長期変化傾向(トレンド)に関するよくある質問

Q:長期変化傾向(トレンド)とは何ですか?

A:気象庁が用いる長期変化傾向(トレンド)とは、数十年から百年を超える観測値などについて、その期間の「平均的な変化」を示したものです。この値は10年あたり(例:約0.25℃/10年)や100年あたり(例:約2.5℃/100年)のように時間的な変化の割合で表します。詳しくは、長期変化傾向(トレンド)の解説をご覧ください。


Q:統計期間の最初と最後の値を直線で結んで、長期変化傾向を求めているのですか?

A:違います。気象庁では、統計期間中の全てのデータを用いて、最小二乗法により算出した回帰直線の傾き(統計期間の平均的な変化の割合)を長期変化傾向としています。詳しくは、長期変化傾向(トレンド)の解説をご覧ください。


Q:統計期間の最初の数年の平均と最後の数年の平均を比較して長期変化傾向を評価してもよいですか?

A:誤った結論を導く恐れがあるため、気象庁では推奨しておりません。評価に用いるデータ数が少ないと自然変動や異常気象による偶然性の影響を大きく受けるため、選択する期間の違いによって変化傾向が大きく変化し、対象期間の平均的な変化をよく表したものとは言えなくなります。
 ただし、気象庁では、長期変化傾向(統計期間の平均的な変化の割合)と大きく異ならない場合は、その特徴を分りやすく伝えるために、最近10年間の平均と過去の10年間の平均を比較することもあります。


Q:「10年あたり約0.25℃の上昇」の場合、「最近の10年間も約0.25℃上昇した」と解釈できますか?

A:できません。この変化の割合は統計期間の平均的な変化の割合を示したものです。統計期間中に変化傾向が変わっている場合がありますので、特定の10年間(例えば2011年から2020年)の変化量が0.25℃であることを意味するわけではありません。


Q:「10年あたり約0.25℃の上昇」というのは、5倍して「50年あたり約1.25℃の上昇」と同じですか?

A:同じです。長期変化傾向は変化の割合で表していますので、「10年あたり約0.25℃の上昇」であれば、「50年あたり約1.25℃の上昇」や「100年あたり約2.5℃の上昇」のように言い換えることが可能です。
 ただし、統計期間を超える期間あたりで表現することは、この変化傾向が過去から続き未来も続くように誤解される恐れがありますので、避けてください。


Q:統計期間が70年余りしかなくても、100年あたりの変化量を求めることが可能なのですか?

A:可能ですが注意が必要です。長期変化傾向は変化の割合で表していますので、任意の年あたりに換算することができます。ただし、統計期間を超える期間あたりで示すことは、この変化傾向が過去から続き未来も続くように誤解される恐れがありますので、避けてください。


Q:100年を超える観測値で長期変化傾向が見られる場合、地球温暖化やヒートアイランド現象の影響によるものであると言えますか?

A:直ちに地球温暖化やヒートアイランド現象の影響(人為的な影響)があるとは言えません。観測でみられる長期変化傾向が、人為的な影響を考慮することによって説明できる場合に、これらの影響によるものと評価できます。


Q:アメダスによる気温や降水量の長期変化傾向は、地球温暖化やヒートアイランド現象の影響によるものであると言えますか?

A:可能性はありますが、断言はできません。アメダスの統計期間のように数十年程度の期間で求めた長期変化傾向は、年ごとや数年から数十年の自然変動や、異常気象などの極端に大きい(小さい)値の影響を強く受けることがあります。そのため、直ちに地球温暖化やヒートアイランド現象の影響によるものとは言えません。確実な評価を行うためには更にデータを蓄積する必要があります。


Q:統計的に意味のある長期変化傾向がみられない場合、地球温暖化やヒートアイランド現象の影響は無いのですか?

A:そうとは言えません。気象要素や地域によっては、地球温暖化やヒートアイランド現象に伴う影響(人為的な影響)があったとしても、年ごとや数年から数十年の自然変動が大きいため、統計的に意味のある長期変化傾向として現われない場合があります。このような場合は、人為的な影響の検出が難しいため、直ちに影響が無いとは言えません。


Q:有意検定にはいろいろな方法がありますが、どの方法が使われているのでしょうか?

A:気象庁では要素によって方法を使い分けています。例えば、世界の平均気温の場合はパラメトリック検定(t検定)を、1時間降水量50mm以上の発生回数の場合はノンパラメトリック検定を用いています。詳しくは、最新の気候変動監視レポートの巻末資料をご覧ください。

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