発震機構解の図と断層面の関係を、模型を作って考える

発震機構解の図は、何を表しているのか

発震機構解の図は「震源球」と呼ばれているもので、「断層面」及び「放射される地震波の特性(地震波初動の向き)」を球で表現したものです。本来は立体的であるものを、平面に投影して描いています。気象庁では、下半球投影という手法で投影しています。
ここでは、投影された図から投影前の立体的な断層面への変換作業を具体的なものを使用して行い、下半球投影された震源球から断層面の状況を把握する方法を説明します。

模型を作って、断層面をイメージする

必要なもの

下半球投影で描いた震源球から、断層面のイメージを直感的につかむために、球(透明プラスチック製の半球)と厚紙を用います。(写真1,2)

写真1 使用する透明プラスチック半球
写真1 使用する透明プラスチック半球
写真2 使用する厚紙(球に形をあわせたもの)
写真2 一方の端を半球の形に合わせて切った厚紙

準備する

例として、震源球(下半球投影)(写真3)の上に、プラスチック半球を置き(写真4)、厚紙を使って断層面をイメージします。震源球には、白い部分と黒い部分を分ける境界線が2本あります。 この境界線は元の立体的な震源球では面の部分であり節面といいます。実際に動いた断層面はこの2つの節面のどちらかになります。しかし、この図だけからでは、どちらが本当の断層面であるかはわかりません(「初動発震機構解の決め方」の項を参照)。
まずは、中心に近い方の境界線が表す面が断層面であると考えた場合で、イメージします。

写真3 拡大した震源球
写真3 プラスチック球にあわせて拡大した震源球
写真4 震源球上に透明プラスチック球を置く
写真4 震源球の上にのせたプラスチック半球

中心に近い境界線が表す面を考える

片側をプラスチック球にきっちりはまるように半円に切った厚紙を差し込みます(写真5)。真上から見て厚紙が、下の震源球の境界線に合うように差し込みます(写真6)。 この厚紙が断層面を表します。この場合は、断層面が水平面からみてかなり急な傾きをもっていることがわかります(写真7)。真上から見ると断層の走向がわかります(写真8)。

写真5 断層面を表す厚紙を透明球に差し込む
写真5 断層面を表す厚紙を透明球に差し込む
写真6 厚紙を震源球の境界線とあわせる
写真6 厚紙を震源球の境界線とあわせる
写真7 横から見ると断層面の傾きがわかる
写真7 横から見ると断層面の傾きがわかる
写真8 上から見ると、断層面の走向がわかる
写真8 上から見ると、断層面の走向がわかる

中心から遠い境界線が表す面を考える

先ほどは、中心に近い方の境界線が断層面で考えたので、今度は中心から遠い方の境界線でイメージします。
先ほどと同じように、厚紙を差し込んで境界線にあわせます(写真9)。すると、今度はかなり傾きのゆるい水平に近い断層面になっていることがわかります(写真10)。

写真9 厚紙をもうひとつの境界線とあわせる
写真9 厚紙をもうひとつの境界線とあわせる
写真10 写真7と違い、傾きがゆるい面になっている
写真10 写真7と違い、傾きがゆるい面になっている

2つの面の関係

さて、先ほどイメージした2つの面ですが、厚紙を同時に球にさすと、直角に交わることがわかります(写真11)。

写真11 2つの面は直交する
写真11 2つの面は直交する

違う形の発震機構解ではどうなるか

別の発震機構解を使って同じように2つの面を厚紙で示しました(写真12)。この例は、横ずれ型の断層です。

写真12 別の発震機構解
写真12 別の発震機構解

まとめ

以上のように、下半球投影で描いた震源球から断層面を思い浮かべる際に、具体のものを利用すると容易になります。慣れてくると、具体のものが無くとも断層面を思い浮かべることが可能となります。

このページのトップへ