中国地方の天候


 平常の天候を対象とした「平年の天候の特徴」を述べたページです。
 天候のコラムや著しい気候変化を対象とした「顕著現象時の天候の特徴」について更に詳しく説明したページもあります。
 アメダスの日照時間について、2021年3月2日から、気象衛星観測のデータを用いた「推計気象分布(日照時間)」から得る推計値としました。平年値については推計値相当の値に補正しています。


梅雨  【盛夏】


平年の天候の概説

 中国地方は、山陰・山陽の境に中国山地が連なって脊梁(せきりょう)山地を形成しています。山陽の南部は、瀬戸内海に面し、主に島しょ部と平野部で、北部は主に山地や盆地で構成されています。これらの地形や地理的条件がそれぞれの気候特性として現れています。一方、山陰は、日本海に面しており、日本海側気候の特性が現れ、冬は内陸部や山間部を中心に寒さが厳しく、大雪等による災害が発生することがあります。

中国地方の地形図 広島の気象要素の季節変動 松江の気象要素の季節変動
  

中国地方の年平年値

年平均気温(℃) 年降水量(mm) 年間日照時間(h)
    

 年平均気温は、山陽の沿岸部で高く、広島市(16.5℃)、岡山市(15.8℃)で約16℃となっています。山陰の沿岸部では松江市(15.2℃)、鳥取市(15.2℃)で約15℃と山陽の沿岸部に比べて約1℃低くなっています。また、中国山地沿いでは、山陽の沿岸部に比べ約5℃低い気温となっています。
 年降水量は、山陰の中国山地沿いで多く、最も多い鳥取県の鹿野で2905.9ミリと年間3000ミリ近い降水量となっています。一方、山陽では沿岸部を中心に降水量が少なく、特に広島県東部から岡山県で顕著となっており、最も少ない岡山県の玉野では1038.5ミリと最も多い鹿野の約3分の1となっています。
 年間日照時間は、山陽の沿岸部で多く、山陰の山間部を中心に少なくなっています。最も多いのは広島県の呉市蒲刈で2253.5時間、最も少ないのは、岡山県の上長田で1446.4時間となっています。月間日照時間 は5月と8月は山陰、山陽の沿岸部は共に200時間程度と多くなりますが、冬季の山陰は100時間を下回るのに対し、山陽では冬晴れとなることから、150時間程度と山陰の約1.5倍となります。山陰と山陽の沿岸部で比較すると、冬季を中心とした日照時間 の差が年間の差300~400時間に大きく寄与していることが分かります。


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 春は一年中で最も気温の変動が大きく、天気変化の激しい季節です。また、天気が周期的に変化する季節でもあります。春のはじめには、冬の名残りの寒い季節風が吹くときもありますが、気温は次第に高くなるため、初夏を思わせるような陽気となることがあります。
 また、空気が非常に乾燥する時期となり、山火事など火災の発生することが多くなります。日最小湿度の10位以内はほとんどがこの季節に現れています。
 空を黄色に染める黄砂が見られるのもこの季節です。中国大陸北部の黄土地帯で空高く巻き上げられた細かな砂が偏西風に乗って日本まで運ばれてくる現象です。
 移動性高気圧に覆われて風が弱いときの明け方から朝にかけては地面付近の空気が放射冷却現象により熱を奪われ、気温が下がり霜の降りることがあります。この頃は農作物の発芽期にあたるため、晩霜による被害が発生しやすい時期でもあります。
 春から夏への移り変わりの時期には、日本の南海上に前線が停滞し天気のぐずつくことがあり、菜の花の咲く頃の長雨を“菜種梅雨”と言います。梅雨入りの平年は6月6日ごろですが、早い時は5月に梅雨入りすることもあります。

天気図
2014年3月17日9時の天気図
優勢な高気圧に覆われて全国的に晴れて、4月中旬並の陽気となりました。
平年の春の特徴
平年の春の特徴
日本付近は周期的に通過する高気圧と低気圧の影響を受けます。
中国地方では高気圧と低気圧の影響を交互に受け天気は数日の周期で変わります。

春(3~5月)の平均気温(℃) 春(3~5月)の降水量(mm) 春(3~5月)の日照時間(h)
   

 春の平均気温は、沿岸部では13~15℃前後で、山陰沿岸部に比べ、山陽沿岸部で高い傾向があります。中国山地では10℃以下の所もあり、山陽沿岸部の高い所とは最大で約5℃の差が見られます。
 春の降水量は、山陰の中国山地沿いで多く、600ミリを超える所も見られます。一方、広島県沿岸部から岡山県にかけては200ミリより少なく、最も多い所の3分の1程度となっています。
 春の日照時間は、山陰でははじめは寒気の影響を受ける時期もあることから、山陽に比べて少ない傾向があります。

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 6月ごろから7月ごろは、梅雨と呼ばれる雨の多い時期があります。
 梅雨期の気象の特徴は、梅雨前線が日本付近に停滞し、前線上を低気圧が次々と進んできます。梅雨時期のはじめは、梅雨前線が日本の南にあるため中国地方への影響は小さく、大きな天気の崩れにはなりません。前線が太平洋高気圧の強まりと共に徐々に北上すると、曇りや雨の天気が続くようになります。梅雨後半には太平洋高気圧が強まるため、前線が西日本付近や山陰沖に停滞することが多くなり、南海上から流れ込む暖かく湿った空気の影響で、前線活動が活発となって度々大雨の降ることがあります。中国地方での記録的な豪雨は、この時期に多く発生しています。
 7月の後半になると、太平洋高気圧の勢力がさらに強くなり、梅雨前線が日本海北部付近へ押し上げられて梅雨明けとなります。

天気図
 2018年7月6日9時の天気図
本州付近に停滞する梅雨前線の活動が活発となり、広島県、岡山県、鳥取県のほか、九州から東海地方にかけて大雨特別警報を発表しました。(平成30年7月豪雨)
平年の梅雨の特徴
 平年の梅雨の特徴

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 梅雨明け後、太平洋高気圧の勢力が強いと毎日暑い晴天が続き、猛暑日となる日もあります。夜は気温が下がらず、熱帯夜の日もあります。内陸部では強い日射の影響で、積乱雲が発達して雷が多く発生し、激しい夕立となる所もあります。
 盛夏期の瀬戸内沿岸では、夕方から夜にかけて海風が陸風に変わるために一時的な無風状態となり、耐え難い暑さの「瀬戸の夕なぎ」という特異な現象が現れます。また、夏は台風の発生が最も多い季節で、中国地方にかなり接近したり上陸したりします。
 
天気図
 2012年7月25日9時の天気図
太平洋高気圧に覆われて概ね晴れました。夕方には内陸部で雷雲が発生し、局地的に強い雨の降った所がありました。
平年の盛夏期(8月)の特徴
平年の盛夏期(8月)の特徴
梅雨前線は北に押し上げられ不明瞭になり、中国地方は太平洋高気圧に覆われることが多くなります。

天気図
 2012年8月28日9時の天気図
台風第15号が黄海を北上したため、中国地方には暖かく湿った空気が流れ込み、雨の降った所が多くなりました。
2012年8月28日9時の台風の進路
 2012年8月28日9時の台風の進路

夏(6月~8月)の平均気温(℃) 夏(6月~8月)の降水量(mm) 夏(6月~8月)の日照時間(h)
 

 夏の平均気温は、山陽の沿岸部では一部で26℃を超え、多くの所で25℃を超えていますが、山陰の沿岸部では25℃を超える所はごく一部と少なくなります。月毎の平均気温が最も高いのは8月で、広島県や岡山県では28℃以上の所もあります。
 夏の降水量は、山口県から島根県・広島県の県境付近が最も多く、900ミリを超える所も見られます。一方、岡山県沿岸部を中心に少なく、最も多い所の半分以下となっています。また、鳥取県の東部沿岸部も少ないことから、西で多く、東で少ない傾向があります。
 夏の日照時間は、沿岸部で多く、内陸部では少なくなっています。

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 太平洋高気圧の勢力は依然として強く、9月中頃でも暑い状態(残暑)が続くことがあります。その後、9月の中頃から10月にかけ日本の南岸に秋雨前線が停滞して、天気がぐずつくことがあります。台風が西日本に接近するのもこの季節で、この頃の台風は日本に大きな災害をもたらしたものが数多くあります。これは太平洋高気圧の縁に沿って台風が移動することによるものです。特に、前線が西日本付近に停滞し、台風が北上接近すると前線の活動が活発となり、大雨の降るときがあります。日降水量が100ミリ以上の大雨はそのほとんどが台風や前線が関係しています。10月は次第に天気が安定し、晴れの日が多くなりますが、11月に入ると時折寒気が南下し、山陰では寒気の影響からしぐれ(※)の時期が訪れ、晴れの日よりも曇りや雨の日が多くなってきます。一方、山陽では高気圧に覆われて晴れの日が多くなります。気温は除々に下がり、山間部で霜が降りるようになります。

(※) しぐれ:大陸からの寒気が日本海や東シナ海の海面で暖められて発生した対流雲が次々に通るため、晴れや曇りが繰り返し、断続的に雨や雪の降る状態。主に晩秋から初冬に、北陸から山陰地方や九州の西岸などで使われる。

天気図
 2011年10月14日9時の天気
秋雨前線上の低気圧が中国地方付近を通り、大雨となった所がありました。
平年の秋の特徴
平年の秋の特徴
日本付近は交互に通過する高気圧と低気圧の影響を受け、天気は数日の周期で変わります。10月から11月は移動性高気圧に覆われて晴天が多くなることがあります。11月は冬型の気圧配置の影響を受けることがあります。

秋(9月~11月)の平均気温(℃) 秋(9月~11月)の降水量(mm) 秋(9月~11月)の日照時間(h)
 秋の平均気温は、山陽の沿岸部では19℃前後の所が多く、山陰の沿岸部では、それより1℃程度低い所が多くなっています。 また、山間部では14℃程度と低くなり、沿岸部との差が大きくなる時期です。
 秋の降水量は、鳥取県で最も多く700ミリを超えています。これは、秋には次第に寒気が南下する時期となることや、台風が東に去ったあと、下層の北東風の影響を受けることが多いためです。一方、広島県沿岸部から岡山県沿岸部では300ミリ未満と少ない所が多く、鳥取県の多い所の約3分の1となります。
 秋の日照時間は、秋の終わりに寒気の影響を受けて曇りや雨の日が多くなる山陰で少なくなります。高気圧に覆われて晴れる日が多い山陽の沿岸部と比較して概ね100時間程度少なくなります。特に島根県東部から鳥取県にかけてその傾向が見られます。

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  冬型の気圧配置の時には、北西の季節風が日本海から多量の水蒸気を含んで中国山地に達するため、山陰や山陽北部は雪の降る日が多くなります。

 また、冬の天気としては、山陰や山陽北部では、しぐれ(※秋の天候に記述)の天気となる日が多くなります。山陽南部では、雪が少なく、冬の太平洋側で見られるような晴れの天気となることが多くあります。

 冬季に高気圧に覆われ穏やかな晴天の日には、地表面の熱が放射によって奪われ気温が下がる放射冷却現象により朝の気温が下がり、冷え込みが厳しくなることがあります。

天気図
 2017年1月23日9時の天気図
日本付近は西高東低の冬型の気圧配置が強まり、日降雪量が観測史上1位となる所があるなど、日本海側を中心に大雪となりました。この大雪で鳥取自動車道では大規模な車両の立往生が発生しました。
平年の冬の特徴
平年の冬の特徴
寒気の影響により、日本海にすじ状の雲(雪雲)が発生。山陰や山陽北部では雪雲が流れ込み、曇りや雪(又は雨)となります。山陽では晴れることが多くなります。

冬(12月~2月)の平均気温(℃) 冬(12月~2月)の降水量(mm) 冬(12月~2月)の日照時間(h)

 冬の平均気温は、山陽の沿岸部を中心に高く、6℃を超える所も見られます。山陰でも西部沿岸部では6℃を超える所があります。中国山地沿いを中心に2℃以下の所が多くなっています。月毎の平均気温が最も低いのは1月で、月の平年値が0℃以下の所もあります。

 冬の降水量は、中国山地を境に北側で多く、南側で少ない傾向となっています。山陽南部では100~150ミリ程度の所が多くなっています。山陰を含む中国山地の北側を中心に多く、鳥取県のほとんどの所で400ミリを超えています。

 冬の日照時間は山陽では沿岸部で多く、中国山地沿いは少なくなっています。山陰では、概ね山陽沿岸部の半分程度の日照時間となっています。

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