpHを計算して求めています。水温によってpHの値は少し変化します。ここでは、現場水温におけるpHから長期変化傾向を見積もっています。

参考文献

  • Byrne, R. H., S. Mecking, R. A. Feely, and X. Liu, 2010: Direct observations of basin-wide acidification of the North Pacific Ocean, Geophys. Res. Lett., 37, L02601, doi:10.1029/2009GL040999.
  • Dore, J., R. Lukas, D. Sadler, M. Church, and D. Karl, 2009: Physical and biogeochemical modulation of ocean acidification in the central North Pacific. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 106, 12 235-12 240, doi:10.1073/pnas.0906044106.
  • IPCC, 2014: Climate Change 2014: Impacts, Adaptation, and Vulnerability. Part A: Global and Sectoral Aspects. Contribution of Working Group II to the Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [Field, C.B., V.R. Barros, D.J. Dokken, K.J. Mach, M.D. Mastrandrea, T.E. Bilir, M. Chatterjee, K.L. Ebi, Y.O. Estrada, R.C. Genova, B. Girma, E.S. Kissel, A.N. Levy, S. MacCracken, P.R. Mastrandrea, and L.L. White (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA, 1132 pp.
  • Takatani, Y., A. Kojima, Y. Iida, T. Nakano, M. Ishii, D. Sasano, N. Kosugi, and T. Midorikawa, 2014: Ocean acidification in the interior of the western North Pacific subtropical region, Abstract for 2nd International Ocean Research Conference.

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