エルニーニョ/ラニーニャ現象等発生時の世界の天候の特徴(調査方法について)

1.利用した気温・降水量データ

統計期間は1948年~2021年(冬は1947/48年~2020/21年)で、気温、降水量の観測値は、気象庁が蓄積している地上月気候値気象通報(CLIMAT報)データ(1982年6月以降)および米国海洋大気庁(NOAA)が整備したGHCN(Global Historical Climatology Network)データ※1を使用しています。CLIMAT報データ及びGHCNデータの両方が利用可能な場合は、CLIMAT報データを優先して利用しました。

  ※1 GHCN ver. 4 [monthly mean temperature], Menne et al. (2017), NOAA NCEI, doi:10.7289/V5XW4GTH [accessed 31 March 2023].
    GHCN ver. 2 [monthly precipitation], Peterson and Vose (1997), NOAA NCEI, doi:10.7289/V5X34VDR [accessed 31 March 2023].

2.エルニーニョ/ラニーニャ現象等の発生期間

エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が6か月以上続けて+0.5℃以上(−0.5℃以下)となった場合をエルニーニョ現象(ラニーニャ現象)としています。また、西太平洋熱帯域およびインド洋熱帯域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が6か月以上続けて+0.15℃以上(−0.15℃以下)となった場合を高温(低温)であるとしています。

3.緯度5度×経度5度の格子ごとの気温・降水量データの作成

  • (1)観測地点ごとに3か月平均気温と3か月降水量を求めます。3か月のうち1か月でも欠測があれば3か月の値も欠測にします。
  • (2)観測地点ごとに統計期間の平均値を基準として気温規格化偏差と降水量の基準比を求めます。このとき、観測データ数が統計年数(74年)の5割以上ある地点のみ利用します。ただし、観測データ数が5割以上8割未満と少ない観測地点については、観測データの存在時期が、エルニーニョ/ラニーニャ現象の期間(西太平洋熱帯域/インド洋熱帯域では高温時あるいは低温時)のどちらかに偏っている場合は使用していません。
  • (3)計算された観測地点ごとの気温規格化偏差/降水量基準比を緯度5度×経度5度の格子ごとに平均します。気温規格化偏差については、格子平均データから長期的な変化傾向(トレンド)の影響を取り除いています(「6. 補足 長期的な変化傾向(トレンド)の除去」を参照)
  • (4)緯度5度×経度5度の格子ごとに、統計期間全体の出現率が等しくなるよう「低い(少ない)」「並」「高い(多い)」の階級に分けます。このとき各階級に含まれるデータの割合を、各階級の「気候的出現率」とします。
    たいていの場合、「気候的出現率」は33%に近い値となりますが、例えば、砂漠など雨のほとんど降らない地域では、データのほとんどが降水量0ミリのため「少ない」階級に入るデータ数が多く、「少ない」階級の気候的出現率が33%を大きく超える場合があります。

4.「エルニーニョ/ラニーニャ現象等発生時の天候の特徴(詳細版)」の図について

3節の緯度5度×経度5度格子のデータから、エルニーニョ/ラニーニャ現象等が発生している期間について、階級ごとに出現割合が母比率(気候的出現率)に比べて大きいかどうかを検定※1し、信頼度水準を求めます。信頼度水準が最も大きい階級をプロットし、「最も現れやすい階級」として示しています(信頼度水準の区分をマークの色と大きさで表現しています)。なお、同一格子で信頼度水準が同じである階級が2つ以上存在する場合、最も現れやすい階級を1つに決定できないため 「階級不定」とし灰色の四角いマークで示しています。また、降水量については「少ない」階級で「気候的出現率」が50%を超える格子には、背景に茶色の四角枠を表示しています。

  ※1 2項検定を用いました。母比率は「気候的出現率」(3節(4)参照)としています。

5.「季節別の天候の特徴」を記述する基準

4節の「詳細版」の図で、同じ階級で信頼度水準90%以上である格子がある程度広がっている領域を選び、気温については「高温/低温傾向が見られる」、降水量が「多雨/少雨傾向が見られる」としています。なお、海洋等の観測地点がまばらな領域では、気象庁第3次長期再解析 (JRA-3Q)の大気循環データ(地上気温、降水量)、全球日別海面水温解析値(MGDSST)ならびにCOBE-SST2のデータ(海面水温)、あるいは衛星観測データ(外向き長波放射量)を用いたエルニーニョ現象等発生時の合成図解析で統計的な信頼度の高い領域を参考にしました。

6.補足 長期的な変化傾向(トレンド)の除去

世界の天候にはエルニーニョ/ラニーニャ現象等の熱帯域の海面水温の影響のほか、地球温暖化による気温の上昇傾向等の長期的な変化傾向が反映されています。エルニーニョ/ラニーニャ現象等の熱帯域の海面水温変動それ自体の影響を評価する場合、こうしたトレンドを除くことが有効です。天候の特徴を示す気象要素のうちトレンドが明瞭な気温については、以下の方法によりトレンドの影響を除いています。
  • 1)緯度5度×経度5度の格子データについて、統計を行った1948年~2021年(冬は1947/48年~2020/21年)の気温規格化偏差を直線で近似する。
  • 2)気温規格化偏差と近似された直線との差を気温の変動データとして扱う。
なお、トレンドが明瞭でない降水量については、トレンドを除いていません。

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