平成22年 No.47 週間火山概況 (平成22年11月12日〜 平成22年11月18日)

【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】

 いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒すべき事柄)に変更はない。

表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(11月12日〜11月18日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 11月18日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島
レベル2(火口周辺規制) 三宅島、霧島山(新燃岳)、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、秋田駒ケ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島
平常 上記以外の活火山

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報発表中の火山(11月18日現在)





【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】



三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は火口縁上100〜300mで経過した。
 火山性地震は少ない状態で経過した。
 三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 独立行政法人防災科学技術研究所の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過している。
 国土地理院の観測によると、島全体の隆起を示す地殻変動が2006年8月に始まり、2009年10月頃からは停滞していたが、今年5月から再び現れている。島内南北方向の伸びの傾向は継続している。
 火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した島東部の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われなかった。これらの機関のこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、 今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 火山性地震は増減を繰り返しながら、やや多い状態で経過した。15日に振幅が小さく、継続時間の短い火山性微動を1回観測した。
 遠望観測では、噴煙が最高で火口縁上200mまで上がるのを観測した。
 火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生する可能性があるので、火口から概ね1kmの範囲では、大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき2))に注意が必要である。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 昭和火口では爆発的噴火が11回発生し、大きな噴石1)が4合目(昭和火口から800〜1,300m)まで達した。また、同火口では夜間に高感度カメラ3)で確認できる程度の微弱な火映が続いている。
 南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
 火山性地震及び火山性微動は少ない状態が続いており、山体の収縮を示す地殻変動が観測されている。
 12日及び16日に行った現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は1日あたり1,300〜1,400トンとやや多い状態で経過した。
 国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による長期的な伸びの傾向がみられるが、7月頃から鈍化している。
 昭和火口及び南岳山頂火口から概ね2kmの範囲では、大きな噴石1)及び火砕流に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき2))に注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。


薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 火山性地震は少ない状態で経過した。硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや高い状態が続いている。
 火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1km の範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)に注意が必要である。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では、噴火が断続的に発生した。これらの噴火に伴う噴煙の最高高度は火口縁上1,000mであった。同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映を時々観測した。
 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)に注意が必要である。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】


浅間山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 11日(前期間)から14日にかけて火山性地震がやや増加したが、その後は減少している。また、傾斜計4)による地殻変動観測では、火山活動によるとみられる変化は認められなかった。
 噴煙高度は火口縁上100〜200mで経過した。
 山頂火口から概ね500m以内に影響する程度の噴出現象は突発的に発生する可能性があるので、火山灰噴出や火山ガス等に警戒が必要である。



1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。
2)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。
3)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。
4)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがある。




 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。


注)データについては精査により、後日修正することがある。






【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。


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