仙台管区気象台長からのメッセージ

仙台管区気象台長 鎌谷紀子 着任のご挨拶です

 このたび、仙台管区気象台長を拝命いたしました鎌谷です。よろしくお願いいたします。

 仙台は、私が大学・大学院時代の9年間を過ごした、懐かしく大好きな街です。大学入試の前日、初めて仙台に来て、青葉通の素晴らしいケヤキ並木を見て「この街に住みたい!」と強く思ったことを憶えています。大学時代には、東北各地の活火山のふもとの温泉を友人達と巡ったり、東北の人々のあたたかい人柄に触れたりして、東北地方が大好きになりました。31年ぶりに仙台に戻り、この東北地方の気象業務に携われることを、とても嬉しく思っています。

 その東北地方ですが、私が仙台を離れていた間に、様々な自然災害に見舞われました。

 東日本大震災では、私が友人達と良く遊びに行った荒浜や閖上(ゆりあげ)、地質調査実習で歩き回った野蒜(のびる)といった、見知った場所でも多くの方が亡くなり、衝撃を受けました。私は、入庁以来ずっと地震分野で仕事をしてきましたので、無力感に苛まれるとともに、二度と、こんな悲しいことはないように力を尽くしたいと思いました。今後も、東北地方の北部の太平洋側沖合にある日本海溝沿いや、それより北の千島海溝沿いでは、巨大地震が発生する可能性があると考えられています。そのような巨大地震が発生した場合には、東北地方に再び大きな被害が生じると考えられています。その被害を少しでも減らすために、住民の皆様にはあらかじめ備えていただきたいと思いますし、私達気象庁が発表する「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を正しく理解してご対応いただきたいと思っています。

 地震よりも長いリードタイムを確保できることが多い気象災害でも、いまだに多くの命が失われています。昨年の夏は、東北地方の日本海側を中心に大雨となりました。仙台管区気象台では、ホットラインやJETTの派遣で、自治体等に発災前から危機感を伝えたところです。気象災害は今後、激甚化・頻発化すると言われておりますので、昨年のような大雨の事例が、東北地方でも増えてくるものと考えています。

 そうした中、仙台管区気象台として取り組んでいきたいことは、サイエンスとして正しい観測予報業務を着実に行った上で、私達の持っている情報や危機感を、できるだけ多くの方々に伝える、ということです。もちろん、予測には誤差がありますので、「これから危ない状況になるよ」とハッキリ言い切ることは難しいです。でも、「危なくなるかもしれない」といった、私達の技術に基づいた相場観といったものを説明できるようになれば、と思っています。例えば、「この程度の誤差があるが、危ない状況になる可能性がある」と丁寧にご説明する、といったことができればと考えています。人々が聞きたがっているのは、そのような、プロの相場観なのではないかと思いますし、また、それによって救える命があるのではないかとも思っています。

 そのために、私達も、自治体や報道機関の皆様への力をお借りしながら、住民の皆様ひとりひとりにより緊密で丁寧な情報提供を行っていきたいと考えております。どうぞ、いざというときに確実に防災行動をとることができるように、住民の皆様には心の準備・日頃の備えをしていただき、気象台の最新情報や地元自治体からの避難情報等に耳を傾けてくださるようにお願いいたします。


令和7年4月1日
仙台管区気象台長 鎌谷 紀子(かまや のりこ)