平成20年 No.44 週間火山概況 (平成20年10月24日 〜 平成20年10月30日)

【火山現象に関する予報及び警報発表状況】

 27日、口永良部島に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げた。
 29日、霧島山(新燃岳)に噴火予報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(平常)に引き下げた。
 その他の火山は、噴火に関する予報警報事項に変更はない。

表1 火山現象に関する予報及び警報の発表履歴(10月24日〜10月30日)

発表日時 火山名 警報・予報 概要
27日11時00分 口永良部島 火口周辺警報 噴火警戒レベルを3「入山規制」に引上げ
29日11時00分 霧島山(新燃岳) 噴火予報 噴火警戒レベルを1「平常」に引下げ
毎日07時、17時 三宅島 火山ガス予報 島内の火山ガスの分布状況

表2 10月30日現在の噴火警報及び噴火予報等の発表状況

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード* 当該火山
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 口永良部島
レベル2(火口周辺規制) 浅間山、三宅島、桜島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島
火口周辺危険 硫黄島
噴火警報及び火山現象に関する海上警報 周辺海域警戒 福徳岡ノ場
噴火予報 レベル1(平常) 樽前山、有珠山、北海道駒ケ岳、岩手山、吾妻山、草津白根山、御嶽山、富士山、伊豆大島、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山(新燃岳)、霧島山(御鉢)
平常 上記以外の活火山

噴火警戒レベルは、その活用が地域防災計画等で予め定められており、レベル毎の防災対応をキーワードで示している。噴火警戒レベルを導入していない火山については、警戒事項をキーワードで示している。


図1  噴火警報発表中の火山

図1 噴火警報発表中の火山(10月30日現在)





【警報発表中の火山の活動状況及び警報事項】


浅間山 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 山頂火口の噴煙量はやや多い状態が続き、噴煙高度は火口縁上概ね200〜300mで推移した。また、夜間には高感度カメラ1)により微弱な火映が時々観測されている。
 火山性地震及び火山性微動はやや多い状態が続いている。
28日に行った現地調査では、二酸化硫黄放出量は一日あたり2,600〜2,900トン(前回10月16日、1,300〜1,600トン)と多い状態が続いている。
 GPSによる地殻変動観測では、7月初め頃から深部へのマグマ貫入を示すわずかな伸びの傾向がみられている。
 浅間山では、依然として火山活動が高まった状態が続いており、山頂火口から概ね2kmの範囲に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これらの地域では大きな噴石2)に警戒が必要である。風下側では、降灰及び小さな噴石2)にも注意が必要である。また、火山ガス放出量の多い状態が続いているので、風下側にあたる登山道等では火山ガスにも注意が必要である。


図3 浅間山 火山性地震の日別回数(2008年4月1日〜2008年10月30日)

1)長野県建設部佐久建設事務所の黒斑山設置カメラ、国土交通省利根川水系砂防事務所の山麓設置カメラ及び気象庁の追分カメラによる。
2)噴石については、大きさによる風の影響の程度の違いによって飛散範囲が大きく異なる。本文中「大きな噴石」とは、「弾道を描いて飛散する大きな噴石」のことであり、「小さな噴石」とは、それより小さく「風の影響を受ける小さな噴石」のことである。

三宅島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
 今期間、現地調査を行っていないが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されている。
 三宅島では、山頂火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、山頂火口周辺では噴火に対する警戒が必要である。また、火山ガス予報で予想される地域では火山ガスに対する警戒が必要である。降雨時には泥流にも注意が必要である。


硫黄島 [火口周辺警報(火口周辺危険)]

 独立行政法人防災科学技術研究所及び国土地理院の観測によると、地震活動は落ち着いた状態で経過しているが、2006年8月以降みられている島全体の隆起を示す地殻変動が継続している。
 硫黄島では、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、従来から小規模な噴火が発生した領域では噴火に対する警戒が必要である。


福徳岡ノ場 [噴火警報(周辺海域警戒)及び火山現象に関する海上警報]

 今期間、観測は行われなかった。なお、これまでの海上保安庁海洋情報部、第三管区海上保安本部及び海上自衛隊による上空からの観測で、福徳岡ノ場付近の海面には長期にわたり火山活動によるとみられる変色水等が確認されている。
 福徳岡ノ場では、引き続き小規模な海底噴火が発生すると予想されるので、周辺海域では噴火に対する警戒が必要である。


霧島山(新燃岳) [火口周辺警報(噴火警戒レベル1、平常)]←10月29日に噴火警戒レベル2(火口周辺規制)から引下げ

 8月22日の噴火発生以降、噴火は発生していない。火山性地震や火山性微動の発生も少なくなり、噴煙量も次第に減少していることから、火口周辺に影響を及ぼす噴火の可能性は低くなったと考え、29日に噴火予報を発表し噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(平常)に引き下げた。
 火口内及び西側斜面では引き続き噴気がみられており、火口内に影響する程度の噴出現象が発生する可能性があるので、火山灰の噴出等に警戒が必要である。

桜島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 山頂火口では、25日、29日及び30日にごく小規模な噴火が発生した。昭和火口では噴火は発生しなかったが、27日から30日にかけての夜間、高感度カメラ3)で捉えられる程度の微弱な火映が観測された。
 火山性地震及び火山性微動は少ない状態が続いている。桜島直下にマグマが新たに移動、上昇したことを示す地殻変動は観測されていない。
国土地理院のGPS観測によると、姶良(あいら)カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入によると考えられる長期的な膨張が続いている。
 桜島では、引き続き南岳山頂火口及び昭和火口から概ね1kmの範囲に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これらの地域では大きな噴石2)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び小さな噴石2)(火山れき4))にも注意が必要である。降雨時には泥流や土石流に注意が必要である。

3)九州地方整備局大隅河川国道事務所の黒神河原上流設置カメラ等による。
4)桜島では「火山れき」の用語が地元で定着していると考えられることから、付加表現している。

薩摩硫黄島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上概ね100〜300mで推移した。
 火山性地震はやや多い状態が続いている。
 薩摩硫黄島では、硫黄岳山頂火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、火口周辺では警戒が必要である。


口永良部島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)]←10月27日に噴火警戒レベル2(火口周辺規制)から引上げ

 9月以降、GPSによる地殻変動観測で新岳火口浅部の膨張を示す変化が続いている。また噴気や火山ガスの放出量も増加するなど、火山活動はさらに高まっていると考えられるため、27日に噴火警報を発表し噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げた。
 今後、火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生する可能性があるため、火口から概ね2kmの範囲では弾道を描いて飛散する大きな噴石2)に警戒が必要である。また、風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石2)にも注意が必要である。


諏訪之瀬島 [火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)]

 御岳(おたけ)火口では小規模な噴火が時々発生し、30日には18回と多く発生した。これらの噴火に伴う噴煙の高さは火口縁上500〜1,200mであった。十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、26日に集落(御岳の南南西約4km)で降灰が確認された。
 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 諏訪之瀬島では、御岳火口から概ね1kmの範囲に影響を及ぼす噴火が発生すると予想されるので、これらの地域では大きな噴石2)に警戒が必要である。


 上記以外の火山では、火山活動に特段の変化はなく、火口周辺に影響を及ぼす(この範囲に入った場合は生命に危険が及ぶ)噴火の兆候はみられない。





【参考】 噴火警報及び噴火予報と噴火警戒レベル等の対応表

警報・予報 噴火警戒レベルとキーワード 噴火警戒レベルを導入していない火山に対するキーワード
噴火警報 レベル5(避難) 居住地域厳重警戒または山麓厳重警戒
レベル4(避難準備)
火口周辺警報 レベル3(入山規制) 入山危険
レベル2(火口周辺規制) 火口周辺危険
噴火予報 レベル1(平常) 平常

※海底火山については、噴火警報(キーワード:周辺海域警戒)と噴火予報(キーワード:平常)で発表する。


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