2006年 No.31 火山の概況 (平成18年7月21日 〜 平成18年7月27日)

【噴火が観測された火山】

桜島 [活発な状況(レベル3)
南岳山頂火口で時々噴火が発生した。
諏訪ノ瀬島 [活発な状況(レベル3)
7月30日に爆発的噴火が発生したほか、7月28日〜8月1日にかけて小規模な噴火が時々発生した。

【活動が活発もしくはやや活発な状態である火山】

雌阿寒岳 [やや活発な状況]
ポンマチネシリ山頂の赤沼06火口群や北西斜面06噴気孔列で噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
十勝岳 [やや活発な状況]
62-2火口では高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いている。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
三宅島 [やや活発な状況]
噴煙活動は活発で、多量の火山ガスの放出が続いている。
阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)
中岳第一火口内の熱活動は低調な状態で経過した。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震のやや多い状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いているが、今期間は少なかった。

図1  今期間掲載した各火山の活動状況
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山


注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルである。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山
 ◇:静穏な状態であるが観測データに変化のあった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●(注2参照)に該当する火山について掲載する。
 その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山。◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化があった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山。

● 雌阿寒岳  [やや活発な状況]

 ポンマチネシリ山頂の赤沼06火口群や北西斜面06噴気孔列の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上100〜200mで推移した。地震活動は低調な状態が続いており、火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上100〜200mで推移した。噴煙の活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。地震活動は低調な状態が続いている。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はなかった。7月30日に実施した観測では、A火口の最高温度は約490℃1)(前回6月1日 約510℃1))であり、火口内の熱的な状態に変化はなく依然として高温の状態が続いていた。地震活動は低調な状態が続いているが、7月27日と7月31日に一時的にやや増加した。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。

1) 7月30日は赤外熱映像装置、6月1日は赤外放射温度計による。これらの観測装置は物体が放射する赤外線を感知して温度分布を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上概ね200mで推移した。今期間、山麓に設置した高感度カメラ2)では火映は観測されなかった。
 火山性地震の回数は1日あたり6〜14回とやや少ない状態で経過した。火山性微動は観測されなかった。傾斜計及びGPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。

2) 気象庁及び国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所が設置。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙高度は火口縁上100〜300mで推移した。
 8月3日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり900〜1,400トン(前回7月27日1,500〜2,500トン/日)と依然として多量の火山ガスの放出が続いている。
 火山性地震の回数は1日あたり7〜69回と前期間(1日あたり46〜116回)に比べ減少し、期間の後半は少ない状態で経過した。7月31日07時45分に発生した高周波地震で三宅村神着、三宅村坪田で震度1を観測した。地震発生時の噴煙の状況は雲のため確認できなかったが、その他の観測データに特段の変化はなかった。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)

 8月3日に行った現地観測によると、中岳第一火口の湯だまり3) の量は10割(前回7月27日 10割)、表面温度4) は58℃(前回 7月27日 60℃)で、中岳第一火口内の熱活動は低調な状態で経過した。
 火山性連続微動の振幅は小さい状態が続いている。孤立型微動及び火山性地震の発生状況、噴煙活動、地殻変動等その他に特段の変化はなかった。

3) 活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度の上昇や湯量の減少がみられ、その過程で湯だまり内で熱湯が沸き上がる噴湯現象や土砂を噴き上げる土砂噴出現象が起こり始めることが知られている。
4) 赤外放射温度計による。赤外放射温度計は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


▲ 桜島  [活発な状況(レベル3)]

 昭和火口では噴火は発生しなかった。南岳山頂火口ではごく小規模な噴火が時々発生し、7月30日と8月2日には噴煙の高さがそれぞれ火口縁上1,000m、1,100mに達した。
 火山性地震及び火山性微動はやや多い状態が続いている。GPSなどによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 硫黄岳山頂火口の噴煙活動はやや活発な状態が続いており、噴煙の最高高度は火口縁上600mであった。火山性地震はやや多い状態が続いている。火山性微動は観測されなかった。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 昨年7月以降、火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。今期間、火山性地震の回数は1日あたり2〜7回と少なく、火山性微動は観測されなかった。監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。


▲ 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 7月30日に爆発的噴火が観測されたほか、7月28日〜8月1日にかけて小規模な噴火が時々発生した。十島村役場諏訪之瀬島出張所によると、7月28日〜8月1日に火山灰を含む噴煙が確認され、噴煙の最高高度は火口縁上800mであった。また集落(御岳の南南西4km)で降灰が観測された。火山性地震及び火山性微動は7月30日までやや多かったが、7月31日以降は少ない状態で経過した。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
浅 間 山 火山観測情報第30号 28日16:00 21日〜28日15時の活動状況。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第209〜215号
(1日1回発表)
28日〜1日、
3日16:30
2日16:40
前日16時〜当日16時の活動状況及び上空の風の予想。23日から地震回数がやや多い状態となっていたが、28日以降は少ない状態となった。
桜島 火山観測情報第26号 28日15:30
活発な火山活動が継続。24日〜28日15時の状況、防災上の注意事項。レベルは3。
火山観測情報第27号 31日15:30
活発な火山活動が継続。21日〜24日15時の状況、防災上の注意事項。レベルは3。


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