用語集
潮汐に関する用語を解説します。
用語 | 説明 | 関連ページ |
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潮汐に関する用語 | ||
潮汐 | 約半日の周期でゆっくりと上下に変化する海面の水位(潮位)の昇降現象のこと。 | 潮汐の仕組み |
起潮力 | 潮汐を起こす力のこと。月や太陽が地球に及ぼす引力は地球上の各点でわずかに異なる一方、地球の重心で引力と釣り合っている慣性力は地球全体で一律に作用するため、地球上では力の不均衡が生じ、これが起潮力となる。 | 潮汐の仕組み |
満潮 | 主として月と太陽の起潮力によって潮位が極大となった状態。多くの海岸で1日2回ずつ現れる。 | 潮汐の仕組み |
干潮 | 主として月と太陽の起潮力によって潮位が極小となった状態。多くの海岸で1日2回ずつ現れる。 | 潮汐の仕組み |
日潮不等 | 通常1日2回ずつ現れる満潮または干潮の潮位が一致せず、著しく異なるような現象。月の公転軌道面と地球の赤道面とが一致せず、ある角度をもっているために起こる。日潮不等が極端になると、1日に1回しか満潮と干潮が現れなくなることがある。 | |
朔 | 旧暦(陰暦)の朔(ついたち)にあたる新月のこと。 | 潮汐観測資料 |
望 | 旧暦(陰暦)で朔から約15日後にあたる満月のこと。 | 潮汐観測資料 |
上弦の月 | 旧暦(陰暦)で朔(新月)と望(満月)の中間にあたる月の呼称のこと。 | 潮汐観測資料 |
下弦の月 | 旧暦(陰暦)で望(満月)と朔(新月)の中間にあたる月の呼称のこと。 | 潮汐観測資料 |
月齢 | 朔(新月)の時刻を0.0として起算した各日の正午までの時間を日単位で表した経過日数のこと。朔から次の朔までの周期はおよそ 29.5日。 | |
大潮 | 朔(新月)及び望(満月)の頃、満潮と干潮の潮位の差が大きくなった状態。 | 潮汐の仕組み |
小潮 | 上弦の月及び下弦の月の頃、満潮と干潮の潮位の差が小さくなった状態。 | 潮汐の仕組み |
天文潮 | 月や太陽の起潮力によって生じる海面の昇降現象。実際に観測される潮位は、天文潮に気圧や風など気象の影響が加わったもの。 | 潮汐の仕組み |
天文潮位 | 主として天文潮を予測した潮位のこと。推算潮位。過去に観測された潮位データの解析をもとにして計算する。 | 潮汐の仕組み |
分潮 | 起潮力を三角関数の和として表したときの個々の周期変動のこと。主要な分潮としては、M2(主太陰半日周潮)、S2(主太陽半日周潮)、K1 (日月合成日周潮)、O1(主太陰日周潮)の主要4分潮がある。気象庁の天文潮位は、主要4分潮を含む60の分潮を使用して計算している。 | 潮位表 |
気象潮 | 高潮など気象の影響による潮汐のこと。 | |
潮流 | 潮汐の干満にともなって水平方向に周期的に運動する海水の流動のこと。潮汐と潮流は1つの現象(潮汐波)を2つの側面(海水の上下運動と海水の流れ)から見たもの。 | |
潮汐観測に関する用語 | ||
潮位 | 基準面から測った海面の高さで、波浪など短周期の変動を平滑除去したもの。防災気象情報における潮位は「標高」で表す。 「標高」の基準面として東京湾平均海面(TP)を用いるが、島嶼部など一部では国土地理院による高さの基準面あるいは平均潮位(MSL)等を用いる。 |
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潮位偏差 | 天体の動きから算出した天文潮位(推算潮位)と気象などの影響を受けた実際の潮位との差(ずれ)。 | 潮汐観測資料 |
基準面 | 陸地の高さや海の深さの基準となる面のこと。潮汐に関する基準面には、潮位の観測基準面、東京湾平均海面、潮位表基準面、基本水準面などがある。 | 潮汐観測資料 |
潮位の観測基準面 (DL) |
各検潮所毎に設定された潮位を観測する基準面。通常、観測値が負にならないように設定する。 DLは"Datum Line"の略。 |
潮汐観測資料 |
東京湾平均海面 (TP) |
標高(海抜高度)の基準面。水準測量で使用する日本水準原点はTP上24.3900m と定義されている。以前は東京湾中等潮位と呼ばれていたが、現在は用いられていない。 TPは"Tokyo Peil"の略。 |
潮汐観測資料 |
潮位表基準面 | 気象庁が発行する「潮位表」の基準面。検潮所毎に「平均海面下##cm」と定義されており、大潮の平均的な干潮面の高さ(海図の水深0mにほぼ相当)を基準としている。 | 潮位表 |
基本水準面 | 海図に記載されている水深の基準面。港湾ごとに定められている。 | |
平均潮位 (MSL) |
ある一定期間の海面水位の平均値。平均海面水位。一定期間として1年や5年が用いられることが多い。 MSLは"Mean Sea Level"の略。 |
潮位表 |
検潮所 | 潮汐を観測する施設のこと。検潮小屋、検潮井戸、導水管、検潮儀、水準標石などで構成されている。験潮場、験潮所、水位観測所とも呼ばれる。 | 潮汐観測の仕組み |
検潮儀 | 潮位を測るために用いる測器の一種で、検潮所の中に設置して計測する。検潮器、験潮器、験潮儀、水位計とも呼ばれる。フース型(浮き式)、電波式などの種類がある。 | 潮汐観測の仕組み |
津波観測計 | 潮位を測るために用いる測器の一種で、検潮所の建物ではなく、港内の一角に設置して計測する。音波式、電波式などの種類がある。 | 潮汐観測の仕組み |
遠地津波観測計 | 太平洋を渡ってくる津波を、日本本土に到達する前に検知するために海底に設置された観測装置。圧力センサーで水圧を測定し、その上にある海水の高さを求める。 | 潮汐観測の仕組み |
球分体 | 検潮所の井戸縁に埋設している鋲のこと。井戸の内部に設定されている観測基準面のかわりに測量に用いる。津波観測計においては、球分体の高さは音波センサー、または電波センサーの高さとしている。 | 潮汐観測資料 |
潮汐の統計に関する用語 | ||
平滑値 | 各検潮所で観測された潮位データ(実測潮位)から副振動や津波、波浪などの周期が約3時間までの成分を除いた潮位。海面の高さをサンプリングした生のデータから、数値的にフィルター処理を行って算出する。 毎時潮位、毎時潮位偏差や月・年の統計値(平均潮位、最高・最低潮位や最大潮位偏差など)には平滑値を用いる。 |
潮汐観測資料 |
3分平均値 | 各検潮所で観測された潮位データ(実測潮位)から波浪などの周期が3分までの成分を除いた潮位。海面の高さをサンプリングした生のデータから、数値的にフィルター処理を行って算出する。 副振動、津波や高潮の記録には3分平均値を用いる。 |
各月の潮汐 |
瞬間値 | →3分平均値。「瞬間値」は、現在気象庁では使用していない。 | |
月平均潮位 | 観測された毎時潮位の1か月の平均値。1か月の間に240時間未満の欠測が含まれる場合は、天文潮位を考慮して月平均潮位を計算する。 1か月の間に240時間以上の欠測が含まれる場合は欠測とする。 | 潮汐観測資料 |
年平均潮位 | 1年間の各月の月平均潮位の平均値。月平均潮位に3か月以上の欠測が含まれる場合は欠測とする。 | 各年の潮汐 |
5年平均潮位 | 当年を含む前5年間の月平均潮位の平均値。月ごとの値と、年を通した平均値がある。月ごとの値は、月平均潮位に3つ以上の欠測が含まれる場合は欠測とする。年を通した値は、月ごとの5年平均潮位を平均して算出し、月ごとの5年平均潮位に1つでも欠測があれば欠測とする。 | 各年の潮汐 |
月/年最高潮位 | 当月/当年中に観測した満潮の潮位のうち、最高を記録したもの。 | 各年の潮汐 |
月/年最低潮位 | 当月/当年中に観測した干潮の潮位のうち、最低を記録したもの。 | 各年の潮汐 |
月/年最大潮位偏差(過高) | 当月/当年中に観測した毎時潮位偏差のうち、高い方に最大を記録したもの。 | 各年の潮汐 |
月/年最大潮位偏差(過低) | 当月/当年中に観測した毎時潮位偏差のうち、低い方に最大を記録したもの。 | 各年の潮汐 |
朔潮位 | 朔(新月)の前2日後4日の期間における、満潮(または干潮)の中から選んだ最高(または最低)の潮位のこと。年統計値は、当年中の朔の満潮位、干潮位それぞれの平均値で、3つ以上欠測が含まれる場合には欠測とする。 | 各年の潮汐 |
望潮位 | 望(満月)の前2日後4日の期間において、満潮(または干潮)の中から選んだ最高(または最低)の潮位のこと。年統計値は、当年中の望の満潮位、干潮位それぞれの平均値で、3つ以上欠測が含まれる場合には欠測とする。 | 各年の潮汐 |
5年間の朔望平均潮位 | 当年を含む前5年間の朔望潮位の年平均値を、朔と望を併せて満潮位、干潮位それぞれについて平均した値。3年以上欠測が含まれる場合は欠測とする。 | 各年の潮汐 |
過去最高潮位 | 各検潮所で、潮位の観測開始から現在までの期間の高潮時の最高の潮位。標高上の高さにおいて現在の記録を超えた場合に更新する。 | 過去最高潮位一覧表 |
既往最高潮位 | →過去最高潮位。「既往最高潮位」は、現在気象庁では使用していない。 | |
津波の周期 | 津波記録の、山から山または谷から谷までの時間のこと。 | 各年の潮汐 |
津波の高さ | 津波記録の、平滑曲線から山までの高さのこと。 | 各年の潮汐 |
津波の最大全振幅 | 津波記録の、隣合う山を結ぶ直線の谷からの高さ、または隣合う谷を結ぶ直線の山までの高さの最大値。 | 各年の潮汐 |
潮位の諸現象に関する用語 | ||
高潮 | 台風など強い気象じょう乱に伴う気圧降下による海面の吸い上げ効果と風による海水の吹き寄せ効果のため、海面が異常に上昇する現象。 | 高潮 |
吹き寄せ(効果) | 海岸に向かって吹く風によって、海水が沿岸に吹き寄せられて潮位が高くなること。 | 高潮 |
吸い上げ(効果) | 台風など強い気象じょう乱に伴う気圧降下によって、海水が吸い上げられて潮位が高くなること。 | 高潮 |
異常潮 | 潮位が通常の潮位から大きく異なる現象のうち、津波や高潮など発生原因がはっきりしている現象を除く海面変動のことで、副振動と異常潮位がある。現在は、出来るだけ用いないこととしている。 | 副振動/異常潮位 |
副振動 | 日々くり返す満潮・干潮の潮位変化を主振動としてそれ以外の潮位の振動に対して名づけられたものであり、湾・海峡や港湾など陸や堤防に囲まれた海域等で観測される、周期数分から数10 分程度の海面の昇降現象をいう。
主な発生原因は、台風、低気圧等の気象じょう乱に起因する海洋のじょう乱や津波などが長波となって沿岸域に伝わり、湾内等に入ることにより引き起こされる強制振動である。強制振動の周期が湾等の固有周期に近いものであれば、共鳴を起こして潮位の変化が著しく大きくなる場合がある。 |
副振動 |
異常潮位 | 潮位が比較的長期間(1週間から3か月程度)継続して平常より高く(もしくは低く)なる現象。府県より広い範囲に及ぶことが多く、原因として暖水渦の接近、黒潮の蛇行等があげられるが、様々である。 | 異常潮位 |
波浪効果 (Wave Setup) |
波浪が沿岸に到達し砕波すると発生する潮位上昇のこと。砕波が生じた場所より岸側の海域で潮位が上昇し、外洋に面して、沖合にかけて海底地形が急峻に変化している海域や波長の長い波浪が到達しやすい海域において発達することが多い。 | 波浪効果による潮位上昇(Wave Setup) |
津波 | 地震に伴う海底地形の急変などによって発生する周期数分~数10分の波。津波の高さは海岸付近の地形で大きく変化し、V字谷のような特殊な地形の場所では局地的に高くなることがある。 | 各年の潮汐 |
暖水渦 | 周囲より水温が高く、北半球(南半球)で時計回り(反時計回り)の循環をもつ渦を暖水渦と呼ぶ。暖水渦の中心では、水位が周囲に比べて高いという特徴がある。 | 異常潮位 暖水渦・冷水渦 |
冷水渦 | 周囲より水温が低く、北半球(南半球)で反時計回り(時計回り)の循環をもつ渦を冷水渦と呼ぶ。冷水渦の中心では、水位が周囲に比べて低いという特徴がある。 | 異常潮位 暖水渦・冷水渦 |
その他の用語 | ||
高潮数値予測モデル | 高潮を予測するために、気象研究所で開発された力学モデル。海水の運動を計算する部分とその運動を駆動する大気からの外力を与える部分から構成される。 |