平成22年 No.14 週間火山概況 (平成22年3月26日 〜 平成22年4月1日)

【火山現象に関する予報及び警報の状況】

 3月30日、霧島山(新燃岳)に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベル1を(平常)からレベル2(火口周辺規制)へ引き上げた。
その他の火山は、噴火に関する予報警報事項に変更はない。

表1 火山現象に関する警報及び予報の発表履歴(3月26日〜4月1日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
30日09時10分 霧島山(新燃岳) 火口周辺警報 噴火警戒レベル2(火口周辺規制)へ引上げ
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布状況

表2 4月1日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 当該火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 桜島
レベル2(火口周辺規制) 浅間山、三宅島、霧島山(新燃岳)、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 雌阿寒岳、十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、秋田駒ケ岳、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、草津白根山、御嶽山、富士山、箱根山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(新燃岳)、霧島山(御鉢)、口永良部島
平常 上記以外の活火山

図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報発表中の火山(4月1日現在)





【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】



浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

噴煙高度は火口縁上50〜100mで推移した。山頂火口からの噴煙量は2009年4月以降大きな変化はなく、やや多い状態が続いている。
火山性地震はやや多い状態が続いている。
GPSによる地殻変動観測では、2008年7月初め頃からの深部へのマグマ貫入を示す伸びの傾向は、2009年7月頃から鈍化し、現在はほぼ停滞している。
浅間山では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、山頂火口から概ね2kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では、降灰及び風の影響を受ける小さな噴石1)にも注意が必要である。なお、火山ガスの放出が続いているので、風下側にあたる登山道等では火山ガスにも注意が必要である。

1)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。


三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

噴煙高度は火口縁上100〜200mで推移した。 火山性地震はやや多い状態が続いている。 三宅村によると、山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。 三宅島では、今後も山頂火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺(雄山環状線内側)では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で火山ガスの濃度が高くなる可能性があると予想される地域では、火山ガスに対する警戒が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

独立行政法人防災科学技術研究所の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過している。国土地理院の観測によると、2006年8月以降みられている島全体の隆起を示す地殻変動は、現在はほぼ停滞している。島内南北方向の伸びの傾向は継続している。
 硫黄島では、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これまで小規模な噴火が発生した領域では噴火に対する警戒が必要である。
 


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

今期間、観測は行われなかった。なお、これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部及び海上自衛隊による上空からの観測で、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されている。
福徳岡ノ場では引き続き小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)] ←3月30日に噴火警戒レベル1(平常)から引上げ

3月30日07時34分頃から火山性微動が観測されたほか、08時00分頃から白色噴煙の量が増加するなど、火山活動の高まりが認められたことから、新燃岳火口から概ね1kmの範囲に影響を及ぼす噴火の可能性があると判断し、09時10分に火口周辺警報を発表して噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げた。
同日、気象庁機動調査班(JMA-MOT)が宮崎県、鹿児島県及び九州地方整備局の協力により行った上空からの観測(図2)では、新燃岳火口内の一部と火口外の西側斜面に降灰が確認されたことから、08時頃にごく小規模な噴火が発生したと考えられる。新燃岳で噴火が発生したのは、2008年8月22日以来である。
 その後も、31日02時頃から振幅の小さな火山性地震がやや多い状態で推移している。
新燃岳火口から概ね1kmの範囲では、大きな噴石1)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき2))にも注意が必要である。


霧島山(新燃岳) 火口内及び火口外の西側斜面の状況(2010年3月30日、鹿児島県の協力による)
  左:2008 年8月22 日にできた火口及び噴気地帯より白い噴煙が上がっている)
  右:2008 年8月22 日にできた割れ目より白い噴煙が上がっている)
  赤枠内が今回、降灰を確認した領域

2)霧島・桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。

桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]

昭和火口では、爆発的噴火が15回発生し、大きな噴石1)が4合目(昭和火口から800〜1,300m)まで達した。また、同火口では夜間に高感度カメラ3)で確認できる程度の微弱な火映が時々観測された。
南岳山頂火口では、噴火は発生しなかった。
26日に海上自衛隊第22航空群第72航空隊鹿屋航空分遣隊の協力により行った上空からの観測では、2009年10月9日(海上自衛隊第22航空群第72航空隊鹿屋航空分遣隊の協力による)の観測時と比較して南岳山頂火口及び昭和火口の状況は、引き続き白色の噴煙が上がっており、特段の変化は認められなかった。
29日に行った現地調査では、二酸化硫黄の平均放出量は1日あたり2,000トン(前回3月16日、一日あたり1,200トン)とやや多い状態で推移した。
国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)深部の膨張による変化が引き続き観測されている。
 桜島の昭和火口及び南岳山頂火口から2km程度の範囲では、大きな噴石1)及び火砕流に対する警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石1)(火山れき2))にも注意が必要である。降雨時には土石流に注意が必要である。

3)九州地方整備局大隅河川国道事務所が黒神河原上流に設置したカメラ等による。


薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は概ね火口縁上100mであった。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。
 薩摩硫黄島では、硫黄岳山頂火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では噴火に対する警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では、29日に小規模な噴火が発生した。火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 諏訪之瀬島では、今後も御岳火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口から概ね1kmの範囲では大きな噴石1)に警戒が必要である。風下側では降灰及び小さな噴石1)にも注意が必要である。



【噴火予報発表中の火山の活動状況及び予報事項】


口永良部島 [噴火予報(噴火警戒レベル1、平常)]

 3月下旬から新岳火口浅部を震源とする振幅のやや大きな火山性地震が増減を繰返しながら多い状態で経過した。また、振幅の小さな火山性微動も時々発生している。遠望カメラでは、噴煙等の表面現象に特段の変化は認められない。GPSによる地殻変動観測でも、特段の変化は認められない。
 口永良部島では、新岳火口周辺に影響を及ぼす噴火の兆候は認められないが、火口内で引き続き噴煙が見られており、火口周辺では火山ガス等に対する注意が必要である。



 上記以外の火山では、期間中、火山活動に特段の変化はなく、予報事項に変更はない。





【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。


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