平成22年 No.16 週間火山概況 (平成22年4月9日 〜 平成22年4月15日)

【火山現象に関する警報及び予報の状況】

15日、浅間山に噴火予報を発表し噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(平常)に引き下げた。
16日(期間外)、霧島山(新燃岳)に噴火予報を発表し噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(平常)に引き下げた。
その他の火山は、噴火に関する予報警報事項に変更はない。

表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(4月9日〜4月16日(期間外含む))

発表日時 火山名 警報・予報 概要
4月15日11時00分 浅間山 噴火予報 噴火警戒レベルを1(平常)に引下げ
4月16日11時00分 霧島山(新燃岳) 噴火予報 噴火警戒レベルを1(平常)に引下げ
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布予想

表2 4月16日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベル及びキーワード 該当火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島
レベル2(火口周辺規制) 三宅島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、秋田駒ケ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、浅間山、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、、霧島山(新燃岳)、霧島山(御鉢)、口永良部島
平常 上記以外の活火山

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報発表中の火山(4月16日現在)





【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】



浅間山 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]←15日に噴火警戒レベル2(火口周辺規制)から引下げ

 浅間山では、2009年5月27日以降噴火は発生していない。火山性地震はやや多い状態が継続しているが、今期間の後半は低調に推移している。2009年2月2日の噴火前にみられた周期の短い地震の増加は認められない。
 13日に群馬県の協力により上空からの観測を実施した。山頂火口内の火口底中央部及びその周辺に引き続き高温領域1)が認められ、前回の観測(2009年12月10日) と比較して、高温領域の分布に大きな変化はみられなかった。また、火口周辺に新たな噴出物は認められなかった。山頂火口からの火山ガス(二酸化硫黄)の放出量 も最近は減少している。山体周辺のGPS連続観測では、深部へのマグマの注入を示す伸びの傾向が鈍化し、最近はわずかに縮みの傾向が見られる。
 これらのことから、浅間山では山頂火口から500mを超える範囲に影響を及ぼす噴火の兆候は認められなくなったと判断し、 15日11時00分に噴火予報を発表して噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(平常)に引き下げた。
 ただし、山頂火口から概ね500m以内に影響する程度の噴出現象は突発的に発生する可能性があるので、火山灰噴出や火山ガス等に警戒が必要である。

1)赤外熱映像装置により観測している。赤外熱映像装置は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器で、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、 測定距離や大気等の影響で実際の温度よりも低く測定される場合がある。


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 10日21時24分頃、振幅のやや大きな低周波地震が発生した。地震発生時の噴煙の状況は雲のため不明であったが、同日夜間に行った現地調査で、三宅島の北側の山麓 (山頂火口から約3km)で微量な降灰を確認したことから、ごく小規模な噴火が発生したと推定される。11日08時40分頃、山頂火口でごく小規模な噴火が発生し、黒灰色 の噴煙が火口縁上500mまで上がり、東に流れるのを観測した。同日行った現地調査では、島の東側の山麓(山頂火口から約3km)で微量な降灰を確認した。 また、この噴火により、空振2)を伴う振幅のやや大きな低周波地震を観測した。そのほかの観測データに変化はみられなかった。噴火が発生したのは2009年11月15日のごく小規模な噴火以来である。
 噴火時以外の噴煙高度は火口縁上100〜200mで推移した。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。
 三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 三宅島では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性が あると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。

2)噴火などで発生した空気の急激な圧力変化が大気中を周囲に伝わる現象。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 独立行政法人防災科学技術研究所の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過している。国土地理院の観測によると、2006年8月以降みられている島全体の隆起を示す地殻変動は、現在はほぼ停滞している。島内南北方向の伸びの傾向は継続している。
 硫黄島では、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した領域では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 14日に海上自衛隊が上空から行った観測によると、福徳岡ノ場付近の海面に火山活動によるとみられる、複数の湧出点から南西方へ長さ約2,700m、 幅約360mの帯状に延びる青白色、乳白色、薄緑色の変色水及び浮遊物らしきものを確認した。これまでの、海上保安庁海洋情報部、第三管区海上 保安本部及び海上自衛隊による上空からの観測でも、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されている。
 福徳岡ノ場では小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。


霧島山(新燃岳) [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]←16日(期間外)に噴火警戒レベル2(火口周辺規制)から引下げ

 遠望カメラによる観測では、噴煙活動は低調な状態が続き、火山性地震は4月7日以降少ない状態が続いている。また、火山性微動は3月31日以降発生していない。
 これらのことから火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められなくなったと判断し、16日(期間外)に噴火予報を発表して噴火警戒レベルを2(火口周辺規制) から1(平常)に引き下げた。
火口内及び西側斜面では引き続き噴気がみられており、その近傍では火山灰等の噴出に警戒が必要である。


桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

 昭和火口では、爆発的噴火が24回発生し、大きな噴石3)が3合目(昭和火口から1,300〜1,800m)まで達した。また、同火口では夜間に高感度カメラ4)で確認できる程度の微弱な火映が時々観測された。
 南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
 国土地理院のGPS による地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による変化が引き続き観測されており、2010年初め頃から桜島島内においても伸びが観測されている。
 桜島の昭和火口及び南岳山頂火口から2km程度の範囲では、大きな噴石3)及び火砕流に対する警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石3)(火山れき5)にも注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。

3)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。
4)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。
5)桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。


薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙の状況は、雲のため山頂部を確認できた時間が少なく、噴煙は観測されなかった。火山性地震はやや多い状態が続いている。
 薩摩硫黄島では、硫黄岳山頂火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1km の範囲では噴火に対する警戒が必要である。
風下側では降灰及び小さな噴石3)にも注意が必要である。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では、小規模な噴火が時々発生した。また、同火口では夜間に高感度カメラで確認できる程度の微弱な火映が観測された。
 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 諏訪之瀬島では、今後も御岳火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石3)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石3)にも注意が必要である。



 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。





【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。


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