1.1 (1) 都市化率と平均気温等の長期変化傾向

概要

  • 大都市注1では、気温が長期的に上昇してるとみられ、特に日最低気温の上昇率が大きい。これは地球温暖化に加えて、都市化の影響が現れていると考えられる。
  • 大都市における年平均気温の上昇率は、都市化の影響が小さい地点注2と比べて大きい。
  • 年平均気温の上昇率は、夏に最小となる都市が多い。
(注1)ここで「大都市」とは、地上気象観測地点がある全国の主要都市の中から、地域的に偏りなく分布するように選出した11都市(札幌、仙台、東京、横浜、新潟、名古屋、京都、大阪、広島、福岡、鹿児島)のことを指しています。
(注2)全国の地上気象観測地点の中から、観測データの均質性が長期間確保でき、かつ都市化等による環境の変化が比較的小さい地点から、地域的に偏りなく分布するように選出した15地点(網走、根室、寿都、山形、石巻、伏木、飯田、銚子、境、浜田、彦根、多度津、宮崎、名瀬、石垣島)の平均。ただし、これらの観測点も都市化の影響が全くないわけではありませんが、同じ15地点の平均から算出される日本の平均気温の上昇率は、日本近海の海域を平均した年平均海面水温の上昇率**と同程度の値であり、都市化の影響が比較的小さいと考えられます。(**1900〜2022年までのおよそ100年間にわたる日本近海における海域平均海面水温(年平均)の上昇率は、+1.24°C/100年(気候変動監視レポート2022))

都市化率と平均気温等の長期変化傾向

表 大都市注1及び都市化の影響が比較的小さいとみられる15地点平均注2の都市化率注3と年及び季節平均した平均気温、日最高気温、日最低気温の長期変化傾向(1927注4~2022年)
地点 都市化率(%) 気温変化率(℃/100年)
平均気温 日最高気温 日最低気温
札幌 71.9 2.7 3.2 3.1 1.9 2.6 1.2 1.5 1.9 0.7 0.7 4.4 5.4 4.8 3.4 4.2
仙台 74.4 2.5 2.9 3.0 1.6 2.6 1.5 1.7 2.0 1.1 1.1 3.2 3.6 3.8 2.1 3.3
東京※ 89.2 3.3 4.2 3.4 2.2 3.4 1.9 2.2 2.3 1.5 1.9 4.4 5.8 4.6 3.0 4.4
横浜 56.0 2.8 3.5 3.2 1.9 2.8 2.6 2.8 3.1 2.0 2.5 3.5 4.5 3.8 2.3 3.5
新潟※ 42.6 2.1 2.3 2.7 1.4 2.0 2.1 2.7 2.9 1.0 1.9 2.2 2.3 2.7 1.9 2.0
名古屋 88.5 2.9 3.0 3.2 2.3 3.2 1.5 1.6 1.9 1.1 1.5 3.9 3.8 4.4 3.2 4.3
京都 63.1 2.7 2.6 3.1 2.3 2.8 1.3 1.0 1.9 1.2 1.1 3.8 3.7 4.1 3.3 4.0
大阪※ 92.0 2.6 2.6 2.8 2.0 3.0 2.2 2.2 2.5 2.0 2.2 3.4 3.1 3.5 3.2 3.9
広島※ 54.7 2.0 1.7 2.4 1.5 2.5 1.1 0.8 1.8 1.1 0.7 3.1 2.8 3.4 2.6 3.9
福岡 67.7 3.1 2.9 3.5 2.3 3.8 1.9 1.8 2.3 1.5 1.8 4.9 4.3 5.8 3.7 6.0
鹿児島※ 37.9 2.5 2.6 2.9 2.0 2.9 1.4 1.3 1.8 1.1 1.5 3.9 3.6 4.4 3.2 4.6
15地点平均※ 18.4 1.6 1.6 2.0 1.2 1.6 1.3 1.3 1.8 0.9 1.0 1.9 1.9 2.2 1.7 1.9
数値ファイル(csv形式) 平均気温 日最高気温 日最低気温

100年あたりの変化率を示す。統計期間は1927年注4から2022年まで(冬は1926年12月/1927年2月~2021年12月/2022年2月)。都市ごとに、一年で最も変化傾向の大きい季節の数値は赤字、最も変化傾向の小さい季節の数値は青字で示している。また、斜体字灰色セル(数値ファイルでは*を付加した値)は信頼水準90%以上で統計的に有意な変化傾向がないことを意味する。※を付した5地点(東京、新潟、大阪、広島、鹿児島)及び都市化の影響が比較的小さいとみられる15地点注2中の2地点(飯田、宮崎)は、観測場所の移転に伴い移転前のデータを補正しており、公開されている観測データとは値が異なる。

(注3)ここでは、平成28年度調査時の観測地点において、観測地点を中心とした半径7kmの円内における人工被覆率(平成28年度版国土数値情報土地利用3次メッシュ(1kmメッシュ)における建物用地、道路、鉄道、その他の用地の占める割合)を都市化率と定義しています。

(注4)表中の統計期間は、国内主要都市の統計値が揃う1927年以降としています。

各地点のデータ及び月別の変化

解説

都市化率注3が大きい大都市注1では、15地点平均注2と比較すると、平均気温の上昇率が大きくなる都市が多く見られます。例えば、年平均気温の上昇率は、15地点平均が1.6℃/100年であるのに対し、東京で3.3/100年℃、大阪で2.6℃/100年、名古屋で2.9℃/100年等となっています。ここで、各都市と15地点平均の上昇率の差は、おおよその見積もりとして、都市化による影響とみることができ、多くの都市で都市化の影響が現れていると言えます。

また、気温の上昇率は、日最高気温に比べて日最低気温の方が大きくなっています。これは、日中は混合層の発達に伴って都市の余剰熱が上空へ拡散することで地表面付近での気温変化量が小さくなるのに対し、夜間は都市の余剰熱が地表付近の薄い層に集中することで地表面付近での気温変化量が大きくなるためであると考えられます(藤部, 2012)。さらに、季節別に見ると、平均気温、日最高気温、日最低気温とも、上昇率が最も小さいのは夏である都市が多くなっています。これは、夏は対流が活発で混合層が発達しやすく熱が上空へ拡散しやすいこと等によると考えられます。

なお、気象庁の統計値において、1953~1963年の期間は日界(日別値を求める際に用いる一日の区切り)を9時として日最高・最低気温を観測していました。日界時刻の変更による系統的な違いについては、藤部(1999)などで述べられています。現在は24時を日界として観測していることから、日最低気温は、現在の値に対して地点・月により大きいところで約0.4~0.6℃程度高くなっていることが見込まれます。また、1953~1963年の期間の日界の違いによる影響は、例として15地点平均の年平均日最低気温の変化率では変わらない程度と見積もられます。

参考文献

  • 藤部文昭, 2012: 都市の気候変動と異常気象 猛暑と大雨をめぐって. 朝倉書店, 176pp.
  • 藤部文昭, 1999: 日最低・最高気温の統計値における日界変更の影響. 天気, 46, 819-829.

参考


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