大地震後の地震活動(余震等)について

大地震後の地震活動の見通し

私たちはどのような情報に注意すればよいですか?

大きな地震が発生すると、その後の地震活動の見通しについて人々の不安を煽るような根拠の無いうわさが発生することがあります。 しかしこうした情報に惑わされてパニックになることは避けなければなりません。 具体的な日時を指定した地震の予知は現在の科学的知見からは間違いなくデマと言えます。 災害時には様々な情報が飛び交いますが、情報の送り手(発信元)を確認するとともに、科学的にきちんと説明がなされているかを見極める必要があるでしょう。

一方、気象庁では、地震で最大震度5弱以上が観測された場合など、引き続く地震活動で被害の生じる可能性がある場合は、 どのくらいの期間警戒すべきか、どのくらいの震度に注意すればよいか、どのようなことに留意しておくべきか(周辺の活断層や海溝型地震の想定震源域の存在など)などについて、今後の地震活動の見通しとして報道発表資料の中で解説します。 また、地震の発生状況も逐次発表して注意喚起します。これらは、地震発生の約1~2時間後から記者会見や気象庁ホームページなどで公式に発表され、新聞やテレビ、ラジオ、インターネットなどを通して見聞きすることが出来ます。 日頃から地震への備えを進めていただくとともに、大きな地震が発生した場合には、これらの情報も避難等の対応に活用してください。

私たちはどのような行動をとればよいですか?

大きな地震によって強い揺れとなった地域では、引き続く地震活動によって家屋などが倒壊したり、落石やがけ崩れなどの土砂災害やなだれが発生しやすくなります。 また、海域で規模の大きな地震が発生すると津波が発生する可能性があります。 活発な地震活動が収まるまでは、たとえば以下のような行動をとり、地震の強い揺れなどに備えてください。

  • 傾いた家屋やブロック塀、崖や裏山などに不用意に近づかない。(大きな地震の強い揺れによって建物や地盤の強度が低下し、普段よりも危険性が増していると考えられます)
  • 屋内でも家具や電化製品などが傾いていないか、高いところにあるものが落ちてこないかを点検し、家具などの固定を行う。すでに家具の固定を行っている場合でも、地震の強い揺れで固定が外れている場合もあるので、もう一度点検する。
  • 大きな地震が発生した場合にはいつでも避難できるように、防災用品などを確認し、家族と避難場所について話し合っておく。(家屋の耐震性に不安がある場合は、引き続いて起こる地震に備えてあらかじめ安全な場所に避難しておくことも考えられます)
  • 危険な作業や、すぐに身の安全を図ることが難しい作業は、地震活動が活発な間は延期する。
  • 壊れた家屋などで救命・救助活動を行う際にも、地震が発生した場合はすぐに避難できるようにするなど、二次災害を防ぐ。
  • 海岸や川の河口に近付く場合は、津波警報・注意報が発表されたことをいつでも確認できるように、ラジオなどを携帯する。また、高台などの避難場所を事前に調べておく。
  • 津波警報・注意報が発表された場合や、海岸付近で強い揺れや長く続く揺れを感じた場合には、ただちに海岸や川の河口から離れ、安全な場所に避難する。

気象庁では、大地震後の報道発表資料の「防災上の留意事項」で「どのようなことに気を付けるべきか」を掲載しますので、これを参考に行動するようにしてください。

気象庁が大地震後の報道発表で解説する地震活動の見通しや防災に関する呼びかけはどんな内容ですか?

気象庁では、地震調査委員会がとりまとめた報告書(地震調査研究推進本部地震調査委員会、2016)を指針として、大地震後の地震活動の見通しや防災に関する呼びかけを行います。主な内容は以下のとおりです。

【地震活動の見通しに関する呼びかけ】

・地震発生直後~

過去事例や地域特性についての知見に基づいて、最大でどの程度の揺れをどれくらいの期間想定すべきか、という見通しで呼びかけます。この場合、最初の大地震と同程度の地震への注意の呼びかけを1週間程度行うことが基本となります。

・1週間程度後~

上記に加え、余震発生確率に基づいた数値的見通しを考慮して呼びかけます。ただし、余震発生確率の数値のままでは発表せず、平常時の確率等との倍率で表現します(「最大震度◇以上となる地震の発生する可能性は平常時に比べ○倍程度」など)。

【活断層等に考慮した呼びかけ】

地震活動域の周辺に、地震調査委員会が長期評価を公表している活断層や海溝型地震の想定震源域があれば、地震活動に関する呼びかけと併せて、それらの存在等を示して留意を呼びかけます。

地震調査研究推進本部地震調査委員会(2016):「大地震後の地震活動の見通しに関する情報のあり方」報告書、58p.

地震活動の見通しで使われる「余震発生確率」とは何ですか?

現在の科学では、「震度5弱以上の揺れとなる余震が3日以内に確実に発生する」といったことや、「3日以内には絶対に発生しない」などのように、地震の発生時期や場所・規模を確度高く予測することはできません。
しかし、余震の起き方を詳しく調べることで、本震の震源域とその周辺で大きな余震が一定の期間内にどれくらいの確率で発生するか(発生しやすいか)ということは統計的に予測できるようになってきました。
過去の世論調査でも「今後の余震の見通し」は地震発生後に知りたい情報の上位にあげられており(総理府、1995)、気象庁では、地震調査委員会がとりまとめた余震の起き方を予測する方法に則って「余震発生確率」を計算し、大地震後の防災上の呼びかけに用いています。

総理府(1995):地震に関する世論調査、33p.

余震発生確率はどのように計算し、どのように発表するのですか?

余震発生確率の計算方法

余震活動には二つの性質があります。一つは「余震の数は本震直後に多く、時間とともに少なくなっていく」という性質です。一般的に、地震発生から1日以内に最も多くの余震が発生し、2日目にはその約2分の1、3日目には約3分の1になると言われています。
余震の数は時間とともに少なくなっていく
もう一つは「規模が大きい地震の数は少なく、規模が小さい地震の数は多い(マグニチュードが1大きくなると、発生数はおよそ10分の1程度に減る)」というものです。たとえば、マグニチュード3以上の地震が1000回発生しているとすると、マグニチュード4以上の地震は約100回程度発生していることになります。
規模が大きい地震は少なく、小さい地震は多い
これら二つの性質は、余震活動に共通したもので、余震が減っていく様子や規模別の地震発生数の割合の活動毎の違いをパラメータとして、地震学でよく知られている統計の式で表すことができます。そして、それらを組み合わせると、一定期間内にある大きさ以上の余震の発生する可能性を確率の形(例えば、「今後3日以内にマグニチュード5以上の余震の起きる確率は30%」)で予測できます。

余震発生確率の発表方法

最大震度5弱以上が観測された場合などで、地震発生から1週間程度以降の報道発表資料において、余震発生確率に基づいた数値的見通しとして発表します(注1)。ただし、余震発生確率は日常的に発表されるものではないことから、大地震後の地震活動を体験されている住民の皆様に配慮し、以下の表現で発表します。

・震度で表現

マグニチュード(地震の規模)よりも震度(揺れの大きさ)の方が速やかな防災行動につなげやすいと考えられることから、余震発生確率の計算に使用したマグニチュードに対応する震度の値での表現を基本とします。

・余震発生確率の倍率で表現

「最大震度◇以上になる地震の発生確率は、地震発生当初に比べ1/○程度、平常時の約△倍」のように倍率で表現します(注2)。ここで、「当初」とは大地震の発生直後3日間のことです。また、△倍が100倍を超える場合は「100倍を超える」、100倍以下の場合は概数でそれぞれ表現します。

・強い揺れを伴う地震の発生に注意すべき期間

最大震度■程度(に相当する規模以上)の余震発生確率の高い状態がいつまで続くのか、その見通し(期間)について「今後●週間程度は最大震度■程度の地震に注意」のように表現します。

(注1)大地震発生から1週間程度後までに、概ね最大震度5弱程度以上となる地震の3日間の余震発生確率が10%(1ヶ月に1回程度の頻度)を下回った場合は上記の数値的見通しの発表は行いません。
(注2)平成28年(2016年)熊本地震では、最初の規模の大きな地震後に発表した余震発生確率の値(パーセンテージ表現の確率値)が、通常の生活の感覚からすると、かなり低い確率であると受け取られ、安心情報であると受け取られた可能性があることが課題となりました。このため、従来のパーセンテージ表現に代えて、大地震発生地域の住民の方々が体験した事実と比較しやすい倍率の表現を用いています。

震度△のとき、揺れの大きさや被害はどの程度になりますか?

「気象庁震度階級関連解説表」では、ある震度が観測された場合、その周辺で実際にどのような現象や被害が発生するかを示しています。
また、同解説表をイラストつきでまとめたリーフレット「その震度 どんなゆれ?」もあります。
なお、震度に関する詳細は「震度について」をご覧ください。

大地震の後、体に感じる揺れがあったのに地震情報が発表されないことがあるのはなぜですか?

大地震の後に極めて活発な地震活動が続くときは、最大震度1~2の揺れを観測する地震ひとつひとつに対して情報を発表できない場合があります。これは、より大きな震度を観測した地震や津波に関する情報を優先して発表するためです。個々に情報を発表できなかった地震については、地震情報(その他の情報)の中で「地震回数に関する情報」としてまとめて発表することにしています。
また、データを精査した結果、震度5弱以上の揺れを観測していたことが新たに判明した場合などは、別途、気象庁ホームページのトップページの「新着情報」などでお知らせすることにしています。
このほか、地盤の違いによって揺れの大きさに地域差が生じたり内陸や沿岸のごく浅いところで地震が発生したためにごく狭い範囲だけで揺れを感じる場合には、気象庁が情報発表に用いる震度観測点で震度1以上の揺れが観測されず、地震情報を発表しないことがあります。

大地震の後に発生した地震の回数を知ることはできますか?

大地震の後に発生した地震の回数は、表やグラフにまとめ、報道発表資料として気象庁ホームページのトップページの「新着情報」または地震解説資料、あるいは当該地震の関連資料をまとめたポータルサイトに掲載する場合があります。また、地震が発生した翌月以降に発行される「地震・火山月報(防災編)」に掲載する場合があります。
最大震度別の地震の回数の表およびグラフ(平成30年北海道胆振東部地震の例)を表示する(PDFファイル:0.18MB)


大地震の後、もう大きな地震の心配がないという安全宣言は出されますか?

気象庁では、原則として、大きな地震はこれ以上発生しませんという内容の情報(安全宣言)を出すことはありません。これは以下の3つの理由によります。

  1. 地震活動(余震活動)が完全に収まるまでには数カ月から数年、あるいはそれ以上かかる場合もあること。
  2. 地震活動が収まりつつある段階でも、まれに規模の大きな地震が発生することがあること。
  3. 日本は全国どこでも大きな地震が発生する可能性があり、「安全」な状況は存在しないこと。

大地震後の地震活動が徐々に収まりつつある場合は、報道発表資料で解説することがあります。その場合でも、地震活動が完全に収まったことを示すわけではありませんので、現状程度の地震活動が当分の間は続くことに留意してください。また、日本中どこでも地震発生の可能性がありますので、日頃から地震への備えを心がけてください。

2008年から2018年の震央分布図、回数積算図

図    余震活動が長く続く例   :   平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震の余震活動

左の図(震央分布図)は、2008年1月1日から2018年7月31日までに発生したマグニチュード2以上の地震の震央を示しています。丸の大きさは地震の規模(マグニチュード)の違いを示します。
右の図(地震活動経過図)は、横軸が時間、左の縦軸が地震の規模(マグニチュード)を示し、個々の縦の棒を見ると、いつどれほどの規模の地震が発生したかが分かります。また、左下から右上へ地震の積算回数の変化を示す線が描かれており、右の縦軸で積算回数の値がわかります。
マグニチュード7.2の地震(地震①)の発生直後は規模の大きな地震が多数発生し、その後は時間が経過するにつれて緩やかに回数及び規模が低下しながらも地震活動が続いています。その中で、2010年7月4日にはマグニチュード5.2(地震③)、2014年12月30日にはマグニチュード4.2(地震④)のやや大きな地震が発生しました。


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