2007年 No.22 火山の概況 (平成19年5月25日 〜 平成19年5月31日)

【噴火した火山】

桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)
昭和火口で小規模な噴火が時々発生した。
諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
26日に御岳火口から小規模な噴火が発生した。

【活発もしくはやや活発な状況の火山】

樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群では高温状態が続いている。
三宅島 [やや活発な状況]
噴煙活動は活発で、多量の火山ガスの放出が続いている。
硫黄島 [やや活発な状況]
大きな隆起の地殻変動はやや鈍化しながら継続している。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動はやや活発で、火山性地震はやや多い状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。

【その他の記事を掲載した火山】

御嶽山 [静穏な状況]←25日にやや活発な状況から引き下げ
火山活動は静穏な状況になっている。

【静穏な状況であるがデータに変化があった火山】

伊豆大島 [静穏な状況(レベル1)
島北部及び西方海域を震源とする地震が一時的にやや増加した。


図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山
図1  活動解説を掲載した各火山の今期間の活動状況


注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルを言う。

注2 記号の意味
 ▲:噴火した火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状況の火山
 ◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化のあった火山、もしくはその他記事を掲載した火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山。◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化があった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山。


● 樽前山 [やや活発な状況]

 29日に実施した現地観測では、A火口の温度は約540℃1)(前回2006年10月13日約530℃2))、B噴気孔群の温度は約340℃1)(前回2006年10月13日約390℃2))と依然として高温状態が続いていた。
 樽前山の火山活動はやや活発な状況が続いており、火口周辺では注意が必要である。
 なお、噴煙活動・地震活動は低調な状態が続いており、地殻変動に特段の変化はなかった。

 1)赤外線熱映像装置による。赤外熱映像装置は物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。
 2)産業技術総合研究所が熱電対温度計で観測。熱電対温度計はセンサーを直接熱源に当てて温度を測定する機器。


◇ 御嶽山 [静穏な状況]←25日にやや活発な状況から引き下げ

 昨年12月以降、火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続き、火山性微動も時々観測された。また、GPSによる地殻変動観測では御嶽山の地下の膨張を示すわずかな伸びの変化も見られるなど、火山活動はやや活発な状態が続いていた。しかし、最近は火山性地震および火山性微動ともに少ない状態が続き、GPSの伸びの変化もほぼ停止した状態で経過したことから、火山活動は静穏な状況になったと判断した。
 なお、三岳黒沢みたけくろさわの遠望カメラ(剣ヶ峰けんがみねの南東約14kmに設置)では、引き続きごく少量の噴気が時々観測された。


◇ 伊豆大島 [静穏な状況(レベル1)]

 25日から30日にかけて、島の西方海域および島北部で一時的な地震増加が見られた。
 最大の地震は、28日11時40分に発生したマグニチュード3)2.0(暫定値)で、伊豆大島町元町で震度1を観測した。また、島北部を震源とする地震で、震源に近い伊豆大島町岡田で震度1以上を9回観測した。
 これらの地震活動に伴って、体積歪ひずみ計4)や傾斜計5)に特段の変化は認められなかった。また、その他の観測データにも特段の変化はなく、火山活動は静穏な状況が続いている。
 伊豆大島西方海域では、これまでもしばしば地震の一時的な増加が見られており、最近では2007年5月22〜23日にも見られている。また、島北部では、2004年2月に一時的な地震増加が見られ、体積歪計4)で伸びの変化が認められている。

 3)マグニチュードは地震の規模を示す。資料中のマグニチュードは暫定値で、後日変更することがある。
 4)センサーで周囲の岩盤から受ける力による体積の変化をとらえ、岩石の伸びや縮みを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されることがある。
 5)火山活動による山体の傾きを精密に観測する機器。火山体直下へのマグマの注入等により変化が観測されることがある。


● 三宅島 [やや活発な状況]

 27日の02時40分と03時49分に空振6)を伴う低周波地震7)が発生した。これらの地震発生時の噴煙状況に特段の変化はなく、その後の現地調査でも降灰は確認されなかった。火山性地震の発生回数は多い状態が続いていたが、27日の低周波地震発生後、減少した。
 28日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は一日あたり1,400〜2,700t(前回23日、一日あたり2,300〜2,800t)と、依然として多量の火山ガスの放出が続いている。
 噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上概ね100mで推移した。
 三宅島では多量の火山ガスの放出が続いており、特に風下にあたる地区では火山ガスに対する警戒が必要である。また、雨による泥流にも注意が必要である。
 なお、火山性微動は観測されず、地殻変動に特段の変化はなかった。

 6)噴火などで発生した空気の急激な圧力変化が大気中を周囲に伝わる現象。
 7)周期の長い波を特徴とした地震。三宅島では、低周波地震が発生した場合には、山頂火口から火山灰噴出を伴うことがある。

 

● 硫黄島 [やや活発な状況]

 国土地理院及び防災科学技術研究所の観測によると、島内の地震活動は落ち着いた状態となっているが、昨年8月頃始まった島北部の元山もとやま地域付近での大きな隆起の地殻変動は、やや鈍化しながら継続している。
 硫黄島の火山活動はやや活発な状況が続いており、従来から小規模な水蒸気爆発が見られていた領域では、今後も注意が必要である。


▲ 桜島 [比較的静穏な噴火活動(レベル2)]

 昭和火口では、引き続き灰白色の噴煙が火口上約1,200mまで上がる小規模な噴火が時々発生したほか、噴煙高度が火口上500m程度のごく小規模な噴火が断続的に発生した。
 昭和火口で、高感度カメラ8)で捉えられる程度の微弱な火映9)が25〜27日に観測された(28日及び29日は見通しが悪く火映の有無は不明)。
 南岳山頂火口では噴火はなかった。
 火山性地震と火山性微動は、消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。国土地理院のGPS観測によると、姶良あいらカルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部へのマグマ注入による長期的な膨張傾向が続いている。
 桜島では噴火活動が継続しており、南岳山頂火口及び昭和火口から半径2km以内では注意が必要である。

 8)国土交通省九州地方整備局大隅河川国道事務所が昭和火口の東約3kmに設置。
 9)火山ガスや上昇した溶岩により火口内が高温になった場合に、火口上の雲や噴煙が明るく照らされる現象。


● 薩摩硫黄島 [やや活発な状況 (レベル2)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上概ね100mで推移した。火山性地震はやや多い状態が続いている。
 薩摩硫黄島の火山活動はやや活発な状況が続いており、硫黄岳山頂火口周辺では注意が必要である。


● 口永良部島 [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震及び火山性微動は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。
 口永良部島の火山活動はやや活発な状況が続いており、新岳しんだけ火口周辺では注意が必要である。
 なお、遠望カメラ(新岳火口の北西約3kmに設置)による観測では、新岳火口周辺の噴気等は観測されなかった。地殻変動に特段の変化はなかった。


▲ 諏訪之瀬島 [活発な状況 (レベル3)

 十島としま村役場諏訪之瀬島出張所によると、26日に御岳おたけ火口で小規模な噴火が発生した。
 諏訪之瀬島の火山活動は活発な状況が続いており、御岳火口から半径2km以内では注意が必要である。
 なお、火山性地震及び火山性微動は少ない状態で経過した。





表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
御 嶽 山 火山観測情報第24号
5月25日
14:00
最近は地震回数および火山性微動は少なく、御嶽山の地下の膨張を示す伸びの変化もほぼ停止したことから火山活動は静穏な状況になったと判断した。
三 宅 島 火山観測情報第21号
5月25日
16:30
最近の火山活動評価。5月18日〜5月25日16時までの活動状況。23日に行った二酸化硫黄放出量観測の結果。


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