平成29年 No.50 週間火山概況 (12月8日~12月14日)

【火山現象に関する警報等の発表状況】

表1 12月14日現在の火山現象に関する警報等の発表状況

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 霧島山(新燃岳)、桜島、口永良部島
入山危険 西之島※
レベル2(火口周辺規制) 浅間山、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 ベヨネース列岩※、福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(活火山であることに留意) アトサヌプリ、雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、倶多楽、有珠山、北海道駒ヶ岳、恵山、岩木山、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、蔵王山、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、日光白根山、草津白根山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、白山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、三宅島、鶴見岳・伽藍岳、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島
活火山であることに留意 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1 噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(12月14日現在)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 山頂火口からの噴煙は白色で、火口縁上概ね400m以下で推移しています。11日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量1)は1日あたり700トン(前回11月29日、800トン)とやや多い状態でした。
 山頂付近直下の火山性地震は、概ねやや少ない状態で経過しました(図2)。火山性微動は観測されていません。
 山頂の南南西にある塩野山の傾斜計2)では、西または北西上がりのわずかな変化が続いています。
 火山活動はやや活発な状態で経過しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす小規模な噴火が発生する可能性があるため、山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石3)に警戒してください。登山者等は地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石3)が遠方まで風に流されて降るため注意してください。
 浅間山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2017年12月14日)
(▲はごく小規模な噴火を示す)  

図2 浅間山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2017年12月14日) (▲はごく小規模な噴火を示す)


ベヨネース列岩 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 海上保安庁、第三管区海上保安本部によるこれまでの観測で、明神礁付近では火山活動によるとみられる変色水や気泡が時々観測されるなど、活動は活発な状態が続いています。今後、小規模な海底噴火が発生する可能性がありますので、明神礁付近及び周辺海域では海底噴火に警戒してください。また、周辺海域では海底噴火による浮遊物(軽石等)に注意してください。


西之島 [火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報]

 海上保安庁、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの観測では、8月11日以降火口からの火山灰や噴石の噴出は認められず、8月24日には溶岩流の海への流入も止まっていたとみられます。しかし、約1年半の休止期間の後、4月に噴火した経緯を踏まえると、今後も噴火が再開する可能性が考えられますので、火口から概ね1.5kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 阿蘇台陥没孔からの噴気は白色で、火口縁上概ね60m以下で経過しました。
 火山性地震は、やや少ない状態で経過しました。火山性微動は観測されていません。
 GNSS4)連続観測によると、島の隆起が継続しています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。
 火山活動はやや活発な状態で経過しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、以前に小規模な噴火が発生した地点(ミリオンダラーホール(旧噴火口)等)及びその周辺では引き続き噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 海上保安庁、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されるなど、活動はやや活発な状態で経過しています。今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では海底噴火に警戒してください。また、周辺海域では海底噴火による浮遊物(軽石等)に注意してください。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 新燃岳では、火山活動がやや高まった状態が続いています。
 火山性地震は少ない状態で経過していましたが、14日からやや増加しています。また、浅い場所を震源とする低周波地震が引き続き時々観測されています。
 火山性微動は11月30日以降、観測されていません。
 えびの岳付近(新燃岳の北西6km付近)では、火山性地震が時々発生しており、12日には32回と一時的に増加しました。この付近の深さ6~10kmでは、2011年の新燃岳の噴火に伴い収縮が認められたことから、マグマを供給した領域と推定されています。
 監視カメラによる観測では、白色の噴煙が火口縁上概ね100m以下で経過し、最高は300mまで上がりました。
 13日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は1日あたり100トン(前回12月5日、100トン)でした。また、新燃岳西側斜面の割れ目付近及び割れ目下方の噴気の状態や熱異常域の分布に、前回(12月5日)と比べて特段の変化は認められませんでした。
 GNSS連続観測では、7月頃からみられていた霧島山を挟む基線での伸びは一時停滞していましたが、10月末以降再び伸びがみられます。このことから、霧島山の深い場所でマグマが蓄積されていると考えられますので、火山活動に注意が必要です。
 弾道を描いて飛散する大きな噴石が火口から概ね2kmまで、火砕流5)が概ね1kmまで達する可能性があります。そのため、火口から概ね2kmの範囲では警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき6))が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。また、爆発的噴火に伴う大きな空振による窓ガラスの破損や降雨時の土石流にも注意してください。地元自治体等が発表する火山ガスの情報にも留意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、噴火活動が続いています。
 南岳山頂火口では、ごく小規模な噴火が時々発生しました。
 昭和火口では、10日にごく小規模な噴火が発生しました。
 火山性地震及び火山性微動は少ない状態で経過しています。
 11日に実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は1日あたり1,000トン(前回11月28日、900トン)とやや多い状態でした。また、14日には鹿児島地方気象台でかすかに感じる程度の臭気が認められました。
 姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ供給が継続しており、今後も噴火活動が継続する可能性があります。昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき6))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 新岳火口では、白色の噴煙が火口縁上200mまで上がりました。
 14日に海上自衛隊第1航空群の協力により実施した上空からの観測では、新岳火口内の状況は噴煙により確認できませんでしたが、2016年5月31日の観測と比較して、火口周辺の状況に特段の変化は認められませんでした。
 7日、9日、13日及び14日に、東京大学大学院理学系研究科、京都大学防災研究所、屋久島町及び気象庁が実施した観測では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は1日あたり200~500トン(前回6日、90トン)で、2017年4月以降わずかに増加した状態です。
 火山性地震は、12月4日以降、概ね少ない状態で経過していましたが、12日以降は概ねやや多い状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 傾斜計による観測では、特段の変化は認められませんでした。GNSS連続観測では、新岳山麓の基線で火山活動によると考えられる特段の変化は認められませんでした。
 2015年5月29日と同程度の噴火が発生する可能性は低いものの、火山性地震が増減を繰り返していること、噴煙量や火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、2014年8月の噴火前よりもやや多い状態で経過していることから、引き続き噴火が発生する可能性があります。
 新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。向江浜地区から新岳の南西にかけての火口から海岸までの範囲では、火砕流に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 諏訪之瀬島では、噴火活動が続いています。
 御岳(おたけ)火口では、時々ごく小規模な噴火が発生し、乳白色の噴煙が火口縁上700mまで上がりました。十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、火口から南南西4kmの集落で時々鳴動が確認されました。また、夜間に高感度の監視カメラで期間を通して火映7)を観測しました。
 8日及び9日に実施した現地調査では、断続的に鳴動を確認し、8日夜間には肉眼で確認できる程度の火映を観測しました。
 14日に海上自衛隊第1航空群の協力により実施した上空からの観測では、御岳火口内の状況は噴煙により確認できませんでしたが、2016年5月31日の観測と比較して、火口周辺の状況に特段の変化は認められませんでした。
 火山性地震は、少ない状態で経過しています。13日12時38分には、島外を震源とするマグニチュード3.1(暫定値)の地震が発生し、島内の震度観測点(鹿児島十島村諏訪之瀬島)で震度1を観測しました。火山性微動は9日から12日にかけて断続的に発生しました。
 諏訪之瀬島では、長期にわたり噴火を繰り返しています。火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。



上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。


全国の常時観測火山の観測データは、気象庁ホームページでもご覧になれます。
http://www.data.jma.go.jp/vois/data/tokyo/open-data/data_index.html

1) 火口から放出される火山ガスには、マグマに溶けていた水蒸気や二酸化硫黄、硫化水素など様々な成分が含まれており、これらのうち、二酸化硫黄はマグマが浅部へ上昇するとその放出量が増加します。気象庁では、二酸化硫黄の放出量を観測し、火山活動の評価に活用しています。
2) 傾斜計とは、火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器です。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。1μrad(マイクロラジアン)は1km先が1mm上下するような変化量です。
3)噴石は、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
4) GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
5) 火砕流とは、火山灰や岩塊、火山ガスや空気が一体となって急速に山体を流下する現象です。火砕流の速度は時速数十kmから時速百km以上、温度は数百℃にも達することがあります。
6) 霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
7) 火映とは、赤熱した溶岩や高温のガス等が、噴煙や雲に映って明るく見える現象です。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。

表2 火山現象に関する警報等の発表履歴 (12月8日~12月14日)

発表日時 火山名 特別警報・
警報・予報
概要
毎日 02時から3時間毎に8回 霧島山(新燃岳)
桜島
口永良部島
諏訪之瀬島
降灰予報(定時) 噴火した場合に予想される、降灰範囲及び小さな噴石の落下範囲を予想

【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(活火山であることに留意) 活火山であることに留意

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:活火山であることに留意)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。



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