平成29年 No.47 週間火山概況 (11月17日~11月23日)

【火山現象に関する警報等の発表状況】

いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 11月23日現在の火山現象に関する警報等の発表状況

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 霧島山(新燃岳)、桜島、口永良部島
入山危険 西之島※
レベル2(火口周辺規制) 浅間山、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 ベヨネース列岩※、福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(活火山であることに留意) アトサヌプリ、雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、倶多楽、有珠山、北海道駒ヶ岳、恵山、岩木山、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、蔵王山、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、日光白根山、草津白根山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、白山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、三宅島、鶴見岳・伽藍岳、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島
活火山であることに留意 上記以外の活火山*
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。
*2017年6月20日に活火山として選定された男体山については、準備が整い次第噴火予報(活火山であることに留意)を発表する予定です。

図1 噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(11月23日現在)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 山頂火口からの噴煙は白色で、火口縁上概ね300m以下で推移しています。
 山頂付近直下の火山性地震は、やや多い状態で経過しました(図2)。火山性微動もやや多い状態で経過しました。
 山頂の南南西にある塩野山の傾斜計1)では、西または北西上がりのわずかな変化が続いています。
 火山活動はやや活発な状態で経過しています。今後も火口周辺に影響を及ぼす小規模な噴火が発生する可能性があるため、山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。登山者等は地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。また風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石2)が遠方まで風に流されて降るため注意してください。
 浅間山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2017年11月23日)
(▲はごく小規模な噴火を示す)  

図2 浅間山 火山性地震の日別回数(2014年1月1日~2017年11月23日) (▲はごく小規模な噴火を示す)


ベヨネース列岩 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 14日に第三管区海上保安本部が実施した上空からの観測では、明神礁付近で薄い青白色の変色水が認められました。浮遊物や赤外線観測による温度異常等は認められませんでした。
 海上保安庁、第三管区海上保安本部によるこれまでの観測で、明神礁付近では火山活動によるとみられる変色水や気泡が時々観測されるなど、活動は活発な状態が続いています。今後、小規模な海底噴火が発生する可能性がありますので、明神礁付近及び周辺海域では海底噴火に警戒してください。また、周辺海域では海底噴火による浮遊物(軽石等)に注意してください。


西之島 [火口周辺警報(入山危険)及び火山現象に関する海上警報]

 14日に第三管区海上保安本部が実施した上空からの観測では、火口東側内壁及び西側内壁の噴気帯から白色噴気が約10m上がっていました。噴気帯周辺には、硫黄の析出と思われる黄色く変色した箇所が認められました。西之島北岸から西岸を通って南岸にかけて、幅150~500mにわたり薄い黄緑色の変色水域が分布していました。
 海上保安庁、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの観測では、8月11日以降火口からの火山灰や噴石の噴出は認められず、8月24日には溶岩流の海への流入も止まっていたとみられます。しかし、約1年半の休止期間の後、4月に噴火した経緯を踏まえると、今後も噴火が再開する可能性が考えられますので、火口から概ね1.5kmの範囲では噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 阿蘇台陥没孔からの噴気は白色で、火口縁上概ね50m以下で経過しました。
 火山性地震は、やや多い状態で経過しました。火山性微動は少ない状態で経過しました。
 GNSS3)連続観測によると、島の隆起が継続しています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。
 火山活動はやや活発な状態で経過しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、以前に小規模な噴火が発生した地点(ミリオンダラーホール(旧噴火口)等)及びその周辺では引き続き噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 海上保安庁、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁によるこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されるなど、活動はやや活発な状態で経過しています。今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では海底噴火に警戒してください。また、周辺海域では海底噴火による浮遊物(軽石等)に注意してください。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 新燃岳では、今期間噴火は発生していません。
 監視カメラによる観測では、白色の噴煙が火口縁上200mまで上がりました。
 火山性地震は少ない状態で経過していますが、浅い低周波地震が時々観測されています。火山性微動は観測されていません。
 GNSS連続観測では、7月頃から10月頃まで霧島山を挟む基線で伸びの傾向がみられました。このことから、霧島山の深い場所でマグマが蓄積されていると考えられますので、火山活動に注意が必要です。
 えびの岳付近(新燃岳の北西6km付近)では、火山性地震が23日に4回発生しました。この付近は2011年の新燃岳の噴火でマグマを供給したと推定される領域です。
 弾道を描いて飛散する大きな噴石が火口から概ね2kmまで、火砕流4)が概ね1kmまで達する可能性があります。そのため、火口から概ね2kmの範囲では警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき5))が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。また、爆発的噴火に伴う大きな空振による窓ガラスの破損や降雨時の土石流にも注意してください。地元自治体等が発表する火山ガスの情報にも留意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、噴火活動が続いています。
 南岳山頂火口では、ごく小規模な噴火が時々発生しました。また、同火口では、夜間に高感度の監視カメラで火映6)を時々観測しました。
 昭和火口では、噴火は観測されていません。
 火山性地震は少ない状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ供給が継続しており、今後も噴火活動が継続する可能性があります。昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき5))が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 口永良部島では、火山性地震は18日に、1日あたり30回を超えるなど、概ね多い状態で経過しています。火山性微動は観測されていません。
 新岳火口では、白色の噴煙が火口縁上300mまで上がりました。
 12日から21日にかけて、東京大学大学院理学系研究科、京都大学防災研究所、屋久島町及び気象庁が実施した観測では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量7)は1日あたり100~300トン(前回11月11日、200トン)で、2017年4月以降わずかに増加した状態です。
 20日から22日にかけて実施した現地調査では、前回(10月24日から25日)と比べて噴煙及び熱異常域の状況に変化は認められませんでした。
 GNSS連続観測では、特段の変化は認められません。
 2015年5月29日と同程度の噴火が発生する可能性は低いものの、火山性地震が概ね多い状態で経過していること、噴煙量や火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、2014年8月の噴火前よりもやや多い状態で経過していることから、引き続き噴火が発生する可能性があります。
 新岳火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。向江浜地区から新岳の南西にかけての火口から海岸までの範囲では、火砕流に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 諏訪之瀬島では、噴火活動が続いています。
 御岳(おたけ)火口では、20日から21日にかけて断続的にごく小規模な噴火が発生し、灰白色の噴煙が火口縁上700m以上に上がりました。また、夜間に高感度の監視カメラで概ね期間を通して火映を観測しました。
 十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、火口から南南西4kmの集落で、20日に降灰が確認されました。
 火山性地震は、少ない状態で経過しています。火山性微動は、15日から17日及び20日から22日にかけて断続的に発生しました。
 諏訪之瀬島では、長期にわたり噴火を繰り返しています。火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。



上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。


全国の常時観測火山の観測データは、気象庁ホームページでもご覧になれます。
http://www.data.jma.go.jp/vois/data/tokyo/open-data/data_index.html

1) 傾斜計とは、火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器です。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。1μrad(マイクロラジアン)は1km先が1mm上下するような変化量です。
2) 噴石は、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とはそれより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3) GNSS(Global Navigation Satellite Systems)とは、GPSをはじめとする衛星測位システム全般を示す呼称です。
4) 火砕流とは、火山灰や岩塊、火山ガスや空気が一体となって急速に山体を流下する現象です。火砕流の速度は時速数十kmから時速百km以上、温度は数百℃にも達することがあります。
5) 霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。
6) 火映とは、赤熱した溶岩や高温のガス等が、噴煙や雲に映って明るく見える現象です。
7) 火口から放出される火山ガスには、マグマに溶けていた水蒸気や二酸化硫黄、硫化水素など様々な成分が含まれており、これらのうち、二酸化硫黄はマグマが浅部へ上昇するとその放出量が増加します。気象庁では、二酸化硫黄の放出量を観測し、火山活動の評価に活用しています。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。

表2 火山現象に関する警報等の発表履歴 (11月17日~11月23日)

発表日時 火山名 特別警報・
警報・予報
概要
毎日 02時から3時間毎に8回 霧島山(新燃岳)
桜島
口永良部島
諏訪之瀬島
降灰予報(定時) 噴火した場合に予想される、降灰範囲及び小さな噴石の落下範囲を予想

【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(活火山であることに留意) 活火山であることに留意

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:活火山であることに留意)で発表します。
※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。



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