平成22年 No.35 週間火山概況 (平成22年8月20日 〜 平成22年8月26日)

【火山現象に関する警報及び予報の発表状況】

 いずれの火山についても、噴火に関する予報警報事項(警戒すべき事柄)に変更はない。

表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(8月20日〜8月26日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 8月26日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島
レベル2(火口周辺規制) 三宅島、霧島山(新燃岳)、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、秋田駒ケ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(御鉢)、口永良部島
平常 上記以外の活火山

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報発表中の火山(8月26日現在)





【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】



三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は火口縁上100〜400mで経過した。
 火山性地震は少ない状態で経過した。
 25日に行った現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は一日あたり1,400トン(前回8月3日1,400トン)と、依然として多い状態が続いている。
 三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 独立行政法人防災科学技術研究所の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過している。
 国土地理院の観測によると、島全体の隆起を示す地殻変動が2006年8月に始まり、2009年10月頃からは停滞していたが、今年5月から再びみられ6月以降はやや鈍化している。島内南北方向の伸びの傾向は継続している。
 火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した島東部の海岸付近、島西部(井戸ヶ浜等)及び南東沖(翁浜沖)では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部、海上自衛隊及び気象庁による上空からの観測は行われなかった。  これらの機関のこれまでの観測によると、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されており、今後も小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 火山性地震は増減を繰り返しながら、やや多い状態で経過した。火山性微動は観測されていない。
 遠望観測では、火口縁を超える噴煙は確認されなかった。
 火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生する可能性があるので、火口から概ね1kmの範囲では、大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき2))に注意が必要である。

1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。
2)霧島山・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 昭和火口では爆発的噴火が11回発生し、大きな噴石が4合目(昭和火口から800〜1,300m)まで達した。また、同火口では夜間に高感度カメラ3)で確認できる程度の微弱な火映が時々確認された。
 南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
 火山性地震は少ない状態で経過した。また、噴火に伴う火山性微動が観測された。
 国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による変化が引き続き観測されている。今年初め頃から桜島島内でみられていた伸びの傾向は7月頃から鈍化している。
 昭和火口及び南岳山頂火口から2km程度の範囲では、大きな噴石1)及び火砕流に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき2))に注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。

3)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。


薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 火山性地震はやや多い状態が続いている。
 火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1km の範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)に注意が必要である。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では、噴火が時々発生した。
 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)に注意が必要である。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】


吾妻山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 23日11時頃から、大穴火口のW−6噴気孔の下方で、硫黄の燃焼と思われる煙が上がっているのを浄土平のカメラで確認した。翌24日、福島県の防災ヘリコプター による観測では、噴気孔下方からの煙が確認されており、硫黄の燃焼が続いていたと考えられる。同様の現象は、5月6日及び7月9日にも確認されており、噴気活 動はやや高い状態が続いている。
 火山性地震は8月以降少ない状況となっている。
 ただちに火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められないが、火口内では噴気、火山ガスの噴出等がみられるため警戒が必要である。


伊豆大島 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 三原山周辺の浅いところを震源とする火山性地震が今年7月以降、若干増加する傾向がみられ、今期間も同様に経過している。
 GPSによる連続観測では、地下深部へのマグマ注入によると考えられる長期的な島全体の膨張傾向が継続している。短期的には2009年秋頃から今年5月にかけて 収縮傾向がみられていたが、5月下旬からGPS及び体積歪計4)で伸びの傾向がみられる。国土地理院のGPS及び独立行政法人防災科学技術研究所の 傾斜計5)においても、今年5月頃から山体の膨張を示す変動がみられる。この様な山体の膨張は、2007年3月から7月にかけてもみられた。
 噴気の状態等、表面現象に異常はみられない。
 火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められないが、今後の活動の推移に注意が必要である。

4)センサーで周囲の岩盤から受ける力による体積の変化をとらえ、岩石の伸びや縮みを観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等で変化が観測されることがある。
5)火山活動による山体の傾きを精密に 観測する機器。火山体直下へのマグマの貫入等により変化が観測されることがある。



 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。


注)データは速報値であり、後日変更されることがある。






【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。


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