体積ひずみ波形解析のページの見方

体積ひずみ計とは

気象庁は「南海トラフ地震に関連する情報」の発表にあたり、調査を開始する対象となる現象を判断する際に用いるひずみ計を東海地域に設置しています。 これは地殻変動を監視するためのものですが、 地震による変化のような数秒から数十秒周期の帯域の変化もとらえることができます。 さらにこの変化を用いて地震の規模(マグニチュード)を推定することも可能です。 現在、地震の規模推定に用いているのは、体積ひずみ計の18点です(下図)。

体積ひずみ計配置図

体積ひずみ計による地震波形

2006年11月15日と2007年1月13日に発生した千島列島沖の地震により、 藤枝花倉観測点で観測されたひずみ波形を示します。

2006年、2007年の千島沖の地震によるひずみ波形

このままでは、地震波の伝播過程で反射・変換された様々な相が含まれ、解析が困難であるため、 マグニチュード推定に最適な周波数帯を取り出して解析しています。 これは概ね表面波の周期となります。

理論波形の計算

次に震源要素を気象庁CMT解として理論波形を計算します。 これは1次元地球構造モデルPREM(注)の固有モード周期45~3300秒の重ね合わせによって求めています。

いくつかのMwで計算したひずみ波形 /

注.PREM(Preliminary Reference Earth Model):地球の地下構造を説明する標準的なモデル

マグニチュードの推定

最大振幅発現前後の観測波形を比較し、もっとも合いの良い理論波形を選び出します。 その理論波形のマグニチュードが、ひずみ計を用いたもっとも妥当な地震の規模ということになります。

振幅の比較(2006年) 振幅の比較(2007年)

この2つの事例では、2006年の地震がMw8.2,2007年の地震がMw8.1と推定されます。

観測波形と理論波形の比較

体積ひずみ波形解析の特徴

地震計による観測は、地震計の周波数特性や振幅の飽和などの現象のため、 規模の大きな地震のマグニチュードを正しく評価できないことがあります。 一方、ひずみ計のセンサーは地震計と異なり、周波数による特性の変化がなく、規模による飽和もしないため、 大きな地震のマグニチュードも正しく推定することができると言われています。

なお、ひずみ計による解析では、表面波の相をマグニチュード推定に使うため、 表面波のほとんど発生しない深発地震などでは評価できない場合が多いです。

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