2006年 No.24 火山の概況 (平成18年6月9日 〜 平成18年6月15日)

【噴火が観測された火山】

桜島 [活発な状況(レベル3)]←12日に比較的静穏な噴火活動(レベル2)から引き上げ
昭和火口付近の新たな火口及び南岳山頂火口で活発な噴火活動が続いている。
諏訪之瀬島 [活発な状況(レベル3)
9日および10日に噴火が発生した。

【活動が活発もしくはやや活発な状態である火山】

雌阿寒岳 [やや活発な状況]←12日に活発な状況から引き下げ
ポンマチネシリ山頂の赤沼火口や北西側斜面ではやや活発な噴煙活動が続いている。
十勝岳 [やや活発な状況]
噴煙活動が活発で、62-2火口の高温状態が続いていると推定される。
樽前山 [やや活発な状況]
A火口及びB噴気孔群の高温状態が続いていると推定される。
浅間山 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動はやや活発で、火山性地震及び火山性微動のやや多い状態が続いている。
三宅島 [やや活発な状況]
噴煙活動は活発で、多量の火山ガスの放出が続いていると推定される。
阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)
中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いている。
薩摩硫黄島 [やや活発な状況(レベル2)
噴煙活動のやや活発な状態が続いている。
口永良部島 [やや活発な状況(レベル2)
火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている。


図1  今期間掲載した各火山の活動状況
図1  各火山の今期間の火山活動度レベル及び記事を掲載した火山


注1 本資料で示すレベルは、火山活動度レベルを導入した火山におけるレベルである。

注2 記号の意味
 ▲:噴火が観測された火山
 ●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山
 ◇:静穏な状態であるが観測データに変化のあった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山
 ①②等の丸付き数字:火山活動度レベル

注3 記事は、▲、●(注2参照)に該当する火山について掲載する。
 その他の火山については、特記事項のある場合に掲載する。



【各火山の活動解説】

 各記号の意味は次のとおり。▲:噴火が観測された火山。●:活動が活発もしくはやや活発な状態である火山。◇:静穏な状態であるが観測データ等に変化があった火山、もしくはその他の記事を掲載した火山。

● 雌阿寒岳  [やや活発な状況]←12日に活発な状況から引き下げ

 3月21日の噴火以降活発な状態であった赤沼06火口群1)や北西斜面06噴気孔列1)の噴煙活動は、次第に低下してやや活発な状態となっている。期間中の噴煙の高さは火口縁上100〜200mで推移した。
 火山性地震は1日あたり4回以下で推移し、地震活動は低調な状態が続いている。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化は観測されなかった。

1) 2006年3月21日の噴火で形成された、ポンマチネシリ山頂の赤沼火口内北西部の火口群を「赤沼06火口群」、赤沼火口外側の北西側斜面の噴気孔列を「北西斜面06噴気孔列」と呼ぶ。


● 十勝岳  [やや活発な状況]

 62-2火口の噴煙活動は活発な状態が続いており、噴煙の高さは火口縁上100〜300mで推移した。噴煙の活動に特に変化はみられていないことから、同火口の熱活動にも大きな変化はなく、高温の状態が続いていると推定される。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 樽前山  [やや活発な状況]

 A火口及びB噴気孔群の噴煙の状況に特に変化はみられていないことから、これらの火口の熱活動にも大きな変化はなく、依然として高温の状態が続いていると推定される。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 浅間山  [やや活発な状況 (レベル2)]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね100mで推移した。今期間、火映は観測されなかった。
 6月14日に行った火山ガス観測では、二酸化硫黄の放出量は1日あたり300〜900トンと、依然としてやや多い状態が続いている(前回5月30日200〜800トン/日)。
 火山性地震及び火山性微動の回数はやや多い状態が続いており、それぞれ1日あたり19〜48回、0〜3回であった。傾斜計およびGPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 三宅島  [やや活発な状況]

 山頂火口からは白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上概ね200〜300mで推移した。
 今期間は火山ガス放出量の観測は行わなかったが、三宅村によると山麓では時々高濃度の二酸化硫黄が観測されており、噴煙活動に大きな変化はみられないことから、依然として多量の火山ガスの放出が続いているものと推定される。
 火山性地震の回数は1日あたり5〜22回で経過した。火山性微動は観測されなかった。GPSによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。


● 阿蘇山 [やや活発な状況(レベル2)

 中岳第一火口内の熱活動はやや活発な状態が続いている。
 13日に行った現地観測によると、中岳第一火口の湯だまり2)の量は約5割で前回(前回6日約6割)に比べ減少した。表面温度3)は70℃前後の高い状態が続いている(今回68℃;前回6日76℃)。また、高さ1〜2mの小規模な土砂噴出も確認された。
 火山性連続微動の振幅は小さい状態が続いている。孤立型微動及び火山性地震の発生状況、噴煙活動、地殻変動等その他の観測データに特段の変化はなかった。

2) 湯だまり:活動静穏期の中岳第一火口内には、地下水などを起源とする約50〜60℃の緑色のお湯がたまっており、これを湯だまりと呼んでいる。火山活動が活発化するにつれ、湯だまり温度が上昇・噴湯して湯量の減少がみられ、その過程で土砂を噴き上げる土砂噴出現象などが起こり始めることが知られている。
3)赤外放射温度計による。赤外放射温度計は、物体が放射する赤外線を感知して温度を測定する測器であり、熱源から離れた場所から測定することができる利点があるが、測定距離や大気等の影響で実際の熱源の温度よりも低く測定される場合がある。


▲ 桜島  [活発な状況 (レベル3)]←12日に比較的静穏な噴火活動(レベル2)から引き上げ

 4日(前期間)から、南岳東斜面標高約800mの昭和火口付近で新たな噴火が始まり、その後も高さ1,000m前後の噴煙を上げる噴火が時々発生している。12日に開催された第104回火山噴火予知連絡会で、桜島の火山活動を検討した結果、昭和火口付近の新たな火口の噴火活動は活発化しており、今後、新たな火口から、従来の南岳山頂火口で発生していた噴火と同じような噴火が発生する可能性が高くなってきたと考えられるとの評価がとりまとめられた。このことから12日に桜島の火山活動度レベルを2から3に引き上げた。
 今期間、新たな火口では火口上1,000〜1,400mまで上がる小規模な噴火が間欠的に発生したほか、ごく小規模な噴火が断続的に発生した。昭和火口付近に直径50〜80mとなる本格的な火口が形成されつつある(図2)。また、南岳山頂火口でも時折噴火が発生しており、6月12日には噴煙が2000mに上がる爆発的噴火が発生した。
 火山性地震や火山性微動はやや多い状態が続いている。15日07時01分には南岳火口直下で振幅の大きなA型地震4)が発生した。GPSなどによる地殻変動観測では特段の変化はなかった。

4)火山性地震には、通常の構造性地震と同じようなP波やS波が明瞭で高周波の波動からなるA型地震と、P波やS波が不明瞭な低周波のB型地震がある。桜島のA型地震はマグマ等の貫入に伴い地殻が破壊されるために発生していると考えられ、B型地震はマグマ内の火山ガスの発泡等によって火道内で発生する地震とされている。


図2 桜島 昭和火口付近の新たな火口の状況(左:7日(前期間)右:13日 東側山麓より撮影)昭和火口付近では本格的な火口が形成しつつある。

図2 桜島 昭和火口付近の新たな火口の状況(左:7日(前期間)右:13日 東側山麓より撮影)昭和火口付近では本格的な火口が形成しつつある。

● 薩摩硫黄島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 噴煙活動は依然としてやや活発で、硫黄岳山頂火口から白色噴煙が連続して噴出しており、噴煙高度は火口縁上300〜800mで推移した。火山性地震及び火山性微動は少ない状態で経過している。


● 口永良部島  [やや活発な状況 (レベル2)]

 火山性地震は消長を繰り返しながらやや多い状態が続いている(今期間30回、前期間27回)。今期間、火山性微動は観測されず、監視カメラ(新岳の北西約4kmに設置)による観測では噴気等は認められなかった。


● 諏訪之瀬島  [活発な状況 (レベル3)

 今期間、爆発的噴火はなかったが、9日と10日に小規模な噴火があった。十島村役場諏訪之瀬島出張所によれば、9日と10 日に少量の火山灰を含む噴煙が確認された。なお、集落(御岳の南南西4km)で降灰はなかった。また、今期間、火山性微動がやや増加し、13日には火山性連続微動が発生したが、火山性地震は少ない状態が続いている。




表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表1 最近1か月に記事を掲載した火山及び各火山のレベル

表2 火山情報発表状況
火 山 名 情報の種類及び号数 発表日時 概 要
雌阿寒岳 火山観測情報第33号 12日18:35 火山噴火予知連絡会での評価。活発な状態からやや活発な状態に引き下げ。定期的な発表は本号をもって終了。
浅 間 山 火山観測情報第23号 9日16:00 2日〜9日15時の活動状況。レベルは2。
三 宅 島 火山観測情報
第160〜166号
(1日1回発表)
9日〜11日、13日〜15日
16:30
12日
18:35
前日16時〜当日16時の活動状況及び上空の風の予想。
桜島 火山観測情報第4号 9日16:10 9日の昭和火口付近の噴火の状況。レベルは2。
火山観測情報第5号 9日21:20 9日18時26分と19時45分に桜島の昭和火口付近で小規模な噴火が発生。レベルは2。
臨時火山情報第1号 12日18:35 火山噴火予知連絡会での評価。桜島の昭和火口付近の噴火活動が活発化し、今後、従来の南岳山頂火口で発生していた噴火と同じような噴火が発生する可能性が高い。レベルを2から3に引き上げ。
火山観測情報第6号 13日17:00 活発な噴火活動が継続。12日15時〜13日15時の状況及び上空の風の予想。レベルは3。
火山観測情報第7号 14日17:00 活発な噴火活動が継続。13日15時〜14日15時の状況及び上空の風の予想。レベルは3。
火山観測情報第8号 15日16:40 活発な噴火活動が継続。14日15時〜15日15時の状況及び上空の風の予想。レベルは3。


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