雲仙岳 有史以降の火山活動

 1663、1792年に溶岩の流出、1990~1996年には、溶岩ドームの形成とドームの崩壊に伴って火砕流が発生した。 また、1990~1996 年の噴火前は、しばしば橘湾(千々石湾)を震源とする群発地震(有感地震を含む)が発生した。

有史以降の火山活動(▲は噴火年を示す)

年代 現象 活動経過・被害状況等
▲1663(寛文3)年 マグマ噴火 12月。噴火場所は普賢岳の北北東900m。
普賢岳の北北東900mの飯洞岩(はんどういわ)から北方へ溶岩流出(古焼溶岩)。溶岩流の幅は約0.15km、全長約1kmで、量は約5×10 6m 3 。 翌年春には、普賢岳南東山腹600mの低地、九十九(つくも)島火口より出水、赤松谷に沿って安徳川原へ氾濫。死者30余名。
▲1792(寛政4)年 マグマ噴火 2月10日。噴火場所は地獄跡火口。
1791年11月から地震、12月には小浜で山崩れによる死者2名。 2月10日普賢岳で鳴動、山頂付近の地獄跡火口から噴気、土砂を噴出。 2月28日穴迫谷(あなさこだに)の琵琶の首から噴煙、土砂噴出。 3月1日に新焼溶岩流出開始(約2ヶ月続く)。22日には峰の窪からも噴煙、溶岩も流出し、新焼溶岩と合流。新焼溶岩は幅220~360m、全長2.7km、量約2×10 7m 3。 3月25日には古焼頭からも噴煙。その後ときどき地震あり。 5月21日強い地震と同時に眉山(当時前山)が大崩壊を起し、有明海に流れ込み津波発生。 このため島原及び対岸の肥後・天草に被害、死者約15000名、「島原大変肥後迷惑」、崩壊量4.4×10 8m 3。 その後地震・鳴動しばらく続く。6、7月時々噴火、降灰。
1798(寛政10)年 噴煙 11~12月。
1922(大正11)年 地震 「島原地震」:12月8日。
強震2回(M6.9、6.5)、前震11回、余震1350回、地割れ、噴砂、山崩れ発生、死者27名、家屋倒壊600棟余。
1929(昭和4)年 地震 地震群発:6月4日、10月25~30日、12月30日。
1934(昭和9)年 地震 地震群発:10月15日。
1935(昭和10)年 地震 地震群発:9月20日。
1940(昭和15)年 地震 地震群発:5月2日。
1951(昭和26)年 地震 地震群発:2月。2月15日から約1週間続く。
1954(昭和29)年 地震 地震群発:10月21日。
1955(昭和30)年 地震 地震群発:8月22日。
1958(昭和33)年 地震 地震群発:9月9~13日。
1959(昭和34)年 地震 地震群発:9月30日。
1962(昭和37)年 地震 地震群発:4月。
1966(昭和41)年 地震 地震群発:7月15~17日。
1968(昭和43)年 地震 地震群発:3月15~16日。
土砂噴出 8月2日。雲仙温泉の八幡地獄で約10mの高さの土砂噴出。
1969(昭和44)年 地震 地震群発:7月1日、7月27~28日、8月21日、9月24~25日。
1970(昭和45)年 地震 地震群発:6月2~4日、7月10~12日、7月14~17日、8月8~11日、10月18日。
1971(昭和46)年 地震 地震群発:2月15~16日、4月12~13日、11月4~5日。
1972(昭和47)年 地震 地震群発:1月5日、2月9日、3月26~27日、7月14日、8月22~23日、10月4~5日。
1973(昭和48)年 地震 地震群発:3月14~15日、5月31日~6月3日、7月25日、8月10~11日、8月25~28日、11月3~12日、12月26~30日。
1974(昭和49)年 地震 地震群発:1月7~9日、1月24日~28日、4月26日。
1975(昭和50)年 地震 地震群発:5月6~8日。
噴気 10月普賢岳の東北東2.8kmの板底地区で新しい噴気を発見、少なくとも1年以上前から出現していた模様。
1976(昭和51)年 地震 地震群発:6月23~25日。
1977(昭和52)年 地震 地震群発:11月11~13日。
1978(昭和53)年 地震 地震群発:1月4日、12月17日、12月25~26日。
1979(昭和54)年 地震 地震群発:8月1日~2日。
1980(昭和55)年 地震 地震群発:8月7日、11月7~8日。
1981(昭和56)年 地震 地震群発:11月18~19日。
1982(昭和57)年 地震 地震群発:1月17日、6月7~11日。
1983(昭和58)年 地震 地震群発:6月14日。
1984(昭和59)年 地震 地震群発:5~11月。特に8月6日~9月9日は有感地震417回、最大地震は6日17:30、M5.7、雲仙岳測候所で震度4、6日17:38、M5.0、雲仙岳測候所で震度5。
1985(昭和60)年 地震 地震群発:5月19日、5月30~31日、6月1~4日、12月6日。
1988(昭和63)年 地震 地震群発:5月26~27日。
1989(平成元)年 地震 地震群発:11月21~24日。12月から翌年1月にかけて雲仙西麓~北西麓で微小地震活動。
▲1990(平成2)年 水蒸気噴火 7月4日より断続的に微動を観測。7月24~25日地震群発(初めて西山麓で群発)、最大地震は24、25日、雲仙岳測候所で震度3。 10月23日地震群発、最大地震は10月23日12:27、M2.5、雲仙岳測候所で震度3。11月17日噴火、17日03:22より連続微動。未明、普賢岳山頂東側の地獄跡火口、九十九島火口の2カ所から噴火。 周辺降灰。噴煙の最高は400m。11月20日地震群発、最大地震は11月20日18:16、M3.9、雲仙岳測候所で震度3。11月23日地震群発。
▲1991(平成3)年 マグマ噴火 2月12日屏風岩火口噴火。3~5月地獄跡火口と屏風岩火口で頻繁に小噴火。 5月12日から初めて山頂部で群発地震開始、次第に増加。5月20日地獄跡火口に溶岩ドームの出現を確認。溶岩ドームが次第に成長し、24日火砕流開始、以後頻繁に火砕流発生。 6月3日火砕流災害(死者不明43人、建物179棟被害)。 6月8日火砕流災害(建物207棟)。 9月15日火砕流災害(建物218棟)。このほか雨による土石流災害あり。 5月26日火砕流に対する避難勧告、6月7日警戒区域設定、以後次第に拡大し、最大時の9月には避難対象人口約11000人。
▲1992(平成4)年 マグマ噴火 引き続き溶岩ドームの成長・崩落・火砕流発生。8月8日火砕流災害(建物17棟)。このほか雨による土石流災害あり。避難勧告・警戒区域継続、年末時点の避難対象人口約2000人。
▲1993(平成5)年 マグマ噴火 引き続き溶岩ドームの成長・崩落・火砕流発生。6月23~24日火砕流災害(死者1人、建物187棟)。このほか雨による土石流災害あり。 3~4月山頂部で北西へ押し出す地盤変動、11月~翌年1月南西へ押し出す地盤変動。避難勧告・警戒区域継続、年末時点の避難対象人口約3600人。
▲1994(平成6)年 マグマ噴火 引き続き溶岩ドームの成長・崩落・火砕流発生。前年11月に始まった南西方向押出し変動は1月上旬に終了。 ついで1月下旬から北西方向押出し変動開始、2~3月変動続いた。2~4月北々西方向にも火砕流。8~9月南東・南西方向へ火砕流。年を通じて溶岩噴出量次第に低下。
▲1995(平成7)年 マグマ噴火 1月下旬から地下からの溶岩の供給による溶岩ドームの変化がなくなる。2月11日を最後に火砕流がなくなる。ドーム直下の地震も2月から急減。1991年からの一連の溶岩噴出は停止した。 1991~95年の溶岩噴出量2億m3(溶岩換算)、火砕流回数約9400回(地震計による)であった。
▲1996(平成8)年 マグマ噴火 2、5月に火砕流が発生。火山性地震の発生は、噴火活動の活発時と比べると激減し、年間の総回数は150回であった。 9月6日に橘湾を震源とする地震で震度2の地震を1回観測した。火山性微動は、1、3、6月に各1回発生した。3月24日は傾斜変動を伴うものであった。
1997(平成9)年 火山性微動 5、10、11月に発生し、計4回観測した。11月11日と13日に発生したものは、傾斜変動を伴うものであった。
1998(平成10)年 火山性微動 1、2、11月に発生し、計3回観測した。1月と11月に発生した微動は傾斜変動を伴うものであった。
1999(平成11)年 火山性微動 5、11月に発生し、各1回観測した。
2000(平成12)年 火山性微動 3、4、6、12月に各1回発生した。3月28日に発生した微動は、普賢岳方向が高くなる傾斜変動を伴った。 GPS観測、光波測距観測およびセオドライト観測では平成新山が自重沈降していると思われる変動は鈍化しながら継続。
2001(平成13)年 地震、火山性微動 火山性地震は、1月18~20日に平成新山の西約5km、深さ5km付近を震源とする地震が増加したが、その他の月は少なかった。火山性微動は、3月に3回、4月に2回発生した。
2002(平成14)年 火山性微動 4月19日に普賢岳方向が僅かに高くなる傾斜変動を伴う火山性微動が発生し、直後に火山性地震が22回と一時的に増加した。火山性微動は、6、7月に各1回発生した。
2003(平成15)年 火山性微動 2月に1回、4月に3回発生した。
2004(平成16)年 火山性微動 5月に1回発生した。
2005(平成17)年 火山性微動 3月に1回発生した。
2006(平成18)年 火山性微動 10月に1回発生した。

日本活火山総覧(第4版)(気象庁編、2013)による。
噴火イベントの年代、噴火場所、噴火様式等については、(国研)産業技術総合研究所の活火山データベース(工藤・星住, 2006)を参考に、文献の追記を行った。
なお、噴出物量については、降下火砕物、火砕流、火砕サージ、溶岩流、溶岩ドーム等を加えた重量(単位は「ton」)またはマグマ噴出量(DRE km3)で記載している。また、噴出物量が既知である場合については、産業技術総合研究所作成の活火山データベースから参照し、VEI(火山爆発指数)も付している。詳しくはこちらを参照のこと。



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