《顕著な天候事例》記録的高温・少雨(2021年6~8月)

 2021年6月下旬から8月にかけて、北海道地方は高気圧に覆われて晴れた日が多く、気温のかなり高い状態が続き、また雨の降らない日が続きました。 特に、7月中旬から8月上旬にかけては、太平洋高気圧の張り出しが強く、北海道地方の7月の月平均気温の平年差は、1946 年の統計開始以降、 高い方から第 1 位、月降水量の平年比は少ない方から第 1 位となり、記録的な高温・少雨となりました。 また、道内の観測点いずれかで、猛暑日は 15 日間連続(7 月 24 日~8 月 7 日)、真夏日は 27 日間連続(7 月 13 日~8 月 8 日)を記録し、多くの地点で観測史上 及び 7 月や 8 月としての日最高気温の高い方からの極値を連日更新しました。
図1 2021年7月(左)月平均気温の平年差、(右)月降水量の平年比

高温となった背景

 図2は2021年6月21日から8月23日の上空約5500mの大気の流れ(左)と地上気圧(右)を示しています。
 上空では、偏西風が中国東北付近で北へ大きく蛇行し、千島近海で南に大きく蛇行しました。 このため、中国東北区からサハリン付近にかけては、500hPaの高度が高く、北海道付近は気圧の尾根の中に入り、高気圧に覆われやすくなりました。
また、地上では、梅雨前線の北側の北海道では、千島近海の高気圧が明瞭で、北海道は晴れた日が多くなりました。 さらに、日本の東海上に高気圧、大陸に低気圧があり、その間にあたる日本付近には暖かい空気が流れ込み、北海道地方もこの暖かい空気に覆われました。
図2 2021年6月21日から8月23日の(左)上空約5500mの大気の流れ、(右)地上気圧
 7月後半に着目して、もう少し詳しく見てみます。図3は7月16日から31日の大気の流れの図を示しています。(左が上空の大気の流れ(200hPa流線関数)、右が下層の大気の流れ(850hPa流線関数))
 偏西風が北日本付近で北に蛇行し、上層のチベット高気圧の張り出しが北日本付近に強まりました。また、下層は日本の南が低圧部となった事により(図中の青点線)、太平洋高気圧の北西への張り出しが強くなりました。 このため、北海道付近は、上層から下層まで高気圧に覆われたことにより下降気流による断熱昇温により暖かい空気に覆われ、晴れの日が続きました。 このように、チベット高気圧と太平洋高気圧の両方の勢力が強まり異常高温となるパターンは、2019年夏にもみられましたが、長期間持続するのはあまり見られません。
図3 (左)上空の大気の流れ(200hPaの流線関数(コンター)と平年偏差(シェード))、(右)下層の大気の流れ(850hPaの流線関数(コンター)と平年偏差(シェード))。7月16日~7月31日の16日間平均。

まとめ

 2021年夏は、北海道地方は高気圧に覆われて晴れた日が多く、記録的高温・少雨となりました。
要因として、以下のことが挙げられます。
  1. 偏西風が北へ大きく蛇行し、上層のチベット高気圧が日本付近への張り出しを強めた。
  2. 日本の南が低圧部となり、下層の太平洋高気圧が北西に張り出した。
  3. 北海道付近は、上層から下層まで高気圧に覆われ、晴れた日が続いたため、記録的な高温・少雨となった。