発震機構解とは何か

発震機構

地震は、一般的には地下で断層がずれ動いて発生するものです。”発震機構”とは、地震を起こした断層が地下でどのようになっているか断層が どちらの方向に伸びているか、傾きはどうか)とその断層がどのように動いたかを示すものです。 発震機構は地下の断層の状態を表すと同時に、地下で地震を起こす元になった力がどのようであったかも教えてくれます。これは、断層と地下の力の向きがある一定の幾何学的な関係にあることが分かっているからです。

初動発震機構解

地震の発震機構を求める場合によく使われる方法が、地震波のP波の初動を使う方法です。 地震波のうち、P波は地下の岩盤の伸び縮みによって伝わる波です。地震の際に断層が下図のようにずれ動いた時、 図のように断層のまわりの領域で、岩盤が縮む領域(図の[1]、[3])と岩盤が伸びる領域(図の[2]、[4])ができます。 そして、それらの領域から出た地震波(P波)が地表面に伝わった時には、それぞれ地震波が伝わり始めた領域([1]から[4]) に対応して、地面の最初の動き(初動)が、”縮み”([1]、[3]から伝わった波)になるか、”伸び”([2]、[4]から伝わった波)になるかが分かれます。
この性質をP波の初動極性と呼びます。これらの”伸び””縮み”は、地表面では、それぞれ、地面が最初に下に動く("引き"の波)上に動く(”押し”の波)、ことに対応しますので、”押し””引き”と表現されます。

断層運動による岩盤の伸び縮みの図
図1 断層運動によって、岩盤が伸び縮みする領域が分かれる様子

図2は、2000年10月6日に発生した鳥取県西部地震の際に、各地で観測されたp波の初動の分布を地図上に示したものです。黒丸印は、その場所でP波の上下動の初動が上向き(”押し”の波) だったことを示し、白丸印は逆に、最初に下向きに地面が動いた(”引き”の波)ことを示しています。鳥取県付近にある黒×印は震央を示して います。図から分かるように、震央を中心にして、白黒の分布がきれいに分かれていることがわかります。

このように、P波の初動の極性の分布が、震源での断層とその運動を反映する性質があることから、逆に各地で 観測されるP波の初動の極性分布から、地下の地震の断層のようす(発震機構)を推定することができます。この P波の初動極性から推定された発震機構を、初動発震機構解と呼びます。

2000/10/6鳥取県西部地震の初動極性分布図
図2 2000年10月6日鳥取県西部地震のP波の初動極性分布(黒丸は上向き、白丸は下向きに地面が動いた)

初動発震機構解の決め方

観測されたP波の初動から発震機構解を決める方法を簡単に解説します。初動発震機構解を求める場合には、 まず震源を中心とする仮想の球震源球と呼びます) を考えます。そして、震源から初動が観測された地点まで地震波が伝わった経路を計算し、 その経路が震源球と交わる場所に、初動の”押し””引き”をプロットします。図3はそれを模式的に示したものです。 図の右側で、震源から出た地震波が観測点(図では、敦賀と網代を例示)に伝わる経路と、それぞれの観測点での 初動(図では、敦賀がUP(押し)網代がDOWN(引き))を示しています。そして、図の左側の震源球に、それぞれの 観測点での初動がプロットされた様子を示しています。

観測した初動極性を震源球上に写す
図3 地表面で観測される初動極性を震源球上に写す

このように、地表面上の観測点での初動の”押し””引き”を地下の震源球上に移した上で、震源球上の”押し””引き”の分布をうまく説明する断層面を推定します。 地震学の理論では、震源から放射されるP波の初動の極性は、震源球上で二つの直交する面によって分けられることが分かっています。 図3の左側では、震源球上の”押し””引き”の分布を満たすように、二つの直交する面(図上ではNP1,NP2という曲線)を推定した結果が示されています。
こうして、P波の初動の解析によって初動の極性を分ける二つの面を推定することができます。推定された面のうちの一方が実際に地震を起こした断層面に対応すると考えられます。 しかし、P波の初動の解析だけでは、これらの二つの面のうち、どちらが本当の断層面かを知ることができません。どちらの面が断層面であるかは、余震活動や地殻変動の状況等から推定します。

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