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表面海水中のpHの長期変化傾向(全球)

平成29年11月27日発表(次回発表予定 平成30年11月30日)

気象庁地球環境・海洋部

診断(2016年)

  • 全球の表面海水中の水素イオン濃度指数(pH)の低下速度は10年あたり0.018となっており、1990年以降、約0.05低下しています。
  • 太平洋、大西洋、インド洋ともに、広い海域で表面海水中のpHが低下し、海洋酸性化が進行しています。
表面海水中のpHの長期変化 表面海水中のpHの長期変化

全球の表面海水中の水素イオン濃度指数(pH)偏差の長期変化(左図)と2016年におけるpH分布図(右図)

左図は太平洋における表面海水中のpHの平年偏差時系列を示します。現場水温におけるpHの値を用いています。平年値は1990年から2010年までの平均としています。
太線は偏差の平均値、塗りつぶしは標準偏差の範囲(±1σ)を示しています。破線は長期変化傾向を示しています。
左図中の数字は10年あたりの変化率(減少率)を示し、"±"以降の数値は変化率に対する95%信頼区間を示しています。
解析手法の詳細は、表面海水中のpHの分布及び長期変化傾向の見積もり方法をご覧ください。
右図は、pHの分布を示し、色が暖色系であるほどpHの数値が低いことを示しています。
なお、掲載しているデータは、解析に使用しているデータの一部に暫定値を含むため、後日確定値に修正する場合があります。

解説

表面海水中の水素イオン濃度指数(pH)は、全球で1990年から2016年までの期間で、10年あたり0.018の割合で低下しています。

海盆ごとでは、太平洋では、10年あたり0.017、大西洋では、10年あたり0.017、インド洋では、10年あたり0.020の割合でpHが低下しており、海洋酸性化が海洋の広い範囲で進行しています。(下図参照)

(参考)


pHの低下傾向と海洋酸性化

海水のpHが長期間にわたり低下する傾向を『海洋酸性化』といい、おもに海水が大気中の二酸化炭素を吸収することによって起きています。現在の海水は弱アルカリ性(海面においてはpH約8.1)を示しています。二酸化炭素は水に溶けると酸としての性質を示し、海水のpHを低下させます。

現在、大気中の二酸化炭素濃度は増加し続けており、海洋はさらに多くの二酸化炭素を吸収することになるため、より酸性側になることが懸念されています。 (『海洋酸性化』とは海洋が酸性(pHが7以下)になることではなく、より酸性側に近づいて(pHが低下して)きていることを指しています。)

表面海水におけるpHの低下と海面水温の上昇が進行すると、将来、海洋が大気から二酸化炭素を吸収する能力が低下する可能性があると指摘されています(IPCC, 2013)。海洋の二酸化炭素を吸収する能力が低下すると、大気中に残る二酸化炭素の割合が増えるため地球温暖化が加速される可能性があります(Raven et al., 2005)。また、海洋酸性化の進行によってプランクトンやサンゴなど海洋生物の成長に影響が及ぶため、水産業や観光業などへの影響も懸念されています(IPCC, 2014)。

参考文献

  • IPCC (2013), Climate Change 2013: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [Stocker, T.F., D. Qin, G.-K. Plattner, M. Tignor, S.K. Allen, J. Boschung, A. Nauels, Y. Xia, V. Bex and P.M. Midgley (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA, 1535 pp.
  • IPCC (2014), Climate Change 2014: Impacts, Adaptation, and Vulnerability. Part A:Global and Sectoral Aspects. Contribution of Working Group II to the Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [Field, C.B., V.R. Barros, D.J. Dokken, K.J. Mach, M.D. Mastrandrea, T.E. Bilir, M. Chatterjee, K.L. Ebi, Y.O. Estrada, R.C. Genova, B. Girma, E.S. Kissel, A.N. Levy, S. MacCracken, P.R. Mastrandrea, and L.L. White (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA, 1132 pp.
  • Raven, J., K. Caldeira, H. Elderfield, O. Hoegh-Guldberg, P. Liss, U. Riebesell, J. Shepherd, C. Turley and A. Watson (2005), Ocean acidification due to increasing atmospheric carbon dioxide, Policy document 12/05, The Royal Society, London, UK, 60pp.
表面海水中のpHの長期変化 表面海水中のpHの長期変化
表面海水中のpHの長期変化

(a)太平洋域、(b)大西洋域、(c)インド洋域における表面海水中の水素イオン濃度指数(pH)の長期変化

中央の図は、pHの分布を示し、色が暖色系であるほどpHの数値が低いことを示しています。
(a)から(c)の図は各海域における表面海水中のpHの時系列を示します。太線は平均値、塗りつぶしは±1σの範囲、破線は長期変化傾向を示しています。 (a)から(c)の図中の数字は10年あたりのpHの変化率(減少率)を示し、"±"以降の数値は変化率に対する95%信頼区間を示しています。
なお、掲載しているデータは、解析に使用するデータの変更などにより修正する場合があります。


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