大地震後の地震活動(余震等)について

大地震後の地震活動(余震等)に関する基礎知識

大地震後に、引き続いてその震源近くで地震活動が活発になるのはなぜですか?

大地震の震源域(岩盤が破壊された領域)やその周辺では、地下の力のつりあいの状態が不安定になり、それを解消するために、引き続いて地震が発生すると考えられています。

大地震後は、その震源近くで必ず地震活動が活発になるのですか?

被害を生じるような規模の大きな地震が発生すると、ほとんどの場合は震源周辺での地震活動が活発になりますので、引き続いて起こる地震にあらかじめ注意した方がよいでしょう。
ただし、震源の深さが100キロメートルよりも深い地震では、その震源近くで地震活動が活発になった例はまれです。

地震活動のパターンにはどのような種類がありますか?

多くの場合、大地震は突然発生します。その震源近くでは、最初に発生した大地震よりも規模の小さい地震が引き続いて発生することが多く、これを余震といいます。この場合、最初に発生した一番大きな地震のことを本震といい、このような地震活動のパターンを「本震-余震型」といいます。
地震活動のパターンには、この他に「前震-本震-余震型」と「群発的な地震活動型」があります。「前震-本震-余震型」は、「本震-余震型」の地震活動に先行して本震よりも規模の小さな地震活動(前震)が見られるパターンです。「群発的な地震活動型」は、一連の活動の中で抜きん出て規模の大きな地震がなく、「(前震-)本震-余震型」の明瞭なパターンは認められないものの、地震活動が活発になったり穏やかになったりしながら、一定期間続くというものです。
発生している地震活動がどのパターンであるかは、その地震活動が終わるまでは判別できません。大地震が発生した後に、それより規模の小さな地震(余震)のみが発生して「本震-余震型」となるのか、途中でより規模の大きな地震(本震)が発生して「前震-本震-余震型」となるのかは、一連の地震活動が終わるまではわからないからです。このため、最初の大地震と同等もしくはそれ以上の規模の地震が発生する可能性もあることにも注意が必要です。

大地震後の地震活動にはどのような性質がありますか?

「地震活動のパターンにはどのような種類がありますか?」で述べた3つのパターンのうち、最も多いのは「本震-余震型」です。
「本震-余震型」の余震には、次のような性質があります。

[1]余震の数は本震直後に多く、発生頻度は時間経過とともに次第に低くなっていきます。
本震発生後1日目に発生した余震の数を基準にすると、1日あたりの余震の数は概ね経過日数に反比例して減少していきます。すなわち、2日目には約2分の1に、10日目には約10分の1に減ります。このため、減衰の仕方は、本震直後は急激で、徐々に緩やかになります。例えば、本震から20日後には本震直後の20分の1程度になりますが、10日目の状態からみれば、その後10日間で2分の1しか減りません。余震がいつまでも続くといった印象を持つのはこのためです。また、本震の規模(マグニチュード)が大きいと、余震が収まるまでの期間が、一般的には長くなります。

[2]規模が大きい余震は少なく、規模が小さい余震は多く発生します。
余震は規模(マグニチュード)が1つ大きくなると、起きる回数は元の規模の余震の回数の約10分の1になります。(逆に、マグニチュードが1つ小さくなると、起きる回数は約10倍となります。)

[3]大きな余震による揺れは、場所によっては本震の揺れと同じ程度になることがあります。
1997年3月26日の鹿児島県薩摩地方の地震(マグニチュード6.6)では、8日後の4月3日に最大余震(マグニチュード5.7)が発生、同県川内市では、ともに震度5強の揺れとなりました。また、平成15年(2003年)十勝沖地震(マグニチュード8.0)では、約1時間後に最大余震(マグニチュード7.1)が発生、浦河町ではともに震度6弱の揺れとなりました。
これは本震と比べて余震の方が震度の観測された場所(上記の例では鹿児島県川内市や北海道浦河町)により近い場所で起きたためです。

大地震後の地震活動には、いつ頃まで注意すべきでしょうか?

「地震活動のパターンにはどのような種類がありますか?」で述べた3つのパターンのうち、最も多いのは「本震-余震型」です。
余震の数は時間が経つほど減ってきますが、時々規模の大きな余震が発生することがあります。被害が発生するような規模の大きな地震(本震)が発生した時は、その後、1週間程度のうちに規模の大きな余震(場合によっては本震を超える規模の地震)の発生することが多い傾向にあります。また、中でも最初の2~3日程度は規模の大きな地震が発生することが特に多いため注意が必要です。
また、1週間後以降も余震は続きます。特に本震の規模が大きい場合、規模の大きな余震も長く続きます。気象庁では、最大震度5弱以上の余震の発生する頻度の見通しが月に1回程度を下回るまで、今後の地震活動の見通しや防災上注意すべきこと等について情報提供を続けることにしています。
なお、余震は、完全になくなるまでには何年もかかる場合があります。例えば、平成7年(1995年)兵庫県南部地震の余震活動は20年以上経った現在でも続いており、2ヶ月に1回程度、震度1以上の揺れを観測する余震が発生しています。

最初の大地震と同規模もしくはそれ以上の規模の地震が発生しやすい場所はありますか?

海域の地震では、三陸沖(図1中の赤枠領域)及び択捉沖の一部(図1中の緑枠領域)などが同規模の地震が続けて起こりやすい場所として知られています。また、図1中の水色の丸の場所では、M6.0以上の地震の後に同規模もしくはそれ以上の規模の地震が発生した事例があります。

規模が近い地震が続発した事例(海域)

図1 規模が近い地震が続発した事例(海域)
調査期間:1923年1月1日~2016年6月30日

内陸の浅い地震でも、例えば「平成28年(2016年)熊本地震」ではM6.5の地震の約28時間後にM7.3の地震が発生したように、図2中の水色の丸の場所ではM5.0以上の地震の後に同規模もしくはそれ以上の規模の大きな地震が発生した事例があります。また、一部地域(長野県松代及び伊豆半島東方沖から伊豆諸島の領域)では、過去に群発的な地震活動が発生していることから、最初の大きな地震と同程度もしくはそれ以上の地震が発生しやすいと考えられています。

規模が近い地震が続発した事例(内陸地殻内)

図2 規模が近い地震が続発した事例(内陸地殻内)
調査期間:1923年1月1日~2016年6月30日
日本列島を囲む多角形は「内陸」の範囲を表す。

過去の大地震後の地震活動はどうでしたか?

大きな地震の後の地震活動の推移は、地震によって異なります。
本震-余震型の場合、本震の規模(マグニチュード)が大きいと、余震が収まるまでの期間が、平均的には長くなります。しかし本震の規模が比較的小さくても、余震活動が長く続くことがあります。反対に、本震の規模が大きくても、余震活動が比較的早く収まることもあります。
下の図は、内陸及び沿岸で最近発生した主な地震の地震活動の推移を示したグラフです。

主な地震の地震回数比較
図を拡大する(別ウィンドウが開きます)

縦軸は地震の発生回数の積算数、横軸は最初の大きな地震が発生してからの経過日数です。
グラフの線の1本1本が、一連の地震活動を示しており、グラフの傾きが急な時期は短時間で多くの地震が発生している状況に、傾きが緩やかな時期は地震があまり発生していない状況にそれぞれ対応します。
グラフを見ると、2011年の長野県北部の地震や平成12年(2000年)鳥取県西部地震では、最初の大きな地震発生後5日も経たないうちに傾きが平坦になっており、地震活動が収まったことがわかります。逆に、平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震や平成16年(2004年)新潟県中越地震では、最初の大きな地震発生後10日を過ぎても傾きが急であり、地震活動がなかなか収まらなかったことがわかります。
また、平成16年(2004年)新潟県中越地震では、本震発生翌日以降も規模の大きな余震が度々発生して活動が再び活発となった時期があり、このタイミング(例えば約3.7日後)で一時的に傾きが急になっています。一方、平成28年(2016年)熊本地震では、最初の大きな地震(マグニチュード6.5)が発生した約28時間後(約1.2日後)にさらに大きな地震(マグニチュード7.3)が発生したため、傾きが最初の地震の直後よりもさらに急になっていることがわかります。

下の表は、日本の内陸および沿岸の浅い場所で起きた大きな地震(マグニチュード6.5以上)の後の地震活動について、最初の地震から何日後に、比較的大きな地震が発生したかをまとめたものです。
この表を見ると、大きな地震(場合によっては最初の地震を超える規模の地震)が頻繁に発生するのは、最初の大きな地震発生後の1週間程度であることがわかります。また、1927年に発生した北丹後地震では最初の大きな地震が発生してから24日後にマグニチュード6以上の地震が起こっていたことがわかります。

M6.5以上の地震の活動推移
表を拡大する(別ウィンドウが開きます)

平成7年(1995年)兵庫県南部地震の地震活動(典型的な「本震-余震型」の事例)

下の図は、平成7年(1995年)兵庫県南部地震の地震活動の様子です。
左の図は、本震発生から約1ヶ月間に発生したマグニチュード2以上の地震の震央を示しています。丸の大きさは地震の規模(マグニチュード)の違いを表します。 この図から、余震は一本の帯状の領域(余震域)に沿って発生していることが分かります。
右の図は余震活動の経過を示したグラフです。横軸は本震発生からの経過日数です。 棒グラフは1時間あたりのマグニチュード2以上の余震の回数(左の目盛を参照)、曲線は余震回数の積算回数(右の目盛を参照)を表しています。 このグラフから、日が経つにつれて次第に余震が減る様子がわかります。

震央分布図と1時間毎のマグニチュード2以上の余震の回数のグラフ


平成16年(2004年)新潟県中越地震の地震活動(「本震-余震型」だが、比較的規模の大きな余震が発生した事例)

下の図は、平成16年(2004年)新潟県中越地震の地震活動の様子です。
左の図は、本震発生から約1ヶ月間に発生したマグニチュード2以上の地震の震央を示しています。丸の大きさは地震の規模(マグニチュード)の違いを表します。 この図から、マグニチュード6以上の規模の大きな余震がいくつか発生していることが分かります。 本震発生から約4日後にマグニチュード6.1の余震が発生したほか、2週間以上経ってからもマグニチュード5.9の比較的規模の大きな余震が発生しています。
右の図は余震活動の経過を示したグラフです。横軸は本震発生からの経過日数です。 棒グラフは1時間あたりのマグニチュード2以上の余震の回数(左の目盛を参照)、曲線は余震回数の積算回数(右の目盛を参照)を表しています。 余震の回数は単純に減ってはいかず、しばしば余震が急に増えてたりしています。これらは、日にちが経ってから発生した規模の大きな余震にともなう「余震の余震」であったり、余震域が広がっていく中で一時的に余震活動が活発化したことによるものです。

震央分布図と1時間毎のマグニチュード2以上の余震の回数のグラフ


平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の地震活動(「本震-余震型」(注)だが、余震域が広範囲に、余震活動が長期間に及ぶ事例)

注:2011年3月11日以前の活動を含めて「前震-本震-余震型」とする学説もあります。

下の図は、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の地震活動の様子です。
左の図は、本震発生から約8ヶ月間に発生したマグニチュード5以上の地震の震央を示しています。丸の大きさは地震の規模(マグニチュード)の違いを表します。 余震は長さ500キロメートル、幅200キロメートルの広い範囲で発生しています。
右の図は、マグニチュード5以上の余震の回数を積算したグラフです。比較のために、日本およびその周辺で発生した他の地震についてもグラフを載せています。 過去の地震と比べても、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の余震活動は極めて活発であることが分かります。また、余震の回数は徐々に減少していますが、本震から1年以上を経ても余震活動が続いていることが分かります。

震央分布図とマグニチュード5以上の余震の回数積算グラフ


平成28年(2016年)熊本地震の地震活動(最初の地震より規模の大きな地震が発生し、当初に比べて活動域が大きく広がった事例)

下の図は、平成28年(2016年)熊本地震の地震活動の様子です。
左の図は、最初の地震(マグニチュード6.5)から約半月間に発生したマグニチュード2以上の地震の震央を示しています。丸の大きさは地震の規模(マグニチュード)の違いを表します。最初の大きな地震(マグニチュード6.5)の約1日後に、さらに大きな地震(マグニチュード7.3)が発生しました。このマグニチュード7.3の地震発生以降、熊本県熊本地方のみならず、熊本県阿蘇地方や大分県中部等にかけての広い範囲で地震活動が活発となりました。
右上の図は、地震活動の時間-空間分布を示した図です。横軸が時間で、縦軸のAとBは左の図のAとBに対応します。マグニチュード6.5の地震の発生後の活動域に比べて、マグニチュード7.3の地震の発生後に活動域が広がったことがわかります。
右下の図は、地震活動の経過を示したグラフです。縦棒のついた丸は地震発生時刻(横軸)とマグニチュードの大きさ(左の目盛を参照)、曲線は地震回数の積算回数(右の目盛を参照)を表しています。地震の回数は、マグニチュード7.3の地震発生以降、再び急激に増えていることが分かります。
このような活動経過(最初の大きな地震に続いて、その規模を超える大きな地震が発生)をたどるかどうかは、現在の科学技術のレベルでは予測できません。

震央分布図と1時間毎のマグニチュード2以上の回数積算及び時空間分布のグラフ



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