名瀬測候所|沿革

名瀬測候所創設の経緯


 奄美群島では、群島内の気象的な地域特性としての大雨や干ばつ、台風、冬の強い季節風等が、海上交通をはじめ沿岸漁業や農業等に大きな影響を与えてきました。 また、名瀬の街は奄美群島の政治経済の中心地であると共に、日本列島から台湾に至る琉球弧の中で、航行船舶の重要な寄港地として早くから利用されていました。

 そこで中央気象台(現在の気象庁にあたる)は、明治29年(1896年)10月の海底電信線の開通と歩調を合わせ、南西諸島に付属測候所の設置を計画し、現地調査の結果大島郡伊津部村(現在の奄美市)の敷地を選定しました。 明治29年(1896年)11月10日、大島郡伊津部村字久保里11番地(現在の奄美市名瀬末広町付近)の民家を借用し、同11月25日に1日6回の地上気象観測を開始、同12月5日をもって中央気象台大島測候所として業務を開始したことが奄美地方における気象業務のはじまりです。

 大島測候所は明治40年(1907年)4月11日に中央気象台付属名瀬測候所と改称され、のち昭和14年(1939年)11月1日、福岡管区気象台所管名瀬測候所となりました。

 しかし第二次世界大戦での日本の敗戦に伴い、昭和21年(1946年)2月2日進駐軍22宣言により、北緯30度以南の南西諸島が日本から行政分離され、名瀬測候所は福岡管区気象台から中央気象台所管となります。 さらに昭和25年(1950年)1月1日に中央気象台から分離、琉球軍政府に移管され、琉球軍政府所管・琉球気象局名瀬測候所となりました。 その後昭和28年(1953年)12月25日、奄美群島が日本に復帰したことに伴い、福岡管区気象台所管名瀬測候所となり現在に至っています。

 名瀬測候所は明治30年(1897年)の庁舎落成後、120年以上にわたり同じ敷地で業務を行ってきましたが、庁舎の老朽化や防災官庁の集約のため、令和6年(2024年)11月28日に名瀬第二地方合同庁舎に移転しました。


 ※地名は断りのないかぎり当時の名称で記載


名瀬測候所の沿革

(西暦)

月日

歩み

明治29年 1896年 11月10日 大島郡伊津部村字久保里11番地(現在の奄美市名瀬末広町付近)の民家を仮事務所として、中央気象台大島出張所を設ける
11月25日 大島郡伊津部村字久保里11番地において、中央気象台大島測候所として地上気象観測を開始
12月5日 文部省告示により中央気象台大島測候所が設置される
12月20日 定時気象電報(毎日3回)を中央気象台に打電開始
明治30年 1897年 1月1日 暴風警報発表開始・有感地震観測を開始
3月8日 庁舎落成により大島郡伊津部村字久保里61番地(現在の奄美市名瀬港町)に移転
明治31年 1898年 7月14日 中央気象台付属大島測候所となる
明治39年 1906年 12月25日 地方天気予報の発表を開始
明治40年 1907年 4月11日 中央気象台付属名瀬測候所と改称
明治41年 1908年 1月1日 改良型地震計による地震観測を開始
昭和11年 1936年 7月15日 中央気象台名瀬測候所と改称
昭和14年 1939年 11月1日 気象管区地方気象区及びその所轄区域が定められ、名瀬測候所は福岡管区気象台所管となる
昭和21年 1946年 2月2日 北緯30度以南の南西諸島は日本から行政分離され、名瀬測候所は福岡管区気象台から中央気象台離島事務室所管となる
昭和25年 1950年 1月1日 中央気象台から分離され琉球政府に移管となり、琉球気象局名瀬測候所となる
昭和28年 1953年 12月25日 日本政府に復帰し福岡管区気象台所管名瀬測候所となる、業務課、技術課(技術係・通信係)の2課・2係をおく
昭和32年 1957年 3月20日 本茶峠に上高層観測室が竣工
4月5日 名瀬測候所構内にてレーウィンゾンデ・ラジオゾンデを用いた高層気象観測を開始
9月1日 名瀬測候所構内での高層気象観測を前日で終了し、本茶峠分室にて高層気象観測を開始
昭和34年 1959年 10月1日 本茶峠分室にてレーダー気象観測を開始
昭和36年 1961年 4月1日 高層課(観測係・技術係・レーダー係)を置き3課となる
昭和39年 1964年 6月1日 名瀬測候所奄美空港分室官制施行
7月1日 航空気象業務を開始
昭和42年 1967年 3月25日 本所新庁舎竣工(名瀬市港町8-1)
7月15日 奄美空港分室を奄美空港出張所と改称
昭和50年 1975年 3月18日 名瀬有線ロボット気象計(地域気象観測所・4要素)の取付工事完了、集配信開始
昭和51年 1976年 5月1日 徳之島空港出張所を開設し航空気象業務を開始
昭和63年 1988年 7月10日 新奄美空港開港に伴い奄美空港出張所が移転
平成6年 1994年 4月1日 龍郷、喜界島、徳之島の津波地震観測局の運用を開始
平成8年 1996年 4月1日 名瀬市小湊漁港に津波観測計、巨大津波観測計を設置し運用開始
平成13年 2001年 4月19日 ウインドプロファイラ名瀬局、局地的気象監視システムとして運用開始
平成15年 2003年 3月1日 徳之島空港出張所を廃止し徳之島航空気象観測所へ移行
平成18年 2006年 4月1日 航空気象業務再編に伴い、名瀬測候所奄美空港出張所は福岡航空測候所奄美空港出張所となる
平成19年 2007年 3月1日 本茶峠分室に自動放球装置(ABL)を導入し運用開始
平成22年 2010年 4月1日 組織改編のため高層課を廃止し、業務課、技術課の2課となる
平成27年 2015年 4月10日 気象庁組織細則改正に伴い、業務課、技術課を廃止し、業務・危機管理官、観測予報管理官をおく
令和2年 2020年 2月3日 15時より目視観測通報を自動化する
令和3年 2021年 1月1日 生物季節観測の種目・現象を変更し、4種目5現象とする
4月1日 予報体制移行に伴い、業務・危機管理官、業務係長、観測予報管理官を廃止し、調査官、統括予報官、地域防災官、地域防災係長をおく
令和6年 2024年 3月5日 名瀬測候所構内に地上マイクロ波放射計を整備し運用開始
11月28日 名瀬第二地方合同庁舎に移転(奄美市名瀬矢之脇町26-1)

 もっと詳しく知りたい方はこちら(PDFファイルが開きます)→名瀬測候所の沿革