平成22年2月27日のチリ中部沿岸の地震で発表した津波警報・注意報について
地震の概要
平成22年(2010年)2月27日15時34分(日本時間)、チリ中部沿岸でMw8.8(Mw は気象庁によるモーメントマグニチュード)の地震が発生した。この地震は、南米プレートとその下に沈みこむナスカプレートの境界で発生し、発震機構(気象庁CMT解)は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。(地震の詳細は、平成22年2月地震・火山月報(防災編)を参照)
震源時刻(日本時間) | 震央地名 | 緯度 | 経度 | 深さ | M | Mw |
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2010年2月27日 15時34分 | チリ中部沿岸 | 南緯36度07.3分 | 西経72度53.8分 | 23km | 8.5 | 8.8 |
今回の地震の震央分布図と発震機構解(気象庁CMT解)
表示した左図の震央は、1960年1月1日~2010年2月28日、M5.0以上、深さ200km以浅の地震である。右図の震央は左図の青枠を拡大したものである。震源は米国地質調査所[USGS]による。今回の地震のMwは気象庁による。
発表した津波警報・注意報の概要
この地震に対して発表した津波警報・注意報および主な地震情報は、以下のとおりである。
発表時刻 | 事象 | 概要 | |
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地震発生(Mw8.8) | |||
地震情報の発表 | 日本への津波の有無については調査中 | ||
地震情報の発表 |
チリ:タルカワノ(1.2m)、バルパライソ(1.3m)で津波を観測(PTWCによる) 日本への津波の有無については調査中 |
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地震情報の発表 |
発震機構解:東西方向に圧力軸を持つ逆断層型 日本への津波の有無については調査中 |
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地震情報の発表 |
チリ:タルカワノ(2.3m)、バルパライソ(1.3m)、コキンボ(1.3m)、コラル(0.9m)、アンクド(0.6m)、アントファガスタ(0.5m)で津波を観測(PTWCによる) 日本への津波の有無については調査中 |
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地震情報の発表 |
チリ:タルカワノ(2.3m)、バルパライソ(1.3m)、コキンボ(1.3m)、コラル(0.9m)、アンクド(0.6m)、アントファガスタ(0.5m)、イースター島(0.4m) エクアドル:ガラパゴス諸島バルトラ島(0.3m)で津波を観測(PTWCによる) 日本への津波の有無については調査中 |
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地震情報の発表 |
チリ:タルカワノ(2.3m)、バルパライソで(1.3m)、コキンボ(1.3m)、コラル(0.9m)、アンクド(0.6m)、アントファガスタ(0.5m)、イースター島(0.4m) 仏領マルキーズ諸島:ヒバオア島(1.8m)で津波を観測(PTWCによる) 日本への津波の有無については調査中 |
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地震情報の発表 |
チリ:タルカワノ(2.3m)、バルパライソ(1.3m)、コキンボ(1.3m)、コラル(0.9m)、アンクド(0.6m)、アントファガスタ(0.5m)、イースター島(0.4m) エクアドル:ガラパゴス諸島バルトラ島(0.3m) 仏領マルキーズ諸島:ヒバオア島(1.8m) クック諸島:ラロトンガ島(0.3m)で津波を観測(PTWCによる) 太平洋の広域に津波発生の可能性あり 日本への津波の有無については調査中 |
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地震情報の発表 |
チリ:タルカワノ(2.3m)、バルパライソ(1.3m)、コキンボ(1.3m)、コラル(0.9m)、アンクド(0.6m)、アントファガスタ(0.5m)、イースター島(0.4m) エクアドル:ガラパゴス諸島サンタクルス島(0.7m)、バルトラ島(0.3m) 仏領マルキーズ諸島:ヒバオア島(1.8m) クック諸島:ラロトンガ島(0.3m) 米領サモア:パゴパゴ(0.7m) サモア:アピア(0.2m) 米国:ハワイ州ホノルル(0.2m)、カフルイ(1.0m)で津波を観測(PTWCによる) 日本への津波の有無については調査中 |
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地震情報の発表 | 日本の太平洋沿岸では、1~3m程度の津波が予想されるので警戒 チリ:タルカワノ(2.3m)、バルパライソ(1.3m)、コキンボ(1.3m)、コラル(0.9m)、アンクド(0.6m)、アントファガスタ(0.5m)、イースター島(0.4m) エクアドル:ガラパゴス諸島サンタクルス島(0.7m)、バルトラ島(0.3m) 仏領マルキーズ諸島:ヒバオア島(1.8m) クック諸島:ラロトンガ島(0.3m) 米領サモア:パゴパゴ(0.7m) サモア:アピア(0.2m) 米国:ハワイ州ホノルル(0.2m)、カフルイ(1.0m)で津波を観測(PTWCによる) |
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津波警報・注意報の発表 | 津波警報(大津波): 青森県太平洋沿岸、岩手県、宮城県 津波警報(津波): 北海道太平洋沿岸東部、北海道太平洋沿岸中部、北海道太平洋沿岸西部、 青森県日本海沿岸、福島県、茨城県、千葉県九十九里・外房、千葉県内房、東京湾内湾、伊豆諸島、小笠原諸島、相模湾・三浦半島、 静岡県、愛知県外海、伊勢・三河湾、三重県南部、淡路島南部、和歌山県、岡山県、徳島県、愛媛県宇和海沿岸、高知県、有明・八代海、大分県瀬戸内海沿岸、大分県豊後水道沿岸、宮崎県、鹿児島県東部、種子島・屋久島地方、奄美諸島・トカラ列島、鹿児島県西部、沖縄本島地方、大東島地方、宮古島・八重山地方 津波注意報: 北海道日本海沿岸南部、オホーツク海沿岸、陸奥湾、大阪府、兵庫県瀬戸内海沿岸、広島県、香川県、愛媛県瀬戸内海沿岸、山口県瀬戸内海沿岸、福岡県瀬戸内海沿岸、福岡県日本海沿岸、長崎県西方、熊本県天草灘沿岸 →津波警報・注意報発表予報区(地図、png形式) |
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津波観測情報の発表 | 南鳥島で0.1mの第1波(12時43分)と最大の高さ(12時48分)を観測 | ||
津波警報・注意報(大津波を津波へ切り替え)の発表 |
津波警報(津波): 青森県太平洋沿岸、岩手県、宮城県、北海道太平洋沿岸東部、北海道太平洋沿岸中部、北海道太平洋沿岸西部、青森県日本海沿岸、福島県、茨城県、千葉県九十九里・外房、千葉県内房、東京湾内湾、伊豆諸島、小笠原諸島、相模湾・三浦半島、静岡県、愛知県外海、伊勢・三河湾、三重県南部、淡路島南部、和歌山県、岡山県、徳島県、愛媛県宇和海沿岸、高知県、有明・八代海、大分県瀬戸内海沿岸、大分県豊後水道沿岸、宮崎県、鹿児島県東部、種子島・屋久島地方、奄美諸島・トカラ列島、鹿児島県西部、沖縄本島地方、大東島地方、宮古島・八重山地方 津波注意報: 北海道日本海沿岸南部、オホーツク海沿岸、陸奥湾、大阪府、兵庫県瀬戸内海沿岸、広島県、香川県、愛媛県瀬戸内海沿岸、山口県瀬戸内海沿岸、福岡県瀬戸内海沿岸、福岡県日本海沿岸、長崎県西方、熊本県天草灘沿岸 |
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津波警報・注意報(津波から津波注意報へ切り替え、津波注意報を一部解除)の発表 |
津波警報(津波):青森県太平洋沿岸、岩手県、宮城県、北海道太平洋沿岸東部、北海道太平洋沿岸中部、福島県、茨城県、千葉県九十九里・外房、千葉県内房、淡路島南部、和歌山県、岡山県、徳島県、愛媛県宇和海沿岸、高知県、有明・八代海、大分県瀬戸内海沿岸、大分県豊後水道沿岸、宮崎県、鹿児島県東部、種子島・屋久島地方、奄美諸島・トカラ列島、鹿児島県西部、沖縄本島地方、大東島地方、宮古島・八重山地方 津波注意報: 北海道太平洋沿岸西部、東京湾内湾、伊豆諸島、小笠原諸島、相模湾・三浦半島、静岡県、愛知県外海、伊勢・三河湾、三重県南部、大阪府、兵庫県瀬戸内海沿岸、広島県、香川県、愛媛県瀬戸内海沿岸、山口県瀬戸内海沿岸、福岡県瀬戸内海沿岸、福岡県日本海沿岸、長崎県西方、熊本県天草灘沿岸 |
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津波警報・注意報(津波から津波注意報へ切り替え、津波注意報を一部解除)の発表 |
津波警報(津波):青森県太平洋沿岸、岩手県、宮城県、北海道太平洋沿岸東部、福島県、高知県、鹿児島県東部 津波注意報: 北海道太平洋沿岸中部、北海道太平洋沿岸西部、茨城県、千葉県九十九里・外房、千葉県内房、伊豆諸島、小笠原諸島、相模湾・三浦半島、静岡県、愛知県外海、三重県南部、大阪府、和歌山県、徳島県、愛媛県宇和海沿岸、大分県瀬戸内海沿岸、大分県豊後水道沿岸、宮崎県、種子島・屋久島地方、奄美諸島・トカラ列島、鹿児島県西部、沖縄本島地方、宮古島・八重山地方 |
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津波警報・注意報(津波から津波注意報へ切り替え、津波注意報を一部解除)の発表 |
津波警報(津波):高知県 津波注意報: 青森県太平洋沿岸、岩手県、宮城県、北海道太平洋沿岸東部、北海道太平洋沿岸中部、北海道太平洋沿岸西部、福島県、茨城県、千葉県九十九里・外房、千葉県内房、伊豆諸島、小笠原諸島、相模湾・三浦半島、静岡県、愛知県外海、三重県南部、大阪府、和歌山県、徳島県、愛媛県宇和海沿岸、大分県瀬戸内海沿岸、大分県豊後水道沿岸、宮崎県、鹿児島県東部、種子島・屋久島地方、奄美諸島・トカラ列島、鹿児島県西部、沖縄本島地方、宮古島・八重山地方 |
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津波注意報(津波から津波注意報へ切り替え、津波注意報を一部解除)の発表 | 津波注意報: 青森県太平洋沿岸、岩手県、宮城県、北海道太平洋沿岸東部、北海道太平洋沿岸中部、北海道太平洋沿岸西部、福島県、茨城県、千葉県九十九里・外房、千葉県内房、伊豆諸島、小笠原諸島、相模湾・三浦半島、静岡県、愛知県外海、三重県南部、大阪府、和歌山県、徳島県、高知県、大分県瀬戸内海沿岸、大分県豊後水道沿岸、宮崎県、鹿児島県東部、種子島・屋久島地方、奄美諸島・トカラ列島、鹿児島県西部 | ||
津波注意報(津波注意報を一部解除)の発表 | 津波注意報: 津波注意報:青森県太平洋沿岸、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、高知県 | ||
津波注意報(全ての津波注意報を解除)の発表 | 全ての予報区 |
津波の観測
津波予報区 | 予報(津波の高さ) | 予報区内で観測した津波の高さの最大 |
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北海道太平洋沿岸東部 | 津波(2m) | 92cm |
北海道太平洋沿岸中部 | 津波(2m) | 67cm |
北海道太平洋沿岸西部 | 津波(1m) | 53cm |
北海道日本海沿岸北部 | 19cm | |
北海道日本海沿岸南部 | 津波注意報(0.5m) | 17cm |
オホーツク海沿岸 | 津波注意報(0.5m) | 20cm |
青森県日本海沿岸 | 津波(1m) | 19cm |
青森県太平洋沿岸 | 大津波(3m) | 84cm |
陸奥湾 | 津波注意報(0.5m) | 29cm |
岩手県 | 大津波(3m) | 120cm |
宮城県 | 大津波(3m) | 106cm |
山形県 | 27cm | |
福島県 | 津波(2m) | 75cm |
茨城県 | 津波(2m) | 89cm |
千葉県九十九里・外房 | 津波(1m) | 47cm |
千葉県内房 | 津波(2m) | 69cm |
東京湾内湾 | 津波(1m) | 41cm |
伊豆諸島 | 津波(2m) | 41cm |
小笠原諸島 | 津波(2m) | 43cm |
相模湾・三浦半島 | 津波(2m) | 39cm |
新潟県上中下越 | 14cm | |
佐渡 | 10cm | |
富山県 | 8cm | |
石川県能登 | 23cm | |
静岡県 | 津波(2m) | 54cm |
愛知県外海 | 津波(2m) | 67cm |
伊勢・三河湾 | 津波(1m) | 50cm |
三重県南部 | 津波(2m) | 63cm |
京都府 | 23cm | |
大阪府 | 津波注意報(0.5m) | 30cm |
兵庫県瀬戸内海沿岸 | 津波注意報(0.5m) | 13cm |
淡路島南部 | 津波(1m) | 10cm |
和歌山県 | 津波(1m) | 89cm |
鳥取県 | 19cm | |
隠岐 | 11cm | |
岡山県 | 津波(1m) | 6cm |
広島県 | 津波注意報(0.5m) | 12cm |
徳島県 | 津波(1m) | 47cm |
香川県 | 津波注意報(0.5m) | 9cm |
愛媛県宇和海沿岸 | 津波(1m) | 35cm |
愛媛県瀬戸内海沿岸 | 津波注意報(0.5m) | 10cm |
高知県 | 津波(2m) | 128cm |
山口県瀬戸内海沿岸 | 津波注意報(0.5m) | 22cm |
福岡県瀬戸内海沿岸 | 津波注意報(0.5m) | 18cm |
福岡県日本海沿岸 | 津波注意報(0.5m) | 19cm |
有明・八代海 | 津波(1m) | 33cm |
佐賀県北部 | 20cm | |
長崎県西方 | 津波注意報(0.5m) | 40cm |
熊本県天草灘沿岸 | 津波注意報(0.5m) | (検潮所なし) |
大分県瀬戸内海沿岸 | 津波(1m) | 41cm |
大分県豊後水道沿岸 | 津波(1m) | (検潮所なし) |
宮崎県 | 津波(1m) | 66cm |
鹿児島県東部 | 津波(1m) | 103cm |
種子島・屋久島地方 | 津波(1m) | 46cm |
奄美諸島・トカラ列島 | 津波(2m) | 47cm |
鹿児島県西部 | 津波(1m) | 41cm |
沖縄本島地方 | 津波(2m) | 34cm |
大東島地方 | 津波(1m) | 8cm |
宮古島・八重山地方 | 津波(1m) | 43cm |
表中の観測値は速報値であり、後日変更される場合がある。
詳細は、下記資料をご覧下さい。
- 津波の観測値(気象庁所管の検潮所:詳細)
(① 「表示年」で「2010年」を選択、② 「全地点表示」を選択、③ 「津波(全地点表示のみ)」を選択、④ 「各項目を入力してクリック」をクリックして表示させてください。)
日本国内の検潮所で観測した津波の最大の高さ
津波予測の評価
日本への津波の到達は地震発生から約22時間後と見込まれたことから、津波が到達するまでの間、 津波予報データベースによる予測の他に、詳しい震源データや地震のメカニズムを用いた津波の数値シミュレーションを行い、その結果と津波の伝播経路上にある海外の潮位データとを比較しながら日本での津波の高さを予測した。
また、1960年に起きたチリ地震と比較的近い場所で地震が発生したため、その時に各地で観測された津波記録(図1)を参照しながら津波警報・注意報の解除作業を行った。
平成5年(1993年)北海道南西沖地震以来17年ぶりの津波警報(大津波)の発表となったが、検潮所で観測された津波は最大で128cm(速報値)であった。気象庁では津波注意報を解除した後に、高い津波を観測した場所で現地調査を行い、仙台管区気象台及び盛岡地方気象台からの報告では、岩手県の陸前高田市で、高さが1.9m程度の津波の痕跡が見つかった(図2および平成22年3月地震・火山月報(防災編))。
津波警報級の津波が観測されたものの、多くの予報区で観測された津波は予測した高さよりも小さかった。
平成22年度に取り組んでいる、日本から遠く離れた場所で起こった地震による津波予報データベースの改善(第5回津波予測技術に関する勉強会資料)により一定の精度向上が見込まれるところであり、気象庁では今回の事例を踏まえ、津波予測精度の向上に努めていく(津波警報・注意報の発表経緯と、今回の津波予測と観測の比較の詳細は(第6回津波予測技術に関する勉強会資料)を参照)。
図1 1960年に起こったチリ地震の時の津波と今回の津波記録
図2 津波の現地調査の結果