平成26年 No.04 週間火山概況 (平成26年1月17日〜1月23日)

【火山現象に関する警報等の発表状況】

 いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒が必要な事項)に変更はありません。

表1 火山現象に関する警報等の発表履歴(平成26年1月17日〜1月23日)

発表日時 火山名 特別警報・
警報・予報
概要
22日 14時56分 桜島 降灰予報 噴火に伴う降灰地域予想
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 1月23日現在の火山現象に関する警報等の発表状況

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島
レベル2(火口周辺規制) 三宅島、阿蘇山、霧島山(新燃岳)、諏訪之瀬島
火口周辺危険 西之島※、硫黄島※
噴火警報(周辺海域) 周辺海域警戒 福徳岡ノ場※
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、伊豆大島、九重山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島
平常 上記以外の活火山
※印のついた火山は火山現象に関する海上警報も発表中。

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報及び火山現象に関する海上警報を発表中の火山(1月23日)




【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 今期間、噴煙高度は、火口縁上100〜300mで経過しました。
 火山性地震は、少ない状態で経過しました。
 17日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日当たり400トン(前回2013年12月25日、300トン)で、やや少ない状態でした。
 三宅村によると、山麓ではまれにやや高濃度の二酸化硫黄が観測されています。
 山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に警戒してください。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに警戒してください。


西之島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 海上自衛隊と海上保安庁によると、西之島では活発な噴火活動が続いています。
 20日に海上保安庁が実施した上空からの観測によると、2つの火口が活動中で、南側の火口(図2の①)からは数分毎に灰色の噴煙を放出しており、北側の火口(図2の②)からは、連続的に灰白色の噴煙を放出していることが確認されました。溶岩流は、北東、南東、西方向に拡大しており(図2の破線)、また、新たに形成された陸地の東海岸付近から黄土色の変色水が、南南東方向へ帯状に幅約100m、長さ約900mに渡って延びていることが確認されました。
 海上保安庁の分析によると、今回の噴火活動により新たに形成された陸地の東西幅は約750mに達しており、噴火前の西之島の約1.5倍の広さになりました。
 西之島では、今後も噴火が続くおそれがありますので、西之島付近では噴火に警戒してください。また、周辺海域では浮遊物に注意してください。

図2 西之島 20日の噴火の状況(海上保安庁提供)

図2 西之島 20日の噴火の状況(海上保安庁提供)


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、火山性地震は少ない状態で経過し、火山性微動は観測されませんでした。
 国土地理院の観測によると、地殻変動は2013年9月頃からほぼ停滞していましたが、11月頃から沈降に転じています。
 硫黄島の島内は全体に地温が高く、多くの噴気地帯や噴気孔があり、過去には各所で小規模な噴火が発生しています。火山活動はやや活発な状態で推移しており、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されますので、従来から小規模な噴火が発生している地点(旧噴火口等)及びその周辺では噴火に警戒してください。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われませんでした。
 これまでのこれら機関による観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されますので、周辺海域では噴火に警戒してください。


阿蘇山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制規制)]

 阿蘇山では、やや活発な火山活動が続いています。
 19日頃から孤立型微動1)の回数が一時的に増加し、21日には336回発生しましたが、それ以降徐々に減少し、23日には67回となっています。火山性地震は21日頃から回数が増加し、23日現在も多い状態が続いています。日回数は21日232回、22日854回、23日1,261回でした。
 23日に実施した中岳第一火口の現地調査では、湯だまりの量は1割以下でした。また、火口底中央部付近で高温(約310度)の噴気孔を確認し、噴気孔からは火口内にとどまる程度の火山灰を含んだ噴煙を観測しました。また、22日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり1,500トン(前回10日1,500トン)と多い状態が継続していました。
 22日から23日にかけて高感度カメラで火映を観測しました。
 阿蘇山では、中岳第一火口から概ね1kmの範囲で、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石2)に注意してください。

図3 阿蘇山 火山活動経過図

図3 阿蘇山 火山活動経過図


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制規制)]

 新燃岳では今期間、噴火は発生しませんでした。
 火山性地震及び火山性微動は観測されませんでした。
 傾斜計3)では、火山活動に伴う特段の変化は認められませんでした。
 国土地理院の広域的な地殻変動観測によると、新燃岳の北西地下深くのマグマだまりへのマグマの供給に伴う地盤の伸びの傾向は2011年12月以降鈍化・停滞しています。一部の基線で、2012年5月頃からわずかな縮みの傾向がみられ、同年9月頃から停滞しています。
 新燃岳の火山活動は落ち着いた状態が続いています。しかし、火口内に溜まった溶岩は依然高温状態にあり、火口周辺に影響のある小規模な噴火が発生する可能性は残っています。火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。噴火時には、風下側で火山灰だけでなく小さな噴石2)(火山れき4))が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。降雨時には、泥流や土石流に注意してください。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 桜島では、活発な噴火活動が続いています。
 昭和火口では、爆発的噴火が5回発生し、大きな噴石2)が最大で4合目(昭和火口より800〜1,300m)まで達しました。22日10時16分の爆発的噴火では、ごく小規模な火砕流が発生し、昭和火口の南東側へ約500m流下しました。昭和火口で火砕流が発生したのは2013年10月20日以来です。鹿児島市消防局中央消防署桜島西分遣隊によると、この噴火に伴い、桜島島内の鹿児島市有村町付近(昭和火口から南側約3km)で、最大約1cmの小さな噴石2)(火山れき4))が確認されました。また、22日14時37分の爆発的噴火では、鹿児島市消防局中央消防署桜島東分遣隊によると、鹿児島市有村町の有村溶岩展望所付近で、最大約3cmの小さな噴石(火山れき)が確認されました。
 南岳山頂火口では、19日にごく小規模な噴火が発生しました。
 17日に実施した現地調査では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり800トン(前回9日1,900トン)とやや少ない状況でした。
 GPS連続観測では桜島島内の基線で、2013年2月頃からわずかな伸びの傾向がみられましたが、同年7月頃から停滞またはわずかな縮みの傾向がみられます。国土地理院の地殻変動観測結果によると、鹿児島(錦江)湾を挟む一部の基線では、長期的な伸びの傾向が続いていましたが、6月頃から停滞気味です。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき)が遠方まで風に流されて降るため注意してください。爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。また、降雨時には土石流に注意してください。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 諏訪之瀬島の御岳(おたけ)では、やや活発な噴火活動が続いています。
 御岳火口では、ごく小規模な噴火が時々発生しました。夜間には、高感度カメラで火映を観測しました。また、灰白色の噴煙が火口縁上800mまで上がりました。
 十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、火口から南南西約4kmの集落で、23日にごく少量の降灰が確認されました。
 火山性地震は21日に171回と一時的に増加しましたが、22日以降減少しました。20日から22日にかけて火山性微動を時々観測しました。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されますので、火口から概ね1km の範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒してください。風下側では火山灰だけでなく小さな噴石2)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。


【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】


 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はありません。

1)阿蘇山特有の微動で、火口直下のごく浅い場所で発生しており、周期0.5〜1.0秒、継続時間10秒程度で振幅が5μm/s以上のものを孤立型微動としています。
2)噴石については、その大きさによる風の影響の程度の違いによって到達範囲が大きく異なります。本文中「大きな噴石」とは、「風の影響を受けず弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風に流されて降る小さな噴石」のことです。
3)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがあります。
4)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現しています。

注)本資料には速報的な内容を含みます。データについては精査により、後日修正することがあります。
  詳細については、毎月発表の火山活動解説資料を参照してください。
  


【参考】 火山現象に関する警報等と噴火警戒レベル等の対応表

特別警報・警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを運用していない火山に対するキーワード
噴火警報※ レベル5(避難) 居住地域厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

海底火山については、噴火警報(周辺海域)(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表します。

※印のついた噴火警報は、特別警報に位置づけられています。


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